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転生即奴隷、でも俺には奪えるスキルがあった  作者: まつしま ぜん
第一章 どれいがぶどうかになったけん
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我らの流派の奥義?

 ちょうど何か言おうとしたその時――


 突然、彼の顔が赤く腫れ上がった。どうやら荒木鉄斎が手を出したらしい。


「ここで俺の娘を侮辱する権利はお前にはない。」


「弱い者いじめをして、恥ずかしくないのか?」


「よし、決闘しよう!」


 俺は拳を握り締める。この野郎、ほんとムカつく。手が勝手にうずくぜ。


「いいぜ!」と彼は軽く笑った。


 こんなに早く承諾するなんて、何か自信でもあるのか、それとも俺を舐めているのか。


「ただの殴り合いじゃ面白くないな。」


「ほう、どうするつもりだ?」


「賭けをしようじゃないか。」


「賭け?」


「俺が勝ったらお前は黙ること。お前が勝ったら、俺は二度と絵里子に近づかない。」


 いつの間にか周りには大勢の見物客が集まっていた。


「決闘が始まるぞ!」


「うわ、荒木鉄斎の弟子と拳王の弟だって!」


「どっちが勝つと思う?」


 フィードは人ごみを見渡して得意げに口元を吊り上げた。


「いいぜ、じゃあこの場のルール通りにやろう――拳と脚だけ、手加減なしだ。俺はもう絵里子には興味ない。条件は変える。お前が負けたら、みんなの前で土下座して謝れ。」


 俺は黙って上着を脱ぎ捨てた。日差しの中、裸の上半身が引き締まった筋肉のラインを浮かび上がらせる。


「いいだろう。」


 言い終わらないうちに彼の拳が飛んできた。


 普通なら不意を突かれていただろうが、俺は師匠と毎日鍛錬してきた。格闘の読み合いには普通の人より遥かに長けている。


 彼が腕を振りかぶるのを見てすぐに察し、一歩かわし、肘で彼の脇腹を打ちつけた!


「ぐあっ!」


 フィードは2メートルほど吹っ飛ばされ、地面に尻もちをついた。


「言ったことは守れよ。」


 フィードは地面に這いつくばりながら、歯ぎしりをして恥ずかしさと悔しさを噛み締めていた。


「覚えておけよ!俺の兄貴は拳王リードだ。」


「リード?」


 俺はその名を知らない。武の世界では、俺は誰も恐れずにやってこれた。


「兄貴に復讐させたいなら、かかってこい!」


「おう、覚えておけよ。」


 彼は起き上がろうとし、部下が慌てて支えた。「行くぞ。」


 彼らが去った後、荒木鉄斎が慌てて駆け寄ってきて、額に汗を滲ませた。


「お前はバカか!もし兄貴に仕返しされたら、お前は死ぬぞ!」


 師匠は可愛い。さっきはあんなに怖かったのに、今は怯えている。


「師匠、なぜわざわざ相手の士気を上げて、自分の威厳を下げるんですか?お前、黒牙流が最強だって言ったじゃないですか。」


「おいおい、死ぬのはお前だぞ。焦れ。」


 彼が尻に火がついた猫のように慌てる姿に、ちょっと笑いがこみ上げた。


「はあ……お前の師匠やるのはホント大変だ。」


 彼は俺を引きずるように連れて行く。


「早く戻って稽古だ。今のお前じゃ拳王リードに勝てるわけない。」


 ……そんなにヤバいのか?


 また稽古場かよ。正直、面倒だ。


「師匠、俺はもう限界だ。多分武道家としてはこれが頂点だ。」


「バカ言うな。武学に限界なんてない。」


 彼は尻尾を踏まれた猫のように激昂し、厳しい口調で言った。


「悠人、お前は傲慢になってる。」


「違う、自信だ。」


 俺は武道着の帯を締め直し、構えをとる。


「いい弟子だ。なら今日はきっちり教えてやる。」


 彼も構え、踏み込んできた。


 いつの間にか、あの荒木鉄斎の恐ろしい巨躯も、俺にはもう脅威に感じなかった。


 一瞬で床が割れ、木くずが舞う。


 荒木鉄斎が地面に叩きつけられ、


「いてて……逆徒!大逆不道!手加減しねえとは……ぐはっ!」


 呻いた。


「師匠、全力は相手への敬意だって言ったじゃないですか。」


「そうだ、師匠はそう言ってる。」


 彼は腰を押さえながら立ち上がった。


「もう教えることはないようだな。嬉しいよ。」


 彼は鋭い眼差しで俺を見つめた。


 ……謙遜の言葉でも言うべきか?


