コソアード国完全制覇の旅(9)
サブタイいじりました。
コソアード国一周の旅→コソアード国完全制覇の旅
祥子さんの元カレの好きな番組から折角なので引用
私も好きです
翌日の十一時頃にギルドの派出所から呼び出された。
「保全局から許可が下りました。特例として正式にモンスター登録して頂きます。こちらにご記入お願いします。」
「ありがとうございます!」
「いえ、本部からの指示ですから。ドラゴンをマ総統がペットになさったのが大きかったみたいですね。アレが前例と見做されたようです。しかもあちらはボスクラスですし。シャパリュならBランカーの攻撃手が二人いればなんとかなりますから。」
なんとかされるような事態にはならないっての。そしてドラゴンさんはモンスターじゃなくて来訪者なのにモンスター登録をされたのか?
仕方ない。書類を書かねば何も始まらない。書くか。
登録者の氏名、モンスターの名前、種別、特徴?記入例記入例。色とか体長か。体毛黒、体長は……分からん。あとで測ってもらおう。鍵しっぽ、可愛い。目はまだキトンブルー、成長して変わる可能性アリ。
ん?適正な飼育環境?
「あ、そちらはコノ領司館とお書き頂くよう指示を受けておりますので。」
「わたし、寮に住んでいるのですが……。」
「テイマーであってもモンスターの飼育環境は整えて頂かねばなりません。今はまだ幼体ですが、今後成体になった時のことを考えると寮住まいでは飼育資格剥奪になります。」
「え!?」
「専用の獣舎を建設するか、相応のご自宅を構えるかになりますね。なので、今は依頼中として同行を認められますが、コノに戻られた際には領司館へお預け下さいますように。」
「ええ!?」
「今回の申請が通ったのは、偏にバルト・ゼーキン領司が〝領司館で保護し、一切の責任を持つ〟と仰ったからです。その意味をよくお考えくださいね。」
何故だ!?飼い主はわたしだ!わたしが安易にパパと言ったからか?そうなのか!?
「ちなみに多分ですけど国家治安保全局、バルトさんの、っていうかヨックバール総統の足引っ張りたいから許可したんすよ。あ、多分ですよ?クロがやらかす前提ってことです。だから、それが一番安全なんですよ。なんだったら俺が作業場で見てもいいし。なー、クロ?」
「み?」
佐山くんが首を傾げると同じように首を傾げた。賢い。可愛い。賢可愛い。
「躾だけはしっかりとお願いしますよ。」
「はい。」
ったりめーだ。バッチリ躾したるわい。必要ないくらいもう賢いじゃないか。可愛いだろ?ソッティラーノのギルド職員はなんというか態度が悪い。険のある言い方。余り好ましくない。
だがしかし、一緒に住めないのは困る。どうしたらいいんだ。手元で育てたいなら、獣舎、もしくは屋敷レベルの建物を建てなきゃいけない。なんでマジックバッグなんて買ったんだろ。奮発しすぎた。獣舎は嫌だ。一緒に寝れない。コノの外れに家を建てるとして、いくらかかるんだろ?一等地である必要はない。なるべく寮に近いところがいいな。寮から出ずに済んだのに、また寮を出る出ない問題にぶち当たるなんて。
だが、シャパリュの成体サイズになったら確かに寮の部屋では狭い。床が五畳くらいしかない。クロもつまらないだろう。どうしよう。悩む。
今回周る首都で例の原液を支給してもらうことになっているが、今からでも現金に変えてもらうべき?どうしようったらどうしよう。
「なんか明後日の方向で悩んだりしてません?」
「家を建てる資金をどう調達するかで悩んでる。小さい家か土地だけならドッティラーノでの報酬で何とかなると思うけど、どっちもってなるとぶっちゃけキツい。」
「いやだからなんでそーなるんです。信じらんね。」
