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転生即奴隷、でも俺には奪えるスキルがあった  作者: まつしま ぜん
第一章 どれいがぶどうかになったけん
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あしからはじまるちゅうせい

 部屋に入ると、そこには一人の老人がいた。長く待っていたのか、彼はうたた寝していた。


 ……なんだ、年老いた貴族が若い召使いを欲しがってるだけか?もしかしたら跡継ぎがいないとかで、オレを養子に——なーんて妄想しながら、オレは彼の顔を覗き込む。顔色は白く、髭はまばらで、シミが目立つ。


「おい、起きて!」


「ん……」


 肩を揺すり、声をかけると、ようやく目を覚ました。


「若造、起こしてくれたのはお前か?」


「はい、お爺さん。もしかして、あなたがオレのご主人様ですか?」


「コホン、違う。ワシもただの召使いだ……」


「おいジジイ、ここをどこだと思って寝てやがる?自分の家のソファとでも?枕とスリッパも欲しいのか?毛布でもかけてやろうか?」


「……ワシはお前を新しい主のもとへ連れていく役目でな」


「その……さっきのは全部誤解です!口が滑っただけで、本当は心の底から年長者を尊敬しておりまして——特にあなたのようにご立派な方は!」


「……」


「ご案内いただけますか?ご年配ですし、腕を貸しましょうか?肩を揉んだり腰を叩いたり、お水でもお持ちしましょうか?」


「必要ない、行くぞ。主をお待たせしてはならぬ」


 口調が明らかに怒ってる……しまった、初対面で印象最悪じゃねえか!下手すりゃ主にチクられて、屋敷の隅っこで一生庭掃除なんてオチも……


 不安なまま監獄を出る。けれど、やがて目にしたのは、つややかな石畳の大通り、そして壮麗な王宮の門だった。門には金色の浮き彫りが施されている。


 ……おいおい、王宮ってどういうことだよ。


 ちらりと老爺を見るも、彼は落ち着き払って歩き続ける。衛兵も一礼するだけで誰も咎めない。どうやら常連らしい。


 まさか、オレの新しい主って……王様!?いやいや、まさか。上級貴族か?それでもおかしい。王の間近に住むなんてありえない……じゃあ、まさか本当に王様!?


 ……オレの若くしなやかな肉体が目的か!?ま、まさかね……


 喉がごくりと鳴る。恐る恐る聞いてみた。


「ご主人様……いや、王様って、どんな方なんですか?」


「おお、我らの陛下は慈悲深く、その恩恵は国中に行き渡っておる。すべての民がその長寿を祈っておるのだ」


 国中ねぇ……オレはその“民”に入ってないみたいだけどな?


 ようやく一つの部屋の前に辿り着いた。老爺がノックをする。オレの心は、不安と期待が交錯する。


 そして——


 扉が開く。


 太った貴族でもなく、老いた王様でもない。


 そこにいたのは、絵本から抜け出したようなロリ姫だった。


 透き通るような肌、ふわふわした金髪、宝石のように輝く瞳。その瞳が、まっすぐオレを見ていた。


 やべぇ、心臓持ってかれそうだった……!


「姫様、彼を連れてまいりました」


「あなたがあの拳王を倒したという奴ね?全然大したことなさそうじゃない」


 まるで偽物を掴まされたみたいな顔!でもまあ、姫様だし、このくらい横柄でも……かわいい。


「姫様、昔からこう言います、人は見かけによらぬもの——私は見た目はひ弱ですが、実際に拳王を打ち倒した事実がございます。それが何よりの証でしょう」


 よし、完璧。これで少しは印象良くなったはず……


「ふん、どうせ返品できないし」と不満げに呟くと、くるっと踵を返してベッドに飛び乗った。


「奴隷、こっち来て、腰が痛いからマッサージしなさい」


 まさか、ここが……姫の寝室!?


