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ウルフ in お茶の間

 連続次元災害から数日後、パワーウルフはテレビ局のスタジオにいた。


「パワーウルフ君はこういうの緊張しないタイプ?」


 メカニスレッドがその雰囲気に似つかわしいさわやかな声で問いかける。


「初めてだけど、特に感じないかな」

「それはよかった。フォースワンはこういうの苦手でいつも大変そうだからさ」

「むぅ......」


 フォースワンがヘルメットの下で渋い顔になっているのが伝わってくる。


「あんたは結構慣れてそうだな」

「まぁ、お茶の間の人気者だからね」

「自分で言うか」

「ははっ」


 嫌味なくさわやかに答える彼の様子に、パワーウルフは確かにそれが嘘ではないことを感じた。



「......それでは、先日の連続次元災害で勇敢に町を守ってくれたヒーローの皆さんに登場いただきましょう!」


 番組MCがそう宣言すると、スタッフに促され3人はセットの中に入っていく。


「本日はたくさんの尽力してくださったヒーローの中から代表して3名に来ていただきました! それでは、軽く自己紹介をお願いします」


 MCの言葉とともにメカニスレッドは自然に前に出て自己紹介を始める。


「メカニス所属、メカニスファイブのリーダー。メカニスレッドです」

「ギガロジスティクス所属ロジフォースのリーダーフォースワン......だ」

「ノムラ工業......のパワーウルフだ」


 パワーウルフは、別に所属とかじゃないよな、と思い一瞬言いよどんだ。


「いや~、街中に現れた怪獣2体を鮮やかに倒した3チームです、素晴らしい活躍でしたね。今回の戦い、どういった点が難しかったですか?」

「そうですね、やはり市街地ということで使用できる装備に制限が......」


 受け答えは基本メカニスレッドが捌き、コーナーは順調に進んでいった。


「続いては次元災害研究の第一人者でありますオオシマ教授に、次元災害のメカニズムとそれによって特殊な力に目覚める人たちとの関係について教えていただきます。オオシマさん、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 オオシマと呼ばれた男は白髪にカーディガンという出で立ちで、いかにもという雰囲気を黒縁のメガネが際立たせている。


「まず次元災害についてですが、次元孔と呼ばれる空間の裂け目のようなものから怪人や怪獣のような生命体が侵入してくる事象をそう呼んでいます。次元孔の発生要因や生命体の目的については、今もわかっていません。次元孔はすぐに閉じますが海中では安定化しやすいこと確認されており、そのため怪獣のような大型の個体が海中から出現していると考えられています」

「パワーウルフさんは目の前で次元孔の発生を見たそうですが、どういったものだったのでしょう?」


 オオシマがモニターに表示されたスライドで説明した内容を受けて司会者が質問する。


「なんか、空間に切れ目が入ったような感じだったな。その奥は......う~ん、よく解らなかった。見えてるけど認識できない、みたいな?」

「先ほどもあったように孔はすぐに消えてしまいます。なのでその構造などの研究はなかなか進んでいないのが現状です」

「なるほど、孔の中は完全に未知ということですね。一体中には何が広がっているのか、解き明かせる日は来るのでしょうか」


 司会が軽くまとめて締めくくると、次のコーナーに向けて空気を切り替える。


「次は特殊な能力を持つ人々についてです。本日お越しいただいた3名のように特別な”力”を持っている人たちはどのようにして生まれるのでしょう?」

「はい、次元孔から未知のエネルギーが流入してきているというのはご存じの方も多いと思います。そのエネルギーを体内に取り込み、己のものとして使える特性を持つ人。そういった人々が”力”に目覚めるのではないかというのが有力な説です。しかし最近では......」

「......! オオシマさん、その図は?」


 微動だにせず、聞いているのか聞いていないのかわからない感じで座っていたパワーウルフがある1つの図に目を止めた。


「これですか? ああ、こっちの。これは次元孔エネルギーの波長スペクトルを表した図です」


「企業などが運用しているエネルギーもそうですが、スペクトル分析をすることでその特性を調べることができます。エネルギーにも様々あるわけですが、最近の研究では特殊な能力をもつ人たちはそれらを...」


 オオシマが答えた後、パワーウルフは特に意見をはさむこともなく収録はスムーズに進み、三人の出番は終わった。


「続いては誰もが知る美しき最強ヒーロー、ラヴ。その強さの秘密にせまります!」


__......


「お疲れさまでした! こちらからお帰り下さい」


 スタッフにうながされ、三人はスタジオから廊下へ出る。


「二人ともお疲れさま! パワーウルフ君は初めてとは思えないくらい落ち着いてたね。質問とかも出してたし、意外とああいうデータとか興味あるんだ?」

「あ~、まぁ、......な」

「そっか。そういえばキミに相談したいことがあるんだけど、いいかな?」

「俺に? なんだ?」


 こんな男にも悩みとかあるのか、とパワーウルフは思ったがその内容は予想したものとは異なっていた。


「実はウルフ号の活躍を見てウチもジェネレーターの研究を本格的にやろうってことになって。それに協力してもらえたらなってワケなんだけど。ノムラ工業とウチはなんの接点もないからさ、キミから話をしてもらえないかな。あ、ちなみにギガロジも共同でやる予定なんだけど」

「分かった。一応おっちゃんに伝えてみるよ」

「ありがとう!」

「よろしく頼む」

「ああ。二人はもう帰るだろ? 俺はちょっと確認したいことがあるから、先に行ってくれ」

「了解、じゃあまたね」

「うむ、ではまた」



「次元孔エネルギー......」


 その後、ノムラ工業、メカニス、ギザロジスティクスによる共同研究が始まり、パワーウルフはそれぞれの橋渡し役のような存在になっていった。




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