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唐笠お化け

作者: 口羽龍

 光太郎こうたろうは田舎町に住む小学生。通っている小学校は100人にも満たない。かつては数百人もいたらしいが、過疎化が進んで、現在はこんなに少ない。


 光太郎は焦っていた。雨の予報がなかったのに、帰る時間が近づいてから降ってきた。光太郎は傘を持ってきていなかった。それに、雨具も持ってきていない。


 光太郎は帰り道を走っていた。早く帰らないと。びしょ濡れで帰って、風邪を引きたくない。


「雨なんて聞いてなかったよ!」


 光太郎は走り続けていた。だが、目の前に見えるのは田んぼばかりで、集落が見えない。その先の集落に実家があるのに。どこまでは知ったら見えるんだろう。いつも歩いている帰り道が遠く感じる。疲れているからだろうか? 雨だからだろうか?


「はぁ・・・」


 光太郎は息を切らしていた。まさか帰り道で走ると思わなかった。早く帰らないと、母が心配する。


「どうしよう・・・。すごい雨だよ・・・」


 と、光太郎はある家が気になった。その家は、もう何年も人が入っていないようで、庭は草ぼうぼうだ。それに、家は今にも倒壊しそうだ。不安だけど、ここで雨宿りをしようかな?


「ここで雨宿りしよう」


 光太郎は廃屋で雨宿りをすることになった。光太郎は玄関の前で立ち止まった。いつになったら止むんだろう。次第に雨が強くなってきた。なかなか止みそうにないな。


「うーん・・・、なかなか止まないな」

「大丈夫?」


 突然、誰かの声がした。光太郎は驚いた。ここに誰かが住んでいるんだろうか?誰も住んでいないように見えるけど。


 光太郎は横を向いた。傘が浮いている。そして、顔がある。これは唐笠お化けだろうか? まさか、ここには唐笠お化けがいるのかな?


「えっ!?」


 光太郎は戸惑っている。まさか唐笠お化けに会うとは。怖いけど、どこか優しそうだ。悪い事をしないようだ。


「一緒に帰ろうか?」


 光太郎はどうしようと考えた。だが、この状態では傘を使うしかない。せっかく一緒に帰ろうと言ってくれたんだから、一緒に帰らないと。


「い、いいけど・・・」

「ありがとう」


 光太郎は唐笠お化けと一緒に帰り始めた。まさか、唐笠お化けと一緒に帰るとは。最初は怖いなと思ったけれど、怖くはない。むしろ、親近感を覚える。


「まさか妖怪と一緒に帰れるとは」

「驚いた?」

「うん。でも、悪い事はしないよ」


 光太郎は周りを見ていた。道行く人々が気になっているようだ。だが、光太郎を見て何も思っていない。どうやら、唐笠お化けは彼らに見えないようだ。


 光太郎は集落に入ってきた。集落は狭い道が多くあり、どの家も蔵がある。蔵には、あまり使わないものを入れている。


 しばらく歩いていると、かやぶき屋根の家が見えてきた。それが光太郎の実家だ。実家は農家で、トラクターがある。


「あれが僕の家」


 唐笠お化けは家を見た。これが光太郎の家なんだ。なかなか立派だな。


「ふーん・・・」


 光太郎は玄関にやって来た。もう唐笠お化けは必要ない。帰る事ができたからだ。雨は今も降り続いているが、今さっきに比べたら少なくなってきた。


「じゃあね。バイバイ」

「バイバイ」


 唐笠お化けは家に戻っていった。光太郎はその後姿をじっと見ている。これはラッキーだったんだろうか?光太郎は玄関を開け、家に入った。


「ただいまー」


 その声を聞いて、母がやって来た。母はエプロンを付けている。晩ごはんを作っているようだ。


「おかえりー。雨で大変だったでしょ?」

「うん」


 光太郎はすぐに2階に向かった。今日は大変だった。早く2階でゆっくりしよう。母は心配そうに見ている。風邪を引きそうで心配だ。


 光太郎は2階の自分の部屋に戻ってきた。ランドセルなどを置くと、光太郎はベッドに横になった。まさか雨が降って、こんな事になるとは。だけど、いい経験だな。


「はぁ・・・。何とか帰れた」


 そのまま光太郎は、晩ごはんまで寝ていた。




 翌日、いつものように光太郎は目を覚ました。幸い風邪は引かなかったようだ。光太郎はほっとした。

 光太郎はダイニングにやって来た。ダイニングには両親がいる。両親はもうすぐ出勤するようで、スーツを着ている。


「おはよう」

「おはよう」


 母はほっとしていた。今日は晴れの予報だからだ。昨日のようにゲリラ雨にならないように願うしかない。


「今日は晴れてよかったね」

「うん」


 光太郎は朝食を食べ始めた。みそ汁は野菜がたっぷりで、とてもおいしい。


「今日は問題なく行って、帰れそうだ」


 昨日は大変だった。だが、唐笠お化けのおかげで無事に帰れた。まさかこんな事になるとはな。でも、帰れたことには感謝しないと。


「ごちそうさま」


 光太郎はリビングで考え事をしていた。どうしてあの廃屋に唐笠お化けがいたんだろう。まさか、ここに住んでいた人の霊だろうか?


「うーん・・・」

「どうしたの?」


 母の一言で、光太郎は我に返った。深い事を考えずに、普通に登下校しないと。


「何でもないよ」

「そう・・・」


 光太郎は歯を磨いて、登校の準備をしに行った。母はじっとその様子を見ている。今日はどんな1日になるんだろう。わからないけれど、いい1日を過ごしてほしいな。


 しばらくして、光太郎が部屋から戻ってきた。これから登校をするようだ。母は大広間にやって来た。


「行ってきまーす」

「行ってらっしゃい」


 光太郎は玄関を出て、小学校に向かおうとした。と、傘立てを見ると、昨日見た唐笠お化けに似た柄の傘がある。こんな傘、買った覚えはないんだが。


「あれっ!?」


 まさか、昨日の唐笠お化けだろうか? それとも、誰かが買ってきたんだろうか? 光太郎にはわからない。

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