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ダンジョンは危険がいっぱいだけど、全部スルーしていきます  作者: 里和ささみ


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コソアード国完全制覇の旅(15)

 そのあと佐山くんは、ハーレム美女、あ、美少女だった、美少女の子どもたちのことを聞いた。


「ええ、二十数名の子がいたということになってますが……。」


「そんな多くないです。おかしいです。俺んとこ集まってたの、せいぜい十人ちょっとだったんで。」


「その内、黒髪の子が二人。こちらは確実かと思われます。他の者は、皇室解体時の賠償金目当ての虚偽申告だったのではないかと言われております。婚姻関係ではございませんでしたが、サヤマ殿の宮にいた女性でしたから、お手つきになったのだと考えられておりました。サヤマ殿が還られたことによって、グレップ皇帝によるサヤマ殿への虐待、搾取に対する賠償金は()()に支払われることになりましたから。正式なご家族であるガーラ将軍と御子息は行方知れずの上、皇帝派。その婚姻も皇帝からの命令であったので、何と言いますか、その……」


「新しい政権には関係ないってことにしたかったんすね。俺がやったことは、皇帝の責任だってことにしたかった。だから誰も二人を本気で探そうとしなかったし、彼女たちを悲劇のヒロインに仕立て上げて美談にして、きちんと面倒を見てるぞってことにして、新政権のイメージアップを図ろうとした。」


「左様でございます。」


「グレップは反戦派の筆頭だったカーベ・ルネーを頭にして新しく国を建てた。だけどすぐに内ゲバが起きた。シャル・ドーネ、マス・カットー、リー・スリング……他のヤツらも、みんな反戦派だ。反戦派同士でまた争った。そして国が分裂した。」


「ええ。愚かなことでございます。」


「嫁の妹のナイーア・ガーラはどうしました?皇帝の後宮に入ってたけど。」


「後宮にいた者は皇帝派から差し出された妃に関しては生涯幽閉となりましたが、ナイーア妃は最期まで抵抗し、結局は……」


「処刑、ですか?いい見せしめでしたよね。ガーラ家は皇帝派筆頭だ。」


「はい。」


 戦争を繰り返す皇帝を廃した仲間同士でまた君主の座を巡って争ったのか。地球の歴史でもよくあることだよな、革命の後の混乱って。


「正直なところを申し上げますとサヤマ殿は皇帝派のことも憎んでおられると思っておりました。」


「憎んでますよ?嫌いです。あんなヤツら。侵略して奪うことしかしないヤツらです。大嫌いに決まってます。」


「ですが、とても、お辛そうです。申し訳ございません。興味本位でお伺いしていい話ではありませんでしたね。謹んで、謝罪申し上げます。」


「いいです。もう。貴方たちには関係のない話です。今の国民を、平和を、大事にしてください。俺の希望は、それだけです。」


「ええ、必ずや。」


「お約束致します。」


 使者が帰っても相変わらずぼんやりとしている佐山くんの腕を引っ張って立ち上がらせる。彼らにとっては遥かな歴史、佐山くんにとっては地続きの過去。その温度差が痛い。


「帰ろっか。コノに。」


「はい。」


 バルトと飛んだ道を地上から車で進む。山が多い上にトンネルというものがないので、空よりもずっと時間がかかりそうだ。それでも車だからそこまでかからないけど。明日の夜には到着するだろう。


「結局、一か月くらいで終わりましたね。」


「手当てって満額もらえそうですか?」


「はは!トガワさんが気にされることではありませんよ。」


「良かったら、お付き合いしてくださったお礼にポーション、お分けしましょうか?」


 もちろん冒険者ギルド本部には寄った。寄りたくないけど寄ってきた。

 今回の旅はお役人であるデンキー氏と兵士二人はともかく、わたしに関しては冒険者ギルド本部からの依頼である。旅程が予定の半分どころか六分の一でシディーゴ入りしてしまったので「まだ依頼期間中だよね?早く終わったなら他の仕事、頼んでもいいよね?」という無言の圧力に負けてアレコレ引き受けてたら半月経っていた。

 その間、佐山くんは今回の旅から割り出した正確な都市間の距離を割り出して地図を作ったり研究者と一緒にダンジョン取説の解明をしたり他にもなにかと忙しくしていた。デンキー氏、すまぬ。彼はひたすら佐山くんの付き添いだった。兵士二人は護衛という立派な任務であるが、つ付き添うだけでとても暇そうで申し訳なかった。


 その間にも二回ほど総統夫妻と会って食事。ユキヒト・サヤマと総統閣下の関係は良好と市民の皆さまにも思われたようだ。一度は佐山くんだけでお宅にお呼ばれしていた。いや、デンキー氏も兵士二人も一緒だけど。わたしとクロがダンジョンに潜ってたからだけど。

 ついでなので泊りがけでオールスルーを試してみた。またシディーゴ第一の下層階に潜った。寝てる間もスキル効果はばっちり。モンスターの気配がするとクロが反応して起きるのも分かった。ちゃんと寝れてる?歩いてる途中で突然寝ちゃって服の中に入れて移動とかもしてたけど。大きくなったら出来ないよ?

 あそこは相変わらずポーションの宝庫で、再び大量に採取して持って帰ったら「は、はは……」と本部職員の乾いた笑いで対応された。ついでにクロが倒したモンスターの素材も山盛りである。マンドレークは魔王様がどうやって引っこ抜いたのか分からないのでスルーした。断末魔は聞きたくないが、あの「ヒィ……」という呻き声も聞きたくない。


 そしてわたしはめでたくAランクに昇進した。やべ、やりすぎたな。


「ノブドの使者から何もらってたの?」


「あー、俺の部屋にが残ってた私物ですね。別にいらなかったのに。」


「何があったの?」


「あー、スキルで出した日本の物とかです。いらなかったのにな。」


「断れば良かったのに。」


「いや、使い方説明して持って帰ってもらいました。なんか博物館建てるとか言ってましたよ。俺の。」


「あはは!すご!」


 佐山くんの荷物に、大きな額縁が増えたことを知っている。唯一残された、ユキヒト・サヤマの肖像画。親子三人で描かれた、古い絵だ。虎白宇くん、まだ幼体だったな。可愛さに絆されるのも分かる。ていうか、奥さん美人じゃん。何が不満だったのさ。服脱いだらアマゾネスですよとか言ってたけど。まあ、美女より美少女とか言ってたからな。贅沢だよ。


「み!」


「うん、あれがコノだよ。クロのお家があるところ。」


「クロ〜!ようやくパパに会えるな!」


「おい、佐山。黙れ。」


「こわぁ!クロの教育に悪いですよ!?」


 そうだった。気をつけないと。


 クロを抱き上げて、フロントガラス越しに見えるコノを見せる。


 もうすぐわたしがこの世界に来て一年になる。


 その日は、特別な一日にしたい。


 そう思ってる。

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