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ダンジョンは危険がいっぱいだけど、全部スルーしていきます  作者: 里和ささみ


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コソアード国完全制覇の旅(12)

ほぼ会話。短めです。

「もしもし。」


『ショウコ?』


「うん。」


『どうした?』


「うん……。」


『何かあったのか?』


「あったと言えばあったような、なかったと言えばなかったような。」


『本当にどうした?なんというか……いつもと違う。』


 声が聞きたかっただけ。その一言が言えないわたしはキョウちゃんの言う通り素直じゃないんだろう。マッタさんにも頑固って言われたな。


「ん。ごめん、なんでもない。遅くにかけてごめん。おやすみ。」


『待て。』


「ホント、なんにもないの。ごめんね。」


『謝らなくていい。私に遠慮しなくていい。どうした?ああ、いや、話したくないなら話さなくていいが……はぁ……。』


 バルトの嘆息で息が詰まる。拒絶されたような気分になった。


『電話というのは便利だとも思ったが、直接顔を見られないのは様子が伺えなくて困るな。テレビ電話とやらにするか?』


「あ、ううん。このままがいいな。化粧落としちゃったし。」


『ショウコは素顔でも余り変わらないじゃないか。』


 まあ、あんまり凝った化粧はしないけど。ナチュラルメイクではなく手抜きだ。ダンジョンに潜るようになって、化粧が簡単になった。日本にいた頃は、それなりにちゃんとしてたんだけどな。


「それ、女にとってはあんまり褒め言葉にならないから言わない方がいいよ。」


『そうなのか?すまん。』


「ううん。いい。大丈夫。」


 バルトの声は心地いい。どうしてだろう。安心する。第三ダンジョンのあのとき。どうしてこの人の声で、背中で、安堵したのだろう。そんなの、分かってる。まだ、名前を付けてないだけ。


『クロは?』


「寝てる。今日は佐山くんに取られちゃった。」


『皆に可愛がられているようだな。ブラーイン殿からも連絡が来た。首都に来た際はクロと遊びに来いと。』


「わたしも言われたよ。バルトと一緒にって、二度も念押しされちゃった。」


『あの方は……。気にしなくていいぞ。鑑定は一流だからクロを見てもらうのにはいいと思うが、無理に首都に行かなくていい。』


 わたしが首都に行きたくないと思ってるのか。確かに行きたくはない。でも、それは仕事としてだ。移住は勘弁だけど、遊びに行くのは構わない。


「ううん。オーショックくんたちにも会いたいし、また遊びに行きたい。フーセくんなんて、クロ見たら喜ぶんじゃない?ワイーロくんも、いい遊び相手になりそう。マイーナちゃんは、まだ無理だろうけど。」


『ショウコは、オーショがお気に入りだな。』


「理想的な子だからかな?」


『……ああいう男が好きなのか?確かに面倒見が良くて人当たりのいい優しい子だが。』


「あは。違うって。理想の息子?」


『なるほど。私にとっては自慢の甥だ。』


「そうそう、そういう感じ。」


『安心した。オーショが恋敵になると思ったよ。』


「なんないよ、まだ子どもじゃん。」


『もう成人だぞ?来月には働き始める。』


「そうだけど、歳が離れ過ぎてるよ。年下過ぎ。」


『私も年下だが。』


 バルトもカールほどじゃないけどフケ顔だからなぁ。というか、落ち着いてる?わたしといるとそんなことないけど、仕事のときとか、初対面の印象は冷静沈着とかそういう感じだった。


「バルトに対して年下とかそういうこと、考えたことないよ。」


『喜んでいいのか分からないな。』


「対等ってことだよ。」


『そうか。ならいい。』


 聞くなら今だ。でも、会って聞きたい。葛藤している。


『どうした?』


「バルト。」


『なんだ?』


「佐山くんにスキル使ってもらったって、本当?」


 少しの沈黙の後、バルトは「本当だ」とつぶやいた。


「体に異常はない?竜化は出来るんだよね?」


『ああ。その場で確認した。問題ない。』


「良かった。」


『それだけか?』


 また言葉が出ない。


『聞きたいことは、それだけか?』


 たくさんあるよ。聞きたいことも、言いたいことも。だけど、まだ、今は。帰ったら、絶対話すから。


 ……コレ、フラグになんないよね?


「帰ったら飲も。二人で。そのとき話したい。」


『久しぶりにキントーの酒場に行くか?』


「ううん。出来れば、領司館で。ゆっくり話したいから。」


『……そうか。分かった。』


「クロも預けなきゃなんないしね。」


『幼体の間は寮に置いても構わないぞ?』


「会いたくないの?パパなんでしょ?」


『ショウコが、そう、言ったんだろう……。』


「うん……。」


『私で、いいのか?』


 バルトの声が微かに震えているような気がした。


「帰ったら、話すから。」


 バルトが深呼吸した。緊張しているのかもしれない。わたしも、スマホを持つ手が震えている。


『分かった。無事に帰っておいで。』


「うん。もう寝るね。」


『ああ。おやすみ。』


「おやすみなさい。」


 本当は、このまま電話を切らずに朝までいたかった。


 この我儘は、次に会うときまで、取っておこうと思った。

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