表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ってどーやるの?  作者: パンダンパ
5/8

安い罠 


その日は朝から、どんよりとしていた。

なかなか降り出さない雨のせいで、午前中からずっと頭が痛かったのだった。

お昼はいつものようにアイリーアと食事をしていた。


そうしたら、またも懲りずにカロナールが現れたのだった。

「はぁ〜・・・何かご用かしら?」

頭痛のせいでいつもよりイライラしていた。

「廊下にこのような物が落ちていたので、届けに参りましたの」

そう言って差し出されたのは手紙だった。

表には『リリカへ』と書かれてある。

裏返すとそこにはお兄様の名前があったのだった。


すぐに開けて中を確認する。

『話があるので昼休みに中庭の温室に来て欲しい』

と書かれてあった。


「お兄様から温室に呼び出されましたわ」

二人にそう報告し、手紙を元に戻すと、再びスプーンを取り食事を続ける。

「のんびり食事なさっていてもよろしいの?」

「だって、これ日付がないですもの。後でお兄様に確認してみますわ」

「つ、ついさっき拾ったのですわよ。勿論、今日なのではありませんか?」

カロナールはそこに行かせたいからか、必死のようだ。


リリカは面白くなってついついからかってやりたくなった。

「食事が済んで、時間があれば行くことにしますわ」

「そ、そ、そーいう態度は失礼なのではございませんこと。

お兄様とはいえ目上の方なのですから、すぐに行くべきではございませんか?」

「まあ、それもそうですわね」

確かに可能性が 1%でもあるのなら、お兄様をお待たせするわけにはいかない。

「そうです、そうです。さあ、お兄様が温室でお待ちですよ」

そう言って彼女は召使いのように椅子の背を引いたのだった。


立ち上がったリリカはアイリーアにヒソヒソと内緒話をした。

怪訝そうな顔でカロナールはその様子を見ていた。


「じゃあアイリーア、科学のアレロック先生に伝言をお願いします。カロナール様、お手紙をありがとう」

本当に私が温室へ向かうのか不安だったようで、ご丁寧にお見送りまでしてくれたのだった。


外はとうとう雨が降り出していた。

こんな雨の中を温室まで行くのは本当に面倒だが、あの目障りな女を懲らしめる為には相手の作戦に乗るしかない。

もしも、もしも、万が一にも、本当にお兄様からの呼び出しだったらどうしましょうと、リリカの足取りは心持ち軽くなるのだった。



初めて訪れた温室は全面ガラス張りの立派なものだ。

王立学院は国の研究機関も兼ねているので、植物学や薬学の先生方がここを使用されているのだ。

色んな樹木や草花も何かの目的のために植えられていて、生徒がここを訪れることはあまりない。

「お兄様がこのようなところに呼び出すわけないか・・・」

大体、筆跡が違ったんだから当たり前か。

リリカが温室の植物に興味を示している間に、どうやら外から鍵をかけられたようだ。


『閉じ込め作戦か。助けに来て恩を売るつもりなのかしら。それとも何か別の・・・』


考えていたところで、リリカの予期せぬことが起こったのだった。

ガチャンと音がして1つしかない出入り口の扉をみたら、そこには悪口男ことレミケード伯爵家のネスプがいたのだった。


「助けを呼ぶ声が聞こえたので来ました。大丈夫ですか?」

そんなことを言いながら入室してくるではないか。


リリカもこのような人気(ひとけ)のないところで、男(しかもめちゃ嫌い)と二人きりの状況に怯んでしまい、後ずさりをした。

運悪く、雨は本降りになってきていた。

これでは大声を出しても、そうそう助けは来てくれなさそうだ。

ここは何とか自力で乗り越えるしかない。

相手に動揺を悟られてはいけないと、手をギュッと握りこんだ。


「助けなんて呼んでいませんわ。私はここでお兄様と待ち合わせをしていますの。

どうぞお引き取りを!」

気丈に言ったが声の震えまでは隠せなかったようだ。


ネスプは自分に有利なこの状況を好機と思ったらしい。

「お兄様なんてここには来ませんよ! 俺にとーっても興味がおありだと伺ったんですよ。女性のあなたからは誘えないでしょうから、こちらからわざわざ機会を作って差し上げたんですよ」

「こ、このようなところにお兄様の名前を使って呼び出すなんて、非常識ですわ!」

「まあまあ、そんなに照れなくても良いでしょう。折角、二人きりになれたのですから、お話しでもして交流を深めようではありませんか!」


何こいつ、全然話が通じない。

嫌がっていることが、どうしてわからないのかしら!!


「お兄様がいらっしゃらないのでしたら、私帰りますわ!」

「どうぞ、どうぞ・・・但し、こちらに来ないと出られないぞ」

口では強気なことを言ったが足が竦んで動けない。

「この状況を誰かに見られて困るのはお前の方だぞ。公爵令嬢が温室で男と逢い引きしていたら、みんながこぞって噂するだろうな」

リリカが怯えている様子を楽しむように、ネスプは顔をテカらせニヤニヤしながらこちらに近づいて来る。

「ほらほら、どうした。扉は俺の後ろだぞ。後ずさりしていていたら、ここからは出られないぞー!」

どんどんと距離は詰まってくる。

「家柄は申し分ないし、何よりお前は美しいからな〜。俺の横を彩るにはもってこいだ!その気の強さは難点だが、俺の腕に抱かれたらもう離れたくなくなるだろうよ!」


リリカを見下したような言葉と、話の内容から身の危険を感じる。

このままだと何をされるかわかったもんじゃない。

じりじりと後退していたが、とうとう背中に壁のガラスが当たった。

もう逃げ場が無くなってしまったのだった!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