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宮廷魔法使いリフィリーゼの大掃除〜馬車から捨てられた欠陥令嬢が、宮廷魔法使いの座についた理由。  作者: 碧井 汐桜香


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7.魔術具の改修⑤

「ん! おいひいでふ!」


「よかったわ」

「うちのビーフシチューは絶品だからな!」

「香りがいいでしょう? 代々継ぎ足しているのよ!」

「よかったです! リフィリーゼさんに気に入ってもらえて!」


 リフィリーゼがビーフシチューを口に運び、感嘆のセリフをこぼすと、エストランケ一家は嬉しそうに笑い合った。壁際に控えていた使用人たちもどこか誇らしげだ。

 家族も夕食に同席していいかとルミアに聞かれたリフィリーゼが了承したことで、リフィリーゼにとって生まれて初めての、家族での賑やかな食事となった。


「せっかくだからリフィリーゼさんに泊まっていただいたら?」


「いやいやそんな! 申し訳ないです!」


 世辞に疎いリフィリーゼだって知っている。突然泊まることは迷惑をかけることだと。なぜなら、ワイナーの友人たる魔女マチルダの家に突然泊まることになった時、ひどく叱られたからだ。マチルダはワイナーに代わって、いかに無作法なことかリフィリーゼにもわかるように懇々と説いてくれた。


「お母様! 元々、リフィリーゼさんに泊まってもらおうと、こっそり準備してあったのに」


 ぷぅっと口を膨らませるルミアの言葉に、リフィリーゼはふと考える。元々泊めるつもりだったのなら、泊まらない方が失礼では?


「では、お言葉に甘えて」


 エストランケ家には客人が泊まることが多いようで、リフィリーゼのそんな言葉は歓声と共に受け入れられた。いつの間にか準備されていた寝巻きに、ふかふかのタオルと客室のベッド。手触りのいいふわふわのベッドは、リフィリーゼにとって貴族時代を彷彿とさせる苦しいものだった。ベッドから布団を引き摺り落とし、カウチの上に枕と布団をセットする。ベッドよりも固いその寝心地に満足したリフィリーゼは、カウチで一人丸まって眠るのだった。









「おはようございます、リフィリーゼさん。朝食が……あれ?」


 翌朝、起きてこないリフィリーゼを迎えに、ルミアが客室を訪れた。ドアを何度かノックしても反応がなく、眠っているものと思ってドアを開けたところ、床に落とされた布団と何故かカウチにある枕。肝心のリフィリーゼの姿はなく、客室はもぬけの空だった。





「なぜ、弾かれたのだろう? 正しい手順だったはずなのに」


 リフィリーゼがぶつぶつと呟きながら、過去見の鏡に触れる。いつものように朝早くに目が覚めたリフィリーゼは、客室を抜け出し、過去見の鏡の置かれている部屋へと一人訪れていた。あちこち探してやっとリフィリーゼを見つけたルミアが、声をかけようとしたが、あまりにも集中していたので、ドアを閉め、使用人に片手で食べられるサンドウィッチを用意するように指示を出した。


「……魔力を流すと、なにかおかしい気がする」


 リフィリーゼが過去見の鏡に再度、魔力を流す。少しずつ魔力の質を意識しながら探っていくうちに、異質な魔力を感じた。まるでエストランケ家の者に許された者しか立ち入れないはずのこの場所に、何者かが侵入してもう害をしたような。そう、リフィリーゼがライマーの真実に近づくのを防ぐかのように。そのことに気がついたリフィリーゼは、過去見の鏡を早急に直さなければと決意を新たにした。そして、そのまま放置されていた治癒液を見る。それを探ると、異質な魔力は残っているように感じた。リフィリーゼは治癒液からその魔力を少しずつ取り除いた。慎重に。いつの間にか置かれたサンドウィッチを無意識に食べ、また昼食の時間に置かれていたサンドウィッチを食べ。時間が過ぎ、治癒液から異質な魔力を取り除いた結果、治癒液はジェル状になってしまった。


「なにこれ。ドロドロ……失敗か。頑張ったのに」


 力がに抜けたようにしゃがみ込んだリフィリーゼに、たまに様子を見守りにきていたルミアが現れた。ここで一からやり直すことになったら、もっと酷い妨害が入るかもしれない。リフィリーゼがライマーの過去を知るためには、今ここで鏡を直さないといけない。落ち込んだリフィリーゼを見て、ルミアが笑いに変えようと声をかける。


「まるでパックみたいですね」


「ぱっ……? それはなんですか?」


 聞いたことのない単語に首を傾げるリフィリーゼに、ルミアが驚いたようにリフィリーゼの頬を触る。


「こんなに綺麗なお肌なのに、リフィリーゼさんは美容に興味がないんですか? 最近、隣国から入ってきた最新の美容法で、こういうジェル状のものを肌に塗ると、肌が綺麗になるんですよ」


 ルミアの説明に、リフィリーゼは息を呑んだ。


「それ! それです!」


 リフィリーゼは慌てて立ち上がり、ジェルを割れた鏡の割れたところに塗りつけると、鍋をイメージして魔力で過去見の鏡を包み込んだ。


「うわぁ、すごい」


 ルミアの感嘆の声など聞こえないまま、リフィリーゼは魔力を送り続ける。異質な魔力を通さないように、守って包み込む。パックのようなイメージで。修理の鍋のようなイメージで。


 パァァァ、と過去見の鏡が淡く光った。魔術具の修理が成功した合図だ。



「な、直った」


 へたり込んだリフィリーゼの手を取り、ルミアがお礼を述べる。


「ありがとうございます! リフィリーゼさん! これでエストランケ家にまた栄光が戻ります!」


 寝巻きのままずっと作業していたリフィリーゼは、いつもの魔女服に着替えに戻らされ、ちょうどお茶の時間だからとお菓子を食べることとなった。






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