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ダンジョンは危険がいっぱいだけど、全部スルーしていきます  作者: 里和ささみ


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戸川祥子の日常(8)

「お。玉座の下に何かあるぞ?」


「というか、玉座自体お宝ですよね。黄金だし、宝石ついてますし。」


「そうだね。マジックバッグに入るかな?お、入った。」


 怒涛の戦闘を終え、当分モンスターは湧き出ないだろうとのことで、飛び地の裏ボス部屋を探索中。玉座をそのままマジックバッグに納めると階段があった。モンスターもトラップもなさそうということなので、下に降りると倉庫のような小部屋にお宝がパンパンに詰められていて床が見えない。適当に放り投げて入れてたら埋まったみたいになってる。


「おおー!思った通り!下にも金銀財宝ザックザク!ハイクラスダンジョンはやっぱり気前がいいな!」


 しかしハイクラスダンジョンになると支部の年間目標額が変わってしまう。とりあえずここで取れるだけ取っておこうという話になった。

 剥き出しの岩盤に、不自然に整えられた玉座。何でか真っ赤なカーテンまで吊るされている。玉座というより舞台だな。わたしが手にとって見ていたらコートさんが騒ぎ出した。


「こ、これは!オークの織物!」


 なんだそれ。わたし、トレジャーハンターやってる割にはまだ頭にアイテムリスト入り切ってないんだよな。トレジャーハンターの連携免除もそうだけど、もう一度教本読み直した方がいいな。


「オーク()とも言われるヤツだよ。これはレア!すごいレア!しかもこんなにたっぷりと!うわぁ、これでキィにドレスを仕立ててあげたいなぁ!」


「そんなドレス向きの高級品なんですか?」


「光沢が違うでしょ?最高級品のシルクタフタ並みで張りもあるし、それなのにシワになりにくくて柔らかい!ドレスにしたときのドレープの美しさで言ったらオークの織物を超えるものはないよ!」


 問題はオークが織った織物なのか、オークを織った織物なのかなのだが、今のコートさんに聞くとガッカリ返答が来そうだからやめておこう。


 というわけで、カーテンも回収。キィさん、喜ぶだろうか。微妙な顔しそう。


 オーク皮革は一般にも使われているのでオークも回収済み。オークエンペラーの革製品なんて超高級品だよ!とコートさんはホクホク顔。正規職員でもダンジョンの戦利品に対して報酬が出るので、今回は現物支給にしてもらうと張り切っている。オークエンペラーの革で靴を作るって。納税の時にヒイヒイ言わない?大丈夫か?

 わたしも新しいダンジョン用ブーツとバルトの靴仕立てようかな。結局遅い誕生日プレゼントの話は曖昧になったし。あとはクロの首輪新調してもいい。オーク皮革は染色もしやすく、今回のオークエンペラーは灰白(かいはく)色なので発色もいいだろうとのこと。


「五月の夜会は間に合わないから、新年の夜会用にお揃いで仕立てようよ!」


「え、わたしとキィさんがお揃いのドレスを着るってことですか?」


「そうそう!最近、仲良しアピールのための双子コーデとかいうのが流行り始めてるんだってさ。多分エンペラーの腰布も高級オーク布だろうからなぁ。色的にはそっちもいいなぁ。色違いで同じデザインもアリかなぁ。」


 え、やだよ。オークの腰布なんて。生理的にイヤ。下着代わりに鎧の下に着込んでチラ見せしてた紫のアレのことでしょ?アレ、オークのオシャレなのかな。見せパン的なものなのか、レイヤードなのか分かんないけど。絶対イヤ。新年の夜会の前に流行が終わることを祈ろ。

 この世界の人、モンスターの何かであってもそういうの気にしないよな。ダンジョンが当たり前で、ダンジョン素材が日常に入り込んでるから何とも思わないんだろう。わたしはまだ慣れない。


 めぼしいものから一応取っとくかくらいのものまでマジックバッグに仕舞い込み、本日はここでキャンプだ。不寝番はお互いにナシ。コートさんが言うにはこの部屋は当分安全らしい。わたしはクロを寝袋に呼んで早めに就寝した。


