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ダンジョンは危険がいっぱいだけど、全部スルーしていきます  作者: 里和ささみ


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戸川祥子の日常(9)

誤字報告ありがとうございます。

いつもとても助かっております。

 第九階層にやって来た。明るくて天井が高い。大きな岩がそこかしこに転がっているがサバンナのような空間だ。アスプという翼竜の為の空間であると言える。V字型になって編隊飛行している。


「コイツらは一体だけ見たら中層階の上の方でもおかしくない。鳥の群れみたいに統制は取れてるし連携はしてるけど、いくつかの攻撃パターンによって動いてるから速さに慣れればどうってことない。クロの動体視力なら追える。問題はショウコだな。」


 わたしは非戦闘員。ドラゴンの動きなんてものは追えない。今だって、獲物を狩る鷹のようなスピードで飛行しているアスプを追うので手一杯だ。


「まあ、いい訓練だと思って。クロ、アスプと距離を詰めるなよ。かまいたちは飛び道具だ。爪で切り裂くことも出来るだろうが、アスプ相手だとそれはお互い様だからな。」


 わたしが怒られたことが効いたのか、クロは鼻をクイと上げて諾の意を示した。

 クロは近中距離アタッカー。近接戦闘特化スキルの自分とはいい組み合わせだとコートさんに言われた。クロが前衛で道と言うには広すぎる空間を進む。


「よし、来るぞ。」


 わたしはオールスルーコール済みなのであちらからはコートさんしか見えてない。鋭角に降下してくるアスプに向かい、クロはかまいたちを飛ばす為の予備動作に入る。


「〝キャンセル〟!〝オールスルー〟!」


 キャンセルの方がコールが早いので今日はオンオフのみに切り替える。立ち位置移動は事前に打ち合わせたので、一定パターンにならないように真っ直ぐ進むコートさんの周囲をウロウロ。

 コートさんはクロの取りこぼしたアスプを剣で薙ぎ払い、それすらも避けた個体は左手で頭を掴んで握り潰した。左手の動きが全く見えなかったのですが。


「円錐陣形で来るのは面倒だなぁ。取りこぼしが多い。クロ、次は二連発でかまいたち。少し距離があってもいいよ。」


 二つ目の群れに遭遇。層に厚みのある円錐陣形だ。V字型から開きを窄めるようにして勢いをつけて接近して来ている。クロは言われた通りにかまいたちを二連発出して、それでもやはり取りこぼした個体をコートさんが始末する。

 暫くそれを繰り返すと、より高い天井の空間があった。アスプを巨大化したような翼竜が飛んでいる。


「ワイバーンだ。第九階層にそんな報告なかったんだけどな。ダンジョンも進化してるってことか。」


 いらぬ進化だった。ワイバーンは高位モンスター。高位の中でも下の方だが我々には手に余る。群れというより番同士で動いているようだ。何組かの番で連携をしている。

 我々は岩陰に身を隠しつつ進む。スキルレベル9に切り替え済みであちらは気付いてないはずがないが、小物には興味がないといった風情で悠々と空を飛んでいる。アスプ程度なら空中でも落とせるが、ワイバーンとなるとまず翼を落とさねばならない。

 一度オールスルーをコールしてわたしとクロは居場所を変える。予備動作からクロが手を振りかぶった瞬間を狙ってキャンセルをコールする。無茶はするなと言われたが、クロは翼の付け根に狙いを定めてかまいたちを繰り出した。こちらからの奇襲なのでインパクト直前まで気付かなかった。わたしたちの気配が消えてもワイバーンはずっとコートさんの方を警戒していた。相手にもならないと思われているんだな、わたしとクロは。


 翼は千切れはしなかったが、膜には効いたようだ。一体がバランスを崩したところに再びかまいたち。クロのダッシュ移動後に攻撃なので、先程とは違う方角から来る攻撃に驚いている。

 コートさんは落下して来たワイバーンの首をボキリと大きな音を立てて折ってしまった。怪力は全身の強化だが剛腕は肩から先、腕のみの強化。昨日の跳躍はなんだったんだろう。

 怒った番がコートさん目掛けて急降下して来た。怒りに我を忘れたのか、真っ直ぐに降りてくる。そんなワイバーンに対して剣を振り下ろすと翼が付け根から外れて空に置き去りにされ、本体はバランスを崩して地に落ちた。またすかさずボキ。ドラゴン種もまた皮革製品として人気なので、いかに綺麗に大きく皮を残せるかが大事らしい。切り刻まれては意味がない。

 隙と見たのか他の番が同時にコートさんに向かって来た。わたしとクロは既にオールスルーの状態。気配も分からぬ敵より見える敵に行くのは仕方ない。

 そこにクロのかまいたちを真横から飛ばす。真横過ぎて余り効果が出なかった。


「はあッ!」


 口を開けて来たワイバーンに向かい剣を突き立て、口腔内から脳天を貫通。一馬身、一ワイバーン身か?後ろから時間差攻撃を仕掛けようとした番を串刺ししたワイバーンを投げ当てて、体勢を崩したところをすかさずボキ。錯乱状態になければワイバーンくらいのモンスターなら恐怖心もあるので、遠巻きに様子を伺っていたワイバーンはコートさんに手を出すのをやめたようだ。


「クロの威圧はアスプには効いたけどワイバーンには効かなかったね。クロ、ワイバーンからの威圧は怖くなかったかい?怖かったのならウンってして。」


 少し上体が傾いた。首を傾げてるみたいに見える。


「これは威圧に押し負けたな。だけど攻撃は正確だった。オールスルー状態なら威圧も効かないのか。ショウコはどう?ワイバーン、ずっと威圧出してたの気付いた?」


「よく分かりません。怖かったしハラハラはしてましたけど。」


「そうか。世界から認識されない、認識阻害も通用しないってことは威圧も通用しないっぽいね。足がすくんで動けないのが一番困るからいいことだよ。」


 それは良かった。確かにキャンセル中は委縮することもあるが声が出ないわけじゃない。ミスリルゴーレムの時のような失態は二度としたくない。


「飛び道具は射角が命だから、ショウコはもっとクロに指示を出せるようにならないとな。戦術は後日座学でやるとして、あとクロに必要なのはクリティカルのレベル上げかな。クロの鑑定が出来る人がコノにいればいいのにね。」


 バルトにも教わった方がいいな。クロのかまいたちはバルトの技だし。バルトの説明を地球理論に置き換えた解説を佐山くんにしてもらったけど、どういう理屈か分からなかった。頭がいい人うらやましいわ。

 まあ、わたしに必要なのはコートさんの言った通り戦術だから。その辺はいいや。


「ワイバーンの間引きはこれくらいでいいかな。目視出来る限りはそんなに数いないみたいだし。」


 回収したワイバーンは四体。アスプはもう数えてない。どちらも皮を剥がれて皮革製品に、翼の骨も何かしらの製品に、肉や内臓はダンジョンに還元される。

 ダンジョンの恵みに有難く合掌し、わたしたちは第十階層への道を進んだ。

●アスプ

カラスくらいの大きさ

群れにリーダーはいない

陣形の先頭は交代制の民主主義

財布などの小物類で人気


●ワイバーン

体長は7〜10m

二本足で体型は鳥に近い

コウモリのような翼の膜は耐水性もあり各方面に使用される

Bランクパーティにとってはいい収入源となるが、コートのように傷が殆どない状態で狩るのは難しい

採れる皮革は地球でいうトカゲ革に近い

染色が難しいので、色が綺麗な個体は冒険者にとっていい獲物

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