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ウルフ、参上! 3

「今回は残念でしたが、次回はぜひわが社の装備をよろしくお願いします!」


 もうひとつの男の声が通信に割り込んでくる。


「こちらは?」

「もう一つの装備を提供いただいたシャープ社の方です。二社とも清涼飲料の販売を行っている会社ですよ」

「あぁ~、あれか! 俺もよく飲んでるよ」


 そういわれて赤と青のよく見る缶ジュースが頭に浮かんだ。


「ありがとうございます! それでわが社をお選びいただいたのですね!」

「いや、俺はシャープ派だけど」

「あ......そうなんですね......。それでも選んでいただけたのはうれしい限りです。ってパワーウルフさん!? 何をしてらっしゃるんですか!?」

「いや、早くこっちも装着しないと」


 片方の腕に装備が装着されたのを確認し、今度は反対の腕を青い方の装備にあてがう。


「あちらは競合他社さんなんですよ~。色々とあるんですよ。ホラ、色々と」

「......? でもこっちも装備してもらったらうれしいんじゃネェのか?」

「イ、イヤー......。ハハハ......」

「ほら! あちらも困ってるじゃないですか! お互い気まずいですって!」


 男たちでギャーギャー言っていると、オペレーターが割って入る。


「ヒーローの方達はビジネス的なことには疎い方が多いので期待しない方がいいですよ」

「え? 悪口?」

「まぁ......、そこも良い点と言えるかもしれないですね」


 そんなことを話しているうちに装着が完了する。


「で、これは何ができるんだ?」

「まずは見た目通り盾として使用いただけます」


 ポッパー社の男が説明した。


「あ、そこは同じですね。あとうちの方はブラスターを内蔵していて、遠距離での戦闘も可能になっています」

「え? 実はこちらも同じでして......」


 シャープ社の男の説明にポッパー社の男の声がひきつった。


「パクったのか? ライバルだからってそれはあんまりよくないんじゃネェか?」

「全くそのようなことはございません! ポッパーの弾ける炭酸をイメージしてデザインしたらこのような形になりまして......」

「そうです! こちらもシャープの切れのある炭酸を体現するモノを作っただけです!」


 お互い意図せず同じような形にたどり着いてしまったようだ。


「なんだ、互いに高めあって同じ高みを目指してるってワケだな、アツいじゃネェか。よし、まずはいつも飲んでるシャープから味見と行くか!」


 そういうワケでは......という声を無視してウルフ号が盾を装備した腕を怪獣へと向ける。

 盾の先から覗く三つの銃口から、青色のエネルギー弾が連続で発射される。発射された弾は、こちらへ近づいてきていた怪獣にそのほとんどが命中すると、青い爆発を残した。


「次はコッチだ!」


 続けて赤色の弾が着弾し、赤く爆ぜる。


「どうだ? 効いてるか?」

「はい、目標の体表に損傷を確認。効いています」

「よいっしゃぁ! ジャンジャカ撃ってやる!」


 ウルフ号が赤と青の弾を交互に雨のように放つ。


「目標が再び硬質化しています。損傷認められません」

「何ィ~? これでもダメなのかよ......。もっと近くから浴びせてやるか」


 ウルフ号がまたしてもじっと動かない怪獣に向かって一歩踏み出す。


「お、重い......。ただでさえ出力不足なのに、装備の文さらに動きが悪くなってるぞ......」


 片腕の反動を押さえるので精いっぱいだったため出力不足は感じていたが、ウルフ号の歩くスピードは最初と比べてもかなり緩慢になってしまっていた。


「それでしたら、ウチの装備にはエネルギー供給機能が備わっています。そちらを使ってみてはいかがでしょう」


 ポッパー社の男が提案する。


「本来は異なるエネルギーを混ぜるのことは危険なので避けるべきですが、ウルフ号側の出力がこれだけ低ければ問題ないでしょう」

「オッケー。じゃあ接続するぞ」


 ウルフ号の肩から管が伸び、赤い盾の裏にあるエネルギー供給口と接続される。

 すると、ウルフ号の足取りは軽くなり、なんなら最初よりも動きがよくなりさえしている。


「おお! こりゃすげぇ!」

「余剰分のエネルギーをバイパスしてジェネレーターとして運用する。この差別化で一歩リードです!」

「ハ、ハハ......。ウチも搭載してるんですよね、その機能......」

「え?」


 またしても気まずい空気が流れる。