 朝日の昇らぬ翌朝。地下にいると体内時計狂いそうだな。みんなどうしてんだろ。若者は帰って来たら爆睡してケロリとしてるけど。


「では、本日は低層階まで行ってみよう!クロは昨日のことをよく反省してね?」


「うみゃ。」


「反省の色がない!」


 反抗期なのか?コートさんのお説教なんてどこ吹く風で後ろ足で耳裏を掻いている。


「それでね、ドラゴンはね〜。」


 ダンジョン産ドラゴンはとにかく硬い。硬い硬い硬い。簡潔な説明である。弱点は生き物にありがちな目。腹側の鱗の色が薄いからといって柔らかいわけでもない。一番に狙うべきは目。しっぽを切ると暫くバランスが取れなくなるので、大きく撹乱してやるとずっこけるらしい。

 翼竜はまず地上に引き摺り下ろすことから始める。コウモリのような翼の膜は素材になるので根元から切り落としたいところだが、戦闘若葉マークなクロと戦闘無免許なわたしでは難しいので膜を裂いていいとのことだった。あとは翼のないドラゴンと同じ。


「とりあえずあんまり強いヤツとは戦わないつもりだから。第九階層がアスプっていうちっちゃくて群れてるヤツの生息地になってて、そこで訓練かな。一体一体ならクロでも余裕だけど、あっちは群れで連携攻撃してくるし、飛んでるからね。動きのパターンをよく読んで。ショウコはスキルレベルのスイッチングを間違えないように。」


 わたしとクロが諾とすると、その後の予定の再確認。


「第九階層が終わったら第十階層。ここではリンダヴルムが目撃多数。コイツは飛ばないドラゴン。火を吐くから気をつけて。ドラゴンはとにかく視野が広い。さっきも言ったけど、スキルのスイッチングが重要になる。ある程度狩って数を減らすのが目的だけど、その辺は私に任せて一体ずつ対処していくように。ショウコ。下層階に入ってクロは昨日以上の興奮状態になるかもしれない。君がクロの手綱をしっかり握らないと、大切なクロが傷付いてしまうかもしれないよ。ショウコはテイマーじゃない。なのにモンスターを従えてる。若者は羨むかもしれないが、決してそれはメリットじゃない。信頼関係と主従関係を自分で築かなきゃならないってことだ。それが出来ないのなら、クロはただの愛玩動物(ペット)にした方がいい。テイムドモンスターなら否応なく飼い主(マスター)の命令に従うけど、クロは家族だろう?それにまだ子ども。昨日みたいに調子に乗ってやりすぎることもあるし、反抗することだってある。何かあってもその責任は全てショウコのもの。覚悟がないなら、クロを冒険者のパートナーにするのはあきらめろ。」


 ウチの子可愛い、ウチの子スゴイと褒めるだけじゃダメなんだ。褒めるところは褒めるとしても、締めるところは締めないと、結局痛い思いをするのはクロ。

 昨日だって、クロがオークジェネラルに向かった時点でわたしが諌めるべきだった。終わった後も怒るべきだった。コートさんだから何とかなっただけで、他の冒険者だったらもしかすればわたしたち以外全滅してたかもしれない。わたしのスキルはクロ以外に付与出来ない。そういうスキルなのだから。


 わたし、甘かったな。

●オークの織物

またはオーク布。動物性蛋白質の繊維で織られている。

材質は不明。体毛を織ったもの、ダンジョンによるアイテムなど諸説あり。

防御力が高いがレアなので一般冒険者には手が出ない。

かつては王族のマントがこれで作られていた。

各国の王は競って長いマントをつけていた模様。

以前はオーク布マントの長さが国力の象徴でもあった。


●オーク軍

規模は様々だがダンジョン内で発生するので何万の軍隊とかではない。

五〜二十の兵士を抱える部隊と、連隊、師団に分かれるが規模によっては連隊がない場合がある。

群れは大体百〜二百の間に収まるので今回は極小規模な軍隊だった。

オーク軍の存在はスタンピードの原因の一つとして知られる。

オークキング及びオークエンペラーは基本的に戦闘に参加しない。一番強いのに。

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