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内装がないそうです

読んでいただきありがとうございます。

「知ってる天上だ。」


目が覚めると目の前には梁の通った木造の天井がそこにはあった。

自分で造った家なのだから知らないわけもなく、自分でも満足のいく仕上がりである。







外で焚火を焚いて空間収納からグレイウルフの肉を取り出して焼く。

家が建ったのになぜわざわざ外で焚火を焚いているかというと、シンプルにまだ家の中にコンロなどの調理器具がないからである。


ちなみにグレイウルフの肉だが、どうやら空間収納に入っている間は時が止まっているらしく鮮度もばっちりである。

これに入れておけば長期保存も何のその、冷蔵庫も必要なしだ。

いや、冷たい飲み物とか欲しいからやっぱり必要だな。氷を出せる魔法とかないかあとで調べてみよう。




「ログハウスといえばやっぱりあれだな、毛皮の絨毯だな。」

ハンティングライフルを持った大男が自分で仕留めたクマの皮を敷いているイメージが自分の中にあった。

ちゃちゃっと作った棚を設置して少し離れて部屋の全体を見つめながらそう思った。

まだイスにテーブル、棚しかない広いリビングである。

調理台はまだ作れていないがまだコンロができていないので一旦後回しだ。

そうすると自然と床に目が行って敷物が欲しくなった。

とりあえずグレイウルフの毛皮を敷いてみたがやや小さい。

毛皮単体でみれば俺より大きいくらいのサイズではあるが、広いリビングに敷物として使うには物足りないサイズである。


「・・・ドラゴンの皮とかどうだろう。」


ごつごつとしたドラゴンの鱗を思い出す。


「なしだな。」



同時刻洞窟内にて。

「!!!今何か命の危機を感じたような。」

知らぬうちに命の危機に瀕し、救われたドラゴンが洞窟にいた。



「狩りの時間だな。」


考えてみればドラゴンの洞窟に向かった時と伐採するくらいでしか森の中を歩けていなかった。

散策がてら大型の動物でもいないか探してみよう。

叡智の書を使えばこの森にどんな生き物がいてどこに生息しているかなんて家で茶を飲みながら把握できる。

しかし、そんなことをしてしまっては自ら楽しみを減らしてしまうというもの。

自分でこの森を開拓するという楽しみもあるのだ。


森を歩いていると異変に気付く。

何にも襲われないのだ。

整地作業をしていた時は飽きるほど襲われたものだが、今はまるで襲われない。

襲われないどころか、まるで生き物に避けられているようだ。

木の上を歩く小動物が猛スピードで巣穴に隠れるのを遠目から見つけてそんなことを思った。


野生動物は賢い生き物だ。自分より強い敵を襲うことは死を意味する。

相手が自分より強いかどうか見極めて日々狩りを行っているのだ。

弱い立場の生き物は捕食者に見つからないように敏感に気配を察知して逃げ、隠れ、擬態し、捕食者の目を逃れる。


俺にはその能力が欠如している。

客観的に見て俺はこの森では強いほうだろう。

必要なのは、己の気配を消す技術。そして、周りの気配を察知する技術だ。



立ち止まり心を落ち着ける。火をつけるときに感じた魔力の流れに集中する。

魔力の流れを絞ってみる。自分の気配が落ち着いていくのを感じる。

こんな感じでできているのか?不安だがひとまずこれでやってみよう。


そして周りの気配を察知する技術。

これは答えを知っている。叡智の書で魔法の勉強をしている時に便利な魔法があるものだと感心していた。

「魔力探知」

自らの魔力を薄く広げる。魔力を持つものにぶつかると反響し居場所がわかるというものだ。

蝙蝠の超音波ソナーのようだ。そんなことを思い出すと型にはまったかのように魔力探知に成功した。


「これ全部生き物か?めちゃくちゃいるじゃん。」


魔力探知にかかったものだけで大小含めてかなりの数がこの辺りに存在する。

しかもどいつもこいつも見事に俺から一定の距離を置いている。

大きい反応を示すものほどその反応は顕著である。


体に流れる魔力をできる限り抑え移動する。

引っかかった範囲で2番目に大きい反応を示すところに向かう。

一番大きな反応を示すものはどうせドラゴンだ。




この作戦は成功だ。

魔力を抑えて移動すると、動物に襲われる頻度が一気に上がった。

馬鹿みたいにでかい蛇にネズミ、ヤマアラシのように鋭利なとげを備えたウサギなんかにも襲われた。

こうして気配を抑えてから様々な動物に襲われると、気配を抑える前から襲ってきたグレイウルフがなかなか凶暴な生き物なのだと思った。あの狼がドラゴンより強いとは思えない。

