死神の降臨または佐山由紀人の再訪(3)
「え。佐山くんの付き人?」
「そう。ウチでもあんな感じだったし、ドッティラーノに行くついでにそのまま国を周って彼のお守りしてくれない?」
彼は日本に帰ることが前提なので、わたしのように国に所属していることにはなっていないらしい。無意味だって。他にもバルトと相談して国との契約を結んでいる。抜け目ない。
彼への依頼は全て保護責任者であるバルトを経由することになった。佐山くんはバルトのことは信用してるけど国は直接自分と関わってはならないと要求。レベル4の時点で国どころか世界の無機物を一瞬で破壊出来るんだから規格外としか言いようがない。脅迫ではあるが、条件さえ守れば協力するという姿勢を貫き、何とかうるさい議員を黙らせた模様。
今回の行程で首都にも訪れることになっているので、総統夫妻と食事することになっている。自分の友人であるバルトの両親として会うから例外だと言っていた。どうせまた悪企みするんだろうな。
「結構かかりますよね?」
「いや、前回は個人の要望を聞いたから時間がかかったけど、武器や防具はまとめて付与が出来るそうなんだ。大した手間はかからないよ。その他の要望は受け付けなくていい。キリがないからね。」
「期間はどのくらいですか?」
「三か月を想定してる。大丈夫?」
「かまいませんけど……何で大丈夫なんですか?」
「んー、領司様と三か月会えないけど大丈夫?ってこと。」
「保護責任者との面会ってそんなに大事なんですか?」
「おう、まさかそう返されると思わなかった。寂しくないの?ってことだよ。」
寂しくないのと聞かれると……どうだろう。仕事だしな。帰って来られるのなら特にはって感じもする。
〝開かずの扉〟の件があるのでドッティラーノから行くことになる。佐山くん、一緒に行ってくれないかな。行ってくれなさそうだな。ダメ元で頼むか。
とりあえず、本人に確認するために佐山くんを訪ねた。
「だって。聞いた?」
「聞いてますよ、もちろん。ちなみになんですが、戸川さんって運転出来ます?」
「運転?車の?」
「そです。」
「免許は持ってる。ペーパーだけど。」
「マジすか。うわ、ちょっと怖いなぁ。」
「まさか、車で行くの?」
「馬車だとチンタラし過ぎて面倒臭くないですか?」
「面倒臭い。」
時間がかかる。ケツが痛い。面倒過ぎる。なるほど、車か。その手があった。賢いな、佐山。
「少し練習しますか。俺もペーパーなんで。」
こわ。でも、他に車なんていないし、郊外はほぼ砂利道だし、街中で乗らなきゃ問題ないかな。
「山も通るから、あんまりデカくない方がいいですよね。」
「馬車サイズで通れる道なんだからそんなに小さくなくてもいいんじゃない?」
一応、街道は整備されているので主要都市までの道は悪路というほどではない。ただ、山道は狭い。あんまり横幅大きいと危ないが、馬車の幅は自家用車よりあるのでトラックとかでなければ問題ないと思う。
「そっすね。同行者は保護責任者代理で領館の人が来てくれるんですけど。」
「護衛もつくって聞いたけど。」
「兵士が二人ですね。まあ、安全な国みたいなんで、それくらいならミニバン出せばいいか。」
というわけで許可を取り、ミニバンを出す。マジで青たぬきレベル。
「EVなんだ。」
「環境に優しいんで。」
そういう配慮が出来るのが意外。電池切れにならないようにまた効果を付与し、同行予定のガスト・デンキー氏、護衛兵のミズ・アーブラ氏、ハイヨ・ロコンデ氏が同乗する。
「快適ですね……。」
「昔、遠征の度に痔になったんでホント欲しかったんですけど、軍事転用確実だったんで、戦車出せとか言われたらたまったもんじゃないんで。」
「色々考えてたんだね……。」
「人はなるべく殺したくなかったですね。そういうのは断ってました。最初の頃は敵国の王とかの暗殺が多くて。怖かったです。まあ、グレップの奴らは漢字知らないから誤魔化してましたけど。」
「どうやって?」
「んー、昏睡状態にしたりとか、全然関係ない無人島に飛ばしたりですかね。飲まず食わずでも生きられる体にして。俺のスキル、どんなに遠いところにいても個人特定出来れば効いちゃうんで。戦時中に国王が昏睡状態とか多分他国に悟られないようにするだろうと思って。行方不明とか死んでも同じですけど。今回こっちに来て調べたら実際生きてましたね。帰る前に全部無効化して元に戻してから帰ったんで。覚えてられた限りですけど。」
へえ。粋なことすんな。正常な人間なら、人殺しになんかなりたくないよな。
「それでも戦場では誤魔化し効かないんで。トラウマです。今でも夢に見ます。最悪です。チートなんかあっても、なんも楽しくないです。」
佐山くんのこういう話は初めて聞いたな。あんまり酷い扱いにみんな何も言えなくなった。
食事を与えられなかったり、仕事中は椅子から立ち上がることも許されなくて、用があればあちこちに連れて行かれて、監視の兵士や一部の人間以外との接触は禁止されていたと語った。
「もしかして飯抜き刑とかもスキルで乗り切ってた?」
「はい。最初はこっそり食べ物出してたんですけどバレて。監視は四六時中ついてたし、スキルの為の必要な道具は仕事中以外取り上げられてました。だけど、まあ、その辺はやりようありますからね。飲まず食わずでも大丈夫だけど、食欲はあったんで。食事しないとか生物としておかしいじゃないですか。葛藤の日々でしたね。」
「本当にお労しい。コノではどうぞ、自由にお過ごしくださいね。」
デンキー氏がそう言うと、佐山くんは「満足してます!」と明るく笑った。彼の振る舞いはそういう陰を悟らせない為か、自分を誤魔化す為か。
「俺、どうせいなくなった時に戻れるんで、本当はあんまり焦ってないんです。ただ今は、自分の立ち位置を固める為にあれこれやってるだけで。死んだら意味ないから、ないと思うけど暗殺とか、不慮の事故が起きても簡単には死なないようにレベル20になった時点で既に体に効果かけてます。不死身じゃないから、大怪我するとヤバイですけど。不老不死、むしろ怖いし。痛覚無効も怪我に気付かないと危ないんで。だから、なるべく痛い思いはしたくないです。飲まず食わずもイケます。バルトさんに頼まれてるんで、後で戸川さんにもかけてあげますね。愛されてるぅ!」
そういうのはいらないんだよ。あ、効果はいるけど。




