第一話「回想」
物心着いたときには、捨てられていて、私は姉と二人きりで生活していた。勿論まともな生活を出来る訳が無くて。いっぱい頑張ってどうにかしてた。
思い出したくなんてないから、これ以上は触れない。
「…だいじょうぶ!だいじょうぶだよ。」
「…大丈夫。大丈夫だよ。」
其れが姉の口癖、というものだったと思う。だいじょうぶなんて、無理して言ってくれてたけど、姉だって辛かった筈だった。
其れでも、姉は、姉として、私を元気づけてくれた。
あれ、思い出したら、死にたくなくなって来ちゃった。
何でだろ、
沈められて、溺れて死ぬ。
そんな、ちょっとだけ苦しいことが、嫌になってきた。
いつもよりマシだ。でも、いつもより、嫌だ。
頑張って藻掻いた。でも、駄目だ。
死にたくない、死にたくないよ。
柄に合わず、そう思った。
…もう駄目だ。
「あ!起きたね。」
目を覚ますと、少女が視界に飛び込んできた。真っ赤で綺麗な目が特徴的な少女だ。
あれ、そういえば、私、生きてる。海に沈められて死ぬ筈だったんだけど…
其のことについて、少女に尋ねてみよう。
そう思い、口を開いた。
「何で、私は此処に居るの。」
私が尋ねると、少女は話し出した。
「えっとねぇ、ちょ〜っと散歩してたら、海に沈められてる君を見つけたんだよね〜」
「其れで、拾ってきたってわけ!」
「?」
「あなたに利益なんてあった?」
「んー?何の話?」
「何故私を拾ったの。私を拾う理由は、あなたに何か利益があるから。
でも、其の"利益"が、分からない。」
きっと何かしらの利益がある筈だ。
少女が言ったのは、予想外なことだった。
「僕は、只、拾おっかなーと思ったから、拾っただけ。其れ以外の理由なんてない。利益は理由じゃないね!」
少女は、そう言った。
そういえば、そうだった。姉も、利益なんて無いのに、私を助けてくれていた。独りになってから、ずっと忘れていた。
優しさというものを。
少女の理由は優しさではないと思うけど、
「…」
「えっとね、君は今日から僕の組織で働くんだ。」
「…組織?」
私は聞き返した。
「そう!じゃあ、君は腐り人って知ってるかい?」
「…くさりびと?」
「名前だけ聞いたことはある。」
少女はニンマリ笑って、説明をし始めた。
「腐り人はね、人型の真っ黒ぉな生物でね、触れた人を腐らせることが出来るんだ!人間に害を与える、排除しなければならない存在なんだよ。」
背筋がゾクッと凍る。少女が恐ろしく感じた。
「そんな腐り人を討伐する組織が、ガーディアン。君が今日から所属する組織さ!」
少女はそう言った。
私は少し危険そうな組織で働くらしい。私はその組織でやっていけるのだろうか。
「さて、君の名前は?」
「紫芝澪。貴女は?」
「夕凪楓。宜しくね、澪ちゃん。」
「はい。夕凪さん。」