「姫様、それはいくらなんでも——上下のけじめが……」


「あら、堅いわね!」


「まずはこの奴隷に制御魔法を施すべきかと。裏切られては大変ですから」


 てめぇえええ老害!!てっきりいい人かと思いきや、ここで落とし穴仕掛けてきやがったな!?義憤面すんな、こっち見ろコラ!


 オレは思わず睨みつけた。


「制御魔法、ですか……」


 姫はベッドの縁に手をつき、頬をぽりぽりかきながら、ちょっと恥ずかしそうに言った。


「……まだ、できないの」


「なっ!?魔法の先生に教わったばかりじゃ——」


「なによ、それって私がバカだって言いたいの!?出てって!この者の忠誠心は私が見極める!」


 姫、けっこう短気だな……今後の発言には気をつけないと。


「では、後日魔法教師を呼び、制御魔法を——」とだけ言って老爺は退出。つまり、ここからは姫と二人きり。


 ……制御魔法。名前だけで十分ヤバそうだ。お願い、姫様、どうか助けて——


 ガンッ!


 突然、物が顔面にぶつかった。痛ぇ!何だよこれ——靴?


「命令するんじゃないわよ。高い金出して買ったから許してるけど、さもなきゃ蹴り飛ばしてるところよ!」


 ど、どこの姫だよ、そんな下品な言葉……!


「何してるの?拾いなさいよ、奴隷。あなたの奴性はどこいったの?」


 言われるがまま、オレはその華奢な靴を拾い上げ、両手で恭しく差し出した。


 姫は満足げに微笑みながら、靴を履こうとせず、スカートの裾をひらりと捲り上げる。そして、その白くて小さな足を、つっとオレの鼻先に差し出した。


 まるで雪見だいふくみたいな……


「いい?奴隷に大事なのは忠誠と服従。じゃあ、舐めなさい」


 目の前に差し出された足。


 白い足の甲には青い血管が透けて見え、足裏はふんわりとした桜色——間違いなく、甘やかされて育った人間の足だ。豆ひとつない、柔らかそうなその足は、ピンと張られたことで美しい足のアーチを描いていた。


 やばい、目が離せない……。


 微かに震える五本の指を見つめていると、ふと頭に浮かんだのは、日本の田舎で食べた団子の記憶だった。


 柔らかく、白くて、もちもちで——


「どうしたの?ためらってるの?これは忠誠のテストよ。嫌なら首を刎ねるけど?」


 忠誠のテスト?むしろこれは……入社祝いじゃないか?


 全然、屈辱じゃないし!こんな可愛い足だぞ!?


「……承知しました、ご主人様」


 オレは身をかがめ、彼女の足をそっと手に取った。真下から見上げると、まさに“上から目線の姫”そのもの。


 いや、間違いなくその通りだった。


 ——口を開け、舌を伸ばす。


 柔らかく、すべすべで、予想していたような匂いは一切なく、微かに汗の甘みが混じっていた。それはまるで、雪見だいふくのような感触だった。


「ちゅ……ぺろ……ここも、忘れずにね……」


「ん……ふぅん……」


 ……なにかおかしい。オレ、今——味わってる!?


 ちらりと姫を見上げると、彼女は目を細め、指を口元に当て、吐息を漏らしていた。


「ふふっ、慣れてるのね?もしかして足フェチ?」


 ヤバい、そう思われたら印象悪い!


 オレは必死に脳内フル回転し、態度を装う。


「姫様の命令でなければ、こんな屈辱的なこと……!」


 姫の足を離し、キリッとした顔で言い放った。


「ふん、下賤の者のくせに」姫は無造作にオレの服で唾液を拭いながら言った。「言うことを聞かなかったら、またこの屈辱を与えてやるから」


「……士は、殺されても辱めには屈しないものだ!」


 ——イエス、フットフェチ大勝利!


 いや、違う!オレは足フェチなんかじゃない!


「ふーん、意外と知性あるじゃない。名前は?」


 まさかこんなことで姫様に気に入られるとは思わなかった。これは……まさか本当に成り上がりのチャンスか!?


「つまらぬ名ですが、渡辺悠人と申します」

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