うるさいな。まだおひとりさまでいたいんだよ。
まだ?いやいや、いーや。やめとこ。
フラットにした座席を元に戻し、いざゆかん、新たなダンジョンへ。念願のペットをゲットしたのでとてもテンションが高い。わたしにしてはだが。
昼休みを狙ってバルトにお礼の電話をすると「父親ならば当然のことをしたまでだ」と言われた。やはりパパと言ったのが効いたのか。竜人や魔族のような強い種族は動物に嫌われるらしく、小動物を撫でたことがないと言った。彼の愛馬は子馬の頃から育てて慣れさせた子だそうだ。なるほど。可愛がってるもんな。
「クロちゃん、ホラ、お外だよ〜?ビュンビュン速いねえ?」
何でだろう。同行者の皆に即懐いて、今はデンキー氏の膝の上で立って窓から外を見ている。デンキー氏、何故猫撫で声なのだ。わたしが運転してるから遊んでくれてるだけだけど。
「クロ、人懐こいなぁ。」
「そうですね。モンスターとは思えません。」
「顔もかわいいですしね。」
「さすがウチの子。」
「戸川さん、そればっかりだな。」
あはは!と笑うがこっちは本気だ。ウチの子が世界一だろ?
午後から第六、第三と周って次の日に第二へ移動。昼過ぎには領都ソノへ到着。クロのことで一度面会をと言われたのでギルド支部へ行く前に領館を尋ねる。建物は統一されているらしい。コノと全く同じだった。
「はじめまして、ソッティラーノ領司を拝命しておりますブラーイン・ド・カーテンです。」
「冒険者ギルドコッティラーノ支部所属、戸川祥子です。この度はご迷惑をおかけいたしました。」
そんなこと思ってもないくせに、という佐川くんの独り言は無視。
ブラーイン・ド・カーテン氏。元貴族の家系の方か。スリーピースをかっちりと着込んだ頭髪がブラインドのようになっている小太りの五十代くらいの男性。領司は政治家ではなく役人なのだが、党内の派閥の影響を受けている。この方はヨックバール総統閣下の派閥らしい。すなわち味方だ。
ちなみにギルドマスターになると政治家からそういう粉かけをされる。マッタさんは特に支持派閥がないようだが、バルトが領司なのでヨックバール派と思われている。ソッティラーノ支部のギルマスはヨックバール派と対立している派閥と縁が深い。「政治のねじれってヤツですよ」と佐山くんは教えてくれた。ねえ、なんでそんなに詳しいの?
「この子がシャパリュですか。」
「クロといいます。クロ、こんにちはして。」
「みゃ。」
わたしに抱かえられながら頭をペコリと下げる。下半身が連動するのはご愛嬌だ。可愛すぎる。殺す気か。
ちなみにわたしが運転中、みんなが面白がってクロに芸を仕込んでいた。こんにちはからのペコリ、お手、おかわり、立っち、ハイタッチ、くるーり。よく分からないが頭がいいことは確かだ。
「もうコマンド訓練なさったのですか?」
「ええ、まあ。」
「ふむ。」
スチャ、と後ろ手から取り出したのは長い羽根だった。何処に隠してたんだ。
「クロちゃん、ほーれほーれ!」
「みゃ!」
あっという間に懐柔された。警戒心なさすぎて誘拐されないか不安になる。
「ふん。猫ですな。」
「猫なんです。」
たくさん運動して水を飲んだ後はカーテン氏の膝に座ってゴロゴロと喉を鳴らしている。佐山くん曰く「じゃらし捌きがプロ」らしい。前回ならばこんな人を乳母に雇いたかったと言った。おじさんだけど。
「子猫と遊ぶのは久々だったのでなかなかいい運動になりました。」
「遊んでくださってありがとうございます。クロもとてもうれしそうで。」
「いえいえ、なんの。どれ。オスですな。」
「まだ分からないと聞いたのですが。」
