五話
「じゃあ、首なし地蔵に行こうぜ!こないだそこで事件が……」
足元でいきなり声がした。私が顔をひきつらせて見ると、光のニヤリとした笑みが見上げている。
もう! 馬鹿! どうして1年ぶりに行く場所がよりによって首なし地蔵? 田舎モノって思われちゃうよ! ってか、一緒に行くの? 私は二人がいいのに!
「アホっ!」
小声で光の発言を止めて、弁解しようと北斗君を振り返った。
ごめん。北斗君はそんなの興味無いよね?
「おもしろそうだね!」
「え?」
私は耳と目を疑った。
北斗君は目を輝かせ、光に手を差し出して立たせる。
「もう、お腹大丈夫?」
「あぁ。消化不良はいつものことだから」
光が鼻をならして私を横眼で見た。
押し黙る私をよそに、光は北斗君の背中に馴れ馴れしく手をおいて、あの記事の事を説明し始めた。梓も光の子分のハヤテもその話に聞き入っちゃって……私はまるで蚊帳の外だ。
私は悔しくて下唇を噛む。
なによ……せっかくの再会を、こんな子どもじみたものに巻き込むなんて。
握りしめたスカートに目を落とした。
この日の為に、おこずかい貯めてバスで片道2時間もかけてお買い物に行って用意したのに。それだけじゃない。髪型だって、靴だって、話題だって、いっぱいいっぱい調べて準備して……。なのに……。
「じゃ、決まりな。首なし地蔵に出発!」
光の掛け声に、ハヤテも梓もついて行く。
それについて行きかけた北斗君が、ふと佇んで動けなくなってる私を振り返った。
「希さんも行こうよ」
希……さん? 呼び名が余所余所しくなってる。
何だか、一つうまく行かなくなると、もがけばもがくほど皆、崩れて行きそうで、私は黙ってしまった。
こんなの嫌な態度だってわかってる。でも期待が大きかった分、どうしていいかわからなくて。
北斗君は私の元に戻ってくると、そっと手を握ってくれた。
その手の大きさが悔しいくらいドキドキさせる。
「あの……」
握り返していいかわからないでそのままにしていると、突然、北斗君の顔が近付いてきた!
「?!」
私はいきなりの事にかたまって、思わず身をすくませ目をぎゅっと瞑ってしまった。
何? えぇ?
私は勝手にパニクって、頭が真っ白になる。
マンガやドラマで見聞きしたシーンが頭を駆け巡った。
え? こんなに突然、一生に一度の大切な事が起こるの??!
その時耳元で、声がした。
「そのスカート、可愛いね」
「え?」
目を開けると、去年にはなかった悪戯っぽい北斗君の笑み。
私は自分の勘違いに真っ赤になり俯く。
私の……あほ……。
「ほら、行こう!」
北斗君の目にはこんな私がどう映ったかな? 田舎モノ? ださい?
「……」
顔を上げて、手を引かれるままに石段を下りた。
上って来た時と違って、全然怖くない。
それどころか、手に感じる温もりが、やっぱり嬉しくて……。
「うん」
私はようやく頷くと、その手を握り返した。




