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第一村人発見

読んでいただきありがとうございます。

「やっぱ飲み物は冷えていた方が美味いな」


冷蔵庫から取り出したボムジュースを飲みつぶやく。


足元には木像が転がっており机の上にはシェイティア様を象った木像ができていた。







異世界に来てから3か月は経っただろうか。家はかなり充実した。

アダマンタイトで作った大きな瓶に色とりどりの果物を詰めて水を入れ、ジュースサーバーのようなものも作った。

冷たい石にさらに魔法を付与して解けない氷の役割をしたものを入れてあるのでいつ飲んでも冷たくおいしい。


家の横は耕して魔力草の畑を作った。魔力草は生でかじってみるとシャキリとみずみずしい触感をしておりこれだけで極上のサラダになる。


シェイティア様に捧げる立体パズルを作るべく、グレイウルフやブラッドタイガーを象った木像を作ってみながら、思いついた上記のアイテムを作りつつ日々を過ごしていた。





今日は久々にあたりを探索してみるか。


狼のマントをかぶり獣の皮で作った鞄の中に布の水筒とタイガージャーキーを昼食用に用意していざ出発である。

空間収納があるので手ぶらでも問題ないのだがこういうのは気分だ。邪魔にならないくらいの装備があった方が冒険している感を味わえる。

この鞄も結晶の角を携えた大きな鹿の皮から作ったものだ。

この鹿は『ソウルディア』という種類らしく結晶をまとった角が特徴で、狩猟しようにも生涯で1度出会えれば幸運なそうな。

おそらくドラゴンを含めても最も希少な生物だったのだろうがそれに気づいたころにはすでに鞄に加工されていたそれを見て、大切に使うことを誓った。




森の中を散策するのもだいぶ慣れた。

魔力を抑える量によって動物に襲われる頻度が変わってくる。

全体量の20%になるくらいまで魔力を抑えると中型から大型の動物が襲ってくる頻度が増え。

5%ほどまで抑えると小型の動物まで襲ってくる。

完全に魔力を抑えると、気配が消え失せるのか何にも襲われない。見つかり次第襲ってきたトゲウサギが目の前を素通りするほどだ。

ソウルディアを見つけたのも気配を完全に消したときだった。




クルミのような木の実を採集していると森の中では聞きなれない音が聞こえた。

木が倒れる音でもなく何かが激しく砕ける音と男の叫び声。


「人が襲われているのか?」


この3か月森の中で人と出会ったことはなかったのでこの世界の住民と出会える興奮とともに、鬼気迫る叫び声に引っ張られるように森の中を駆け抜けた。




叫び声のもとへ駆けつけるとそこには車輪の壊れた荷馬車と荷物を守るように大声をあげる小太りの男がいた。

周りをグレイウルフが囲んでいる。森を抜けようとしてグレイウルフに襲われたんだろう。


「大丈夫ですか!」

グレイウルフを1匹蹴り飛ばし道を開けて男性に駆け寄る。

男は大きな口ひげを携えていたが普段はきれいに整えているのだろうが顔は脂汗にまみれているせいかひげもぐしゃぐしゃと乱れている。


「あ、あああ、あなたは!?だ、誰でも構いません助けてください!礼はいくらでもします!!」

「もう大丈夫ですよ。狼は全て倒しました。」

「へ・・・?」


男性がかなり焦っているのを見て落ち着かせるため助けの言葉を言い終わると同時に時を止め狼を仕留めた。

男性からすると先ほどまで低いうなり声をあげて威嚇していたグレイウルフが一瞬にして地に伏せているのだ、状況を飲み込めないのも無理はないだろう。


「あ。ありがとうございます。そうだ!ソフィア!ソフィアは!」

礼を言った男は急いで荷馬車の中に入った。

気になり後に続き荷馬車に入るとそこには一人の若い女性が苦しそうに横たわっていた。

男性の娘だろうかソフィア大丈夫かと声をかけながら娘を抱きしめ涙を流している。

女性の首筋を見ると赤いひび割れのような跡が見える。


「その女性は?」

「毒を盛られたのです!手持ちの材料では薬を作れないので聖女様がおわすエンディル王国に向うため不帰の森を抜けようとしたのですが、それが間違いでした・・・。しかし森を迂回していては毒で娘が死んでしまう・・・。」