「あ、そうなんだ。それじゃあコッチも接続っと......」

「ちょっと!! 話聞いてました!? 異なるエネルギーは混ぜちゃダメって......!」

「え?」


 いうが早いかもう片方の供給口が接続された途端、ウルフ号の各部にある排気口から紫色の炎が激しく噴き出しはじめた。


「うぉぉお! どうなってんだこれ!?」

「2つのエネルギーが増幅しあっています! 出力を絞ってください!」


 急いでサブジェネレーターからのエネルギー供給を絞ると、吹き出す炎は弱まりはしたが止まることはなかった。


「まさかポッパー社のエネルギーとこんなに相性がいいとは......。単純に足し合わせたよりもはるかに高い出力でしたね」

「流石、試験機というだけあってジェネレーターは頑丈ですね。さっきの出力でもまだ余裕があったようです」


 たしかに、特に機体に異常は見られない。


「何事かと思ってビビっちまったが、こいつもやればできるじゃネェか。一気に形勢逆転と行くか!」


 ウルフ号が軽やかに一歩目を蹴りだし、そのまま勢いに乗って怪獣に向け走り出す。


「うぉ~! さっきまでが嘘みたいにカラダが軽い!」


 紫の炎が再び吹き出し、機体をさらに加速させる。


「出力50%。まだ余裕があります」

「まだまだいくぞ! ウルフ号!」


 燃え上る炎が大きくなるにつれて、どんどん速く、歩幅も大きくなってゆく。


「出力70%。排気されるエネルギーの勢いで機体のバランスが不安定になってきています。注意してくださいね」


 いわれてみると、確かに地面を蹴るたびに少し浮かび上がるのを感じる。


「だったら、逆にこんなのはどうだ?」


 ウルフ号が一度沈み込んで力をためると大きく跳び上がる。「前面排気口閉鎖!」パワーウルフが叫ぶと機体の前面から出ていた炎が止み、その分後ろ側からさらに激しく、まるでジェットエンジンのような勢いで紫炎が噴出する。

 そして、炎の勢いで弾き出されるように空中を加速すると、あっという間に怪獣の目の前に着地した。


「オラァア!」


 突然降ってきたウルフ号に対し、怪獣はとっさに尻尾攻撃を繰り出す。ウルフ号はそれを片手で受け止めると反対の腕からの砲撃でメッタ撃ちにした。

 怪獣が青い爆閃の中でうなりを上げてよろめく。


「これで終わりにしてやる......!」


 ウルフ号がジェネレーターの出力を上げ上昇していく。


「2つのエネルギーが増幅しあうってんなら! ウルフ・ブラスタァア!」


 両手を組んではるか下からこちらを見上げる怪獣に向かって突き出す。そして、6つの銃口が次々に閃くと、無数の赤と青の光が降り注ぐ。

 怪獣に、海面に当たって弾けた光は異なる色と混ざり合って、より大きな爆発となって広がっていく。

 ついに耐えられなくなった怪獣は、閃光とともに巨大な水柱を立てて爆発した。ほかの怪獣もそうであるように後には何も残らない。



「目標消滅。お疲れさまでした、パワーウルフ」

「お見事でした!」「素晴らしかったです!」

「ああ、あんたたちもありがとな。......俺の手で、みんなの街を守ったぞ......!」


 __......


「ありがとうございました、パワーウルフさん。我々も新しい可能性が開けた気がします」

「はい、何か新しいことができそうです」

「こちらこそ、あんた達の装備のおかげで助かったよ。何なら今後も使わせてもらいたいぐらいだ」


 最初は少しとげとげしい空気だったポッパー社とシャープ社の二人だが、何やら意気投合したようだ。


「ぜひお願いします! これ以上ない宣伝効果ですよ!」

「こちらもぜひ。上に確認してみますが十中八九大丈夫でしょう」


 俺の提案に二人とも快い返事を返してくれた。これでこの街も自力で怪獣災害に対抗できるようになるだろうか。いや、そうしていかなければ。

 初めてマスクを被ったあの時の気持ちが蘇る。


「あ、パワーウルフさん、報道のヘリですよ! 私たちの装備をアピールしておいて下さい!」


 いわれて上を見上げると、確かに少し離れたところにヘリが静止していた。


「アピールって言われてもな。フンッ」


 こういうのは得意じゃない。迷った末に俺はヘリに向かってガッツポーズをした。


「ま、まぁこの際何でもいいです。すでにこの装備の素晴らしさは証明されていますし」

「えぇ、さっきの戦いで十分伝わったはずです」


「おう! 俺たちの完全勝利だ!」


 振り返ると、この街の海がいつもより眩しく輝いていた。


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