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ショウコ、冒険者ギルド辞めるってよ(5)

 佐山氏改め佐山くんはずっとゴズさんの後ろに隠れてビクビクしている。バルトの誤解は何とか解けた。が、仕方ない。


 佐山くん、ゴズさんを頼るとは見る目がある。


「ねえ、サヤマくん。ウチのギルドに入らない?」


「やです。もう怖い思いはごめんです。」


「でもレベル上げには持って来いだろ?」


「んなことありませんよ。俺のスキルは字を書かなきゃいけませんから。発動まで時間がかかるんです。やって武器の強化とか、ダンジョンを完全停止状態にするとか、そんくらいです。」


「マジか。それでも有難いんだが。」


 ゴズさんとコートさんは佐山を冒険者ギルドに勧誘している。この二人にはあっという間に懐いた。何故だ。


「あ、でも、トラップ系は止められるものあっても、モンスターは一度生まれたら止められませんよ。レベル的にまだ有機生命体に干渉出来ないんで。それに俺帰るつもりですから。その後、どーすんです?みんな楽なのに慣れたら、後々絶対に困りますよ。」


 佐山くん、案外いいこと言うな。


「サヤマくん。」


「ひい!」


「そう怯えないでくれ。竜化はもうしない。怖がらせてすまなかった。」


「す、すんません。俺、基本臆病なんで。」


「今後は私が保護責任者として面倒を見る。月に一度の面会があるので慣れてくれ。」


「それ、俺が来たこと、隠しておけないですか?」


「私が罰せられてしまう。申し訳ないが存在を知ってしまった以上、報告義務は発生してしまうんだ。大丈夫、君がまた日本とやらに帰るまでは自由は保証される。さすがに国を滅亡させられたらたまらないからな。」


「何もして来なきゃ何もしません。俺だって、本当は平和主義者ですから。」


「でも、脅しには使えんな。」


「交渉材料にはなるだろうね。」


「そうですね。今でも世界滅亡は書けますから。」


 すごいけど怖いな。本当にトンデモスキルだわ、来訪者。帰り道は『迷宮罠全部完全停止』を使ったのでトラップは動かなかった。楽だわ。


「ていうか、佐山くん。この世界では佐山くんの方が怖がられてるよ。」


「そうだよね〜。子どもの躾に〝悪いことしたらユキヒト・サヤマが国を滅ぼしにやって来るぞ〟って私も何回か娘に言ったことがあるよ。」


「ウチもミルックがよくウシーに言ってんな。」


 鬼とか閻魔様扱いだよな。畏怖の対象というか。まあ、どちらかというと、イジメをしたらいつかしっぺ返しが来るよという教訓に近いんだけど。


「うええ!俺、人里出たら石投げつけられません!?」


「報復怖くて出来ないでしょ。」


「良好な人間関係を築きたいんですけど……。はあ、先行き不安になってきた……。」


 偽名でも使うか?でも、来訪者のスキルは情報公開されるんだよな。いや、調べれば分かるという程度なんだが。


「社会貢献してくれればイメージも払拭されるだろう。