男は娘を抱えたまま力なくうなだれ大粒の涙を流していた。首筋のひび割れを見ると少しづつではあるが徐々に広がっている。

「た、助けられるかもしれません!」

穏やかじゃない単語が聞こえ思わず口をついて出た言葉だ。

男は目を見開いてこちらを見た。

「お願いします!娘を助けてください!私の命より大事な愛娘なんです!」


俺は娘さんを優しく抱き上げひとまず男とともに荷馬車から出た。

大きな荷馬車とともに家の前まで瞬間移動した。


「ここはいったい!?」

男は動揺を隠せずにいたが急いで家に入り客室のベッドに娘を寝かせた。

「薬が作れないとおっしゃってましたが、毒の種類は特定できているのですか?」

「この赤いひび割れが皮膚に走る毒はひとつ、『鬼蠍』の毒です!」

『鬼蠍』。以前見かけた刺されると激痛を伴い心臓に達すると死に至る毒をもつ蠍である。


「失礼します。」

断りを入れ娘の上着を破り皮膚の状態を確認する。

右腕から肩、首筋にかけて赤いひびが広がっているものの、幸いまだ心臓にはひび割れは至っていない。

叡智の書を見ると解毒ポーションの作り方は載っているが解毒ポーションなんて作ったことはない。


そんな時名案を思い付いた。

娘の時を戻して毒が入る前の状態にすれば助かるのではないか。


この3か月物作りに明け暮れていただけでなく空間魔法や時間魔法について勉強して練習をしていたのだ。

自分以外の瞬間移動や時を止めるだけなく進めたり戻したりすることもできるようになった。


娘の上に手をかざす。


瞬間、全身が動かなくなった、金縛りだ。

この感覚を俺は知っている。俺以外の誰かが時を止めたのだ。

あのドラゴンか?いやこの3か月間一度もそんなことはなかった、タイミングが良すぎる。

となれば思い当たる原因はひとつだった。



「その子を助けたいんだね」


頭の中にテポス様の声が響く。時を止めた主はやはりテポス様だった。


「君がその子を助けることは問題ないけど、その方法は許容できない。命というものは不可逆なものだ。薬や治癒魔法で治すことは問題ないけど、時間を操り命を戻すことは許されない。」


言い終わると同時に金縛りは解けた。

久々に聞いたテポス様の声を懐かしんでいる暇もなく事態は切迫したままだ。


「調剤道具を一式持ってきました!素材があれば作れるかと思い積んでおいてよかった!」

いつの間にか男が荷馬車から大きな木箱を持ってきていた。

どうやら薬を作るほかないようだ。

「私は薬を作ってきます。あなたはここで娘さんに声をかけ続けてください。」


木箱を受け取り作業室へ飛び込む。

毒が心臓まで至る正確な時間はわからないがひび割れが進むペースをみるに1時間もないだろう。

悠長に中身を確認して作業する時間なんてない、時を止める。


解毒ポーションに必要な材料を確認する。

魔力草にグレイウルフの角。材料は少ないがどうやら魔力草は新鮮で上質なものでないと効果が薄いらしい。

すぐに庭に生えている魔力草を摘み取り持て余していたグレイウルフの角を空間収納から取り出す。


テポス様からのストップはかからない。時を止めて薬を作るのは許される範囲なのだろう。


調剤セットから必要そうな道具を取り出す。

ビーカーに水を入れ水を沸かす。その間に魔力草を細かく刻んで沸騰したお湯に入れ混ぜる。

自分の魔力を込めて5分ほど混ぜる。透明だったお湯が魔力草が溶けだして深い青色に代わっていく。

グレイウルフの角をすり鉢で細かく砕く。

先ほどの溶液に砕いた粉を入れて透き通るくらい色が薄くなれば完成だが・・・。


一本丸まる砕いた粉を入れても色は変わらない。


何かを失敗している。

もう一度叡智の書で手順を確認する。

挿絵にのっている魔力草が溶けだした色は相違ない。

となると角の方だ。よく確認してみると挿絵の方がより細かい粉末になっている。

俺が砕いた角は砂利といった感じで粉末とは言えないくらいの粒が混じっている。

これだ。

すり鉢でより細かくすりつぶさなければ。力を込めて擦り始めるとすり鉢が割れてしまった。

角をより細かく砕こうと力を籠めるとすり鉢が先に壊れてしまう。


この角をより細かくするために頭をひねる。

自分の両手を見て物は試しに思いついたことを試してみる。

左手を器のようにすぼめて折った角を3つほど乗せる。

右手の親指の指先に魔力を込めて力強く押しつぶす。

角は簡単に崩れていき綺麗な粉末状に砕かれていった。


再度作った溶液に粉末を入れる。


息をのむ。これで失敗したらこれ以上どうすればいいかわからない。


拭いきれない不安を晴らすかのように溶液は透き通っていった。


「完成だ!」




時を再び動かして男のいる客室へ飛び込む。

「できました。これを飲ませてみましょう。」

解毒ポーションをいれた吸い飲みを娘の口にいれて流しこむ。


少しづつ飲ませていく。


一口飲ませるごとに娘の顔色はよくなりひび割れの進行は止まり徐々に薄らいでいく。


「あぁ!ソフィア・・・!良かった・・・!ありがとうございます。あなたは神の助けです!!」


涙を浮かべ歓喜の表情を浮かべながら男は知ってか知らずか、あながち間違いではない感謝の言葉を述べた。




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