「師匠、実はまだまだ学びたいことはあります。」


「はは、弟子よ、お前は謙虚すぎる。」


「師匠、魔法使いを知っていますか?俺、魔法も習いたいんです!」


 異世界に来て、肉弾戦よりも華麗な魔法を使って、美少女の羨望の眼差しを浴びたい。


「魔法?そんなこと言うとはなにごとだ?人体ほど精巧なものはない。筋肉も骨も全て無限の宝だ。武学の先人はせいぜいその一割しか掘り起こせていない。」


 ……待て、師匠が筋肉自慢を始めたぞ。


 いや、筋肉じゃなくてただの脂肪の塊がデローンってしてるだけだ。


 目の毒だからやめさせなきゃ。


「師匠、拳王リードにどう対抗するんでしたっけ?」


 その言葉に彼の顔色が一変し、眉間に厳しい影が落ちた。


「一番いいのは降参することだ。」


 ……は?マジで言ってるのか?


 でも彼は冗談じゃなさそうだ。


「なぜ?」


「俺の息子と同じ死に方をしてほしくない。あの冷たい闘技場で死ぬのはごめんだ。」


 彼は落胆の色を隠せず、まるで背骨を抜かれたようだった。


「師匠、息子さんがいるんですか?今まで見たことないけど?」


「もう死んだ。お前とは違うが、あいつは勇気を持って頂点を目指していた。だが最盛期に拳王に殺された。」


 つまり、俺には義兄がいたが、彼は殺されたのだ。


「息子が死んだせいで妻も離れていった。俺があいつを闘技場に連れて行ったからだ。」


 なるほど、だから絵里子も師匠に冷たいのか。


「わかった!」


「何が?」


「武道は孤独だが、魔法ならハーレムも夢じゃない!」


 荒木鉄斎は口を開けたが、何か言いたそうで結局やめた。顔が便秘みたいになってる。


「それでも決闘に行くのか?」


「もちろんだ!師匠の仇を討つ!」


「悠人……」


 巨大な身体が俺を抱きしめた。


 ……息ができねえ。


 必死に振りほどいて、師匠の妻は命の危険を感じて離れたのかもしれないと納得した。


「勝率を上げるため、黒牙流の禁術を教える!」


「強力な技ですか?」


 ついに奥義の登場か?ワクワクが止まらない。俺は武道の終着点は魔法みたいに遠距離攻撃だと思ってたから、これで魔法は捨てるつもりだ。


 すると荒木鉄斎は床下から薄い冊子を取り出した。


「見ろ!これが黒牙流奥義・赫焉ノ血解だ!」


 ……名前からしてダサいんだけど!


「師匠、直接教えてくれればいいのに。」


「ええと……俺も久しぶりだから、復習が必要だ。」


 確かに、この技は体にかなりの負担をかけるはずだ。普通の人間はまず習わない。


 俺の考えを察したのか、師匠が説明した。


「これは本流派の禁術だ。魔法の禁術と同じで、よほどのことがない限り使うな。使う間は心臓が過負荷で動き、体温は3分間で70度に達する。普通は45度で死ぬが、武道家はギリギリ50度まで耐えられる。」


「その間、力と爆発力、速度が2倍以上に跳ね上がるが、使い終わったあとは不可逆なダメージが残る……」


 説明途中で俺は冊子を奪い取った。


 力が2倍って……武道家にとっては単純に強さが2倍どころじゃない。


 もし1分だけ使えば副作用なしになるのでは?


 よし、俺は天才だ!

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