佐山くんに。素人目には分からない、ということなのだが、この方は猫の玄人なのかもしれない。きっとそうだ。
「何、スキルの鑑定で一発です。種別はシャパリュで間違いありません。メモメモ……、おお、ごめんよクロちゃん。お母さんのお膝にお戻り。」
違った。猫のプロじゃなかった。
カーテン氏がそう言うと、クロは膝頭にスリと頭を一度擦り付けてわたしの膝に戻って来た。
「えー、名前クロ、種別シャパリュ、年齢生後三日目……生まれた日は0日で数えるんでなかったか?まあ、いいか。性別オス、えーと、スキルスキル……」
知らん情報も入ったがクロにスキルとは。
「モンスターもスキルがあるんですか?」
「ありますよ。メーガーさんに習いませんでした?認識阻害だってそうですよ?」
「メーガーさんの授業、ほとんど自分のスキルの解明だったから……覚えてないだけかも。」
「威圧とクリティカルの二個持ちかぁ、クロちゃんは優秀なハンターだなぁ。クリティカルは今遊んだせいなのかな?レベルが3。威圧は一切使ってないねえ。レベルは1のままだ。」
わたしが言うのもなんだが、クロは番犬ならぬ番猫には不向き過ぎる。人懐こい。
「知能は人間の二歳児相当。賢いねえ。クリティカルはレベルを上げていけば一撃必殺になりますからね。生まれ持っての一撃必殺スキルよりは確率が劣りますが、どちらも出るという特性は案外侮れません。スキルの変質は変わる前の効果を維持したままですから、実際は二個持ちと変わりませんよ。てことはクロちゃんは三個持ちになれる可能性がある。うーん、敵に回せば恐ろしいが、いやはや、味方になれば心強い。それにこんなに可愛い子ですからね。その可愛さだけで充分価値があります。」
この方はなんて素晴らしいことをおっしゃってくださるのだろう。一生ついて行きたい領司NO.1だ。
ゴズさんやトーイ隊のマッチくんは生まれながらの一撃必殺だと言っていた。佐山くん解説によると、クリティカルはレベル50になると一撃必殺になるそうだ。レベル50以上はレベルアップすると一撃必殺、つまり必ずトドメを刺せる確率が上がる。だけどレベル49のクリティカルの確率も保持したままで、それはそれぞれの確率である為、クリティカルの確率はそれ以上上がらないが、後天的に一撃必殺のスキルを手に入れるようなものであるとのこと。さすがウチの子。ハイスペックである。
「高度鑑定スキルの職員が今のコッティラーノにはおらんはずです。鑑定はなかなかレベルが上がりませんからね。クロちゃんの鑑定がしたければ、たまに首都に訪ねていらっしゃい。」
「首都、ですか?」
やってくれるのは有難いが、何故首都なのだろう。
「この春で任期満了と共に退職して首都に戻りますから。クロちゃんとバルトくんと一緒に是非遊びに来てください。もうこの歳なので、新しく猫を飼う気にはなれませんが、こうしてたまには遊びたいですからね。」
そうか。こちらの世界は平均寿命が六十歳なんだった。この方ももう老後の生活に入るんだな。ペットを新しく迎えるのも気が引けるのかもしれない。
「ありがとうございます。必ず伺います。」
「ええ、ええ。バルトくんと一緒にね。お二人が首都に来れば総統ご夫妻もお喜びになるでしょう。」
あれ?なんか、言質取られた感じか?
この人の裏には総統閣下がいたんだった。忘れてた。
ブラーイン・ド・カーテン(52)
少し退職を伸ばして任期満了までソッティラーノ領司を務めた
単身赴任 猫好き中の猫好き
孫の嫁か婿に猫科獣人来ないかなぁと思っている
ヨックバール総統の支持者で有名
その実は単なる幼馴染
ヨックバール総統の方が年上
●政治家や上級役人は役職付きだと定年が任期満了までとなる




