四話
あんなに夢見てた瞬間なのに、何度も何度もこの時をシュミレーションして来たのに…肝心な今、金縛りなあったように動けないし、言葉も出てこなかった。
言いたい事も、聞きたい事もたくさんたくさんあり過ぎて、胸がいっぱいで…なんだか泣きそうになった。
北斗君はそんな私を少し不思議そうに見つめながら、歩み寄るとそっと顔を覗き込んだ。
「元気だった?」
その仕草はやっぱり北斗君で…私は嬉しくて、震えそうになる手を胸の前で握りしめながら頷いた。
「あの…北斗君は?」
ようやく出た声は、自分でも驚くほど小さくて、なんだか申し訳なかった。
本当は、もっと明るくこぅ…再開して良かったぁって思ってもらえるような感じで会いたかったのに…。
でも、北斗君は優しく微笑み返してくれると
「うん。元気だったよ。でも、こんなに1年を長く感じた事はなかったよ」
「私も!」
思わず声を上げ、はっとして口を押さえる。
だって、嬉しかった。北斗君が待ち合わせを覚えてくれたのも…同じようにこの日を待ち遠しく思ってくれていたのも…。
でも…あれ?
私は首をひねった。北斗君、何にも持ってきてない…。
「あの…」
約束は、忘れちゃったのかな?
私がそのことを聞こうと、顔を上げた時だった。
「あ~!北斗!ひっさしぶり~!!!」
……。
あの馬鹿男の声が後頭部に直撃した。
サイテー…。
景色は一瞬にして、あの幻想的な空気から、一気にお花見の如くデリカシーもムードもないものに変わる。
「君は…」
北斗君は顔を上げて、私の背後に手を挙げた。
「確か、海野光くんに…川田くん。あと…山根さんだっけ?」
「え…」
よりによってオールスター?!
顔をひきつらせ振り向くと、してやったりの表情の光の後ろに、この町の子どもが一人覗いて全員集合していた。ちなみに後の一人は最近生まれた赤ちゃんだ。駆け寄って来た皆に私はため息をつく。
もぅ~どうして、邪魔するかなぁ?
こういうプライバシーがないのが田舎の嫌なとこなのよ!
「今年も来てたんだぁ」
おっとり口調の梓は8つ下。この町みんなの妹…もしくは娘か孫は、北斗君を見上げてにこにこする。
「うん。今朝着いたばっかりだよ」
そう目線を合わせるようにしゃがんだ北斗君は、光の後ろに隠れてじっと彼を見つめるハヤテの視線に気が付き、微笑みかけた。
「ひさしぶり。川田ハヤテ君」
「…」
でも、超引っ込み思案でこの神社の子どものハヤテは、すぐに光の後ろに隠れてしまう。
「ねぇねぇ。梓の事覚えてたぁ?あのね~。梓ね~今度一年生なんだよ~」
甘えん坊の梓が北斗君にかまってもらおうと、おっとり口調で一生懸命話しかける。私はその間に、私は光を肘で突いた。
「どうして、来たのよ!」
「俺達、探偵局員に隠し事はなしだぜ」
「ばーか」
なにが探偵局よ!もう、そんなごっこ遊び、卒業したって―の!
私はあくまで顔では笑いながら、おもっきし光の足を踏んでやった。
「!!!!!!」
光はあまりの痛さに声もでなくて蹲る。
「この鬼!」
「自業自得よ!」
私は見下ろしながら鼻で笑い飛ばした。
「?どうしたの?」
北斗君が光の異変に気が付き首を傾げる。私は出来る限りの笑みを浮かべ
「何でもないの。光、なんかお腹痛いみたい」
「え?大丈夫?」
北斗君の顔が曇る。
「良いのいいの。いつもの事なんだから。どうせ食べ過ぎよ。それより、どっか行く?」
そうよ。せっかく1年ぶりに会えたんだもん。もう少し二人で…
「うん…じゃあ…」
北斗君が光を一瞥してから腕を組んだ。
やっぱり変わらない。考える時の北斗君の癖。
ささいな仕草も癖にも、私の胸は懐かしさと一緒にときめきってやつ?萌えってやつ?とにかくドキドキしちゃう。
そうだ、二人でどこか静かで落ち着いてたくさんお話出来る場所…。
私は北斗君の横顔を見つめながら、考えを巡らせた。