そんな生き物がドラゴンより強い俺を襲うのだ。

命知らずにもほどがあるろ。よく生き残って来たな。



時たま小さい反応が近づいてくるのであたりを探してみると、蜘蛛や蠍といった昆虫を目にした。

嫌な予感がしてすぐに叡智の書で調べてみると、大当たりだ。

こいつらは毒をもつ生き物だ。

蜘蛛のほうはゆっくりと生命活動が弱っていき仮死状態に陥る。

そのまま糸にくるんで長期保存食材の出来上がりというわけである。

蠍のほうは逆にかなりの苦痛を伴うらしい。

刺された個所から激痛におそわれ血流にのって毒が運ばれ、流れとともに激痛も広がり、毒が心臓に達するとあまりの痛みにショック死するとのこと。この毒は薄めると拷問に使えるらしい。


大きいくて凶暴なやつよりこういう毒をもつやつのほうが怖い。

神様パワーによって造られたこの体に毒が効くかどうかまだわかっていないのだ。

それじゃあ試してみるかと思えるほど軽い毒でもないので小さい魔力反応には敏感にならなくては。

気付かぬうちに噛まれてゆっくりと食材になるのは御免である。



目標であった大きな反応に近づいてきた。

まだむこうはこちらに気づいている様子はない。

茂みに隠れ目視で確認できる距離まで近づくと大きな赤い虎がそこにはいた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ブラッドタイガー

単独で狩りを行う大型の肉食動物。

中型の動物が多く生息する森に好んで生息する。

生まれたてのブラッドタイガーは薄桃色だが狩った獲物の血を体にこすりつける習性があり、長生きしている個体ほど血によって毛皮が赤く染まっている。

外見に反して気配を消す能力にたけており発見することは困難である。

大きく赤色が濃い個体や生まれたての個体ほど希少価値が高い。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


なんだかやばい性癖を持った生き物にあたってしまった。

しかしあの赤色の毛皮は魅力的だ。体長も目算5mほどあるだろうか、ちょうどいいサイズだ。

リビングに敷いたところを是非見てみたい。

絶対に逃がせない。




と、意気込んでみたもの時間を止めれるので逃がすわけもなくなんなく仕留める。

珍しい生き物を捕まえたとウキウキで毛皮をはぐ。

血なまぐさい獣臭がしたので浄化魔法で綺麗にする。

浄化魔法をかけた瞬間血の色が落ちるんじゃないかと焦ったが、色素沈着がかなり進んでいたらしく色落ちもなく見事な毛皮が完成した。



「結構やらかくておいしいなこれ。」


狩ったばかりのブラッドタイガーの肉を一切れ焼いて口に運ぶ。

グレイウルフより肉に感動しながら残りの肉を空間収納にしまう。

ジャーキーとかにしたらおいしいかもなと思いつつ、残りの肉を食べきる。



収穫もあったのでほくほくとした笑顔を浮かべ帰路に就く。

道中襲われても面倒なので、気配を消さずにたまに魔力探知を行いながら歩く。

数回目の魔力探知で足元にかなり小さな反応を感じた。


汗が噴き出る。

気付かぬうちに毒虫に接近されたのだろうか。急いで足元を確認する。

焦りからバクバクと心臓の鼓動が強くなるのを感じるが足元にそれらしき生き物はいない。

ひとまず毒虫に襲われているわけではなさそうだったので鼓動を落ち着け冷静に足元を探す。

いったい何に反応したのだろうか。

足元には草が生えているだけだが・・・。

さてはこの草か?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

魔力草

回復ポーションや解毒ポーションの基本的な材料となる草。

全国各地に生えてあり、植物ながらに魔力を有している。

その土地の魔力を栄養に育つので魔力草の質によってその土地の魔力量が判断できる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「こいつ草なのに魔力を持ってるのか。どうりで今までで一番小さな反応だったんだな。」


しかしいいものを見つけた。こいつは解毒ポーションの材料になるらしい。

万が一のこともあるので採集しておこう。

このごくわずかな反応があるところに魔力草が生えていることが分かった。

ところどころに群生しているのがわかる。帰りながら道すがら生えているものを採集する。

採集すると言っても群生しているところの魔力草を全て採集するのはご法度である。

そんな採り方をしていたらこの森の魔力草を根絶させてしまう。

3割ほど残して採集するのがこの森の植物と共生する術だ。




「めっっっちゃいいなこの絨毯!」


家に着き早速ブラッドタイガーの毛皮でこしらえた絨毯をリビングに敷く。

浄化魔法のおかげで嫌な臭いもせず、一面木だったログハウスに鮮やかな色が加わり部屋全体の雰囲気がよくなった。



明日は台所周りに手を付けよう。

床に敷かれた真っ赤な絨毯を眺めながらそんなことを思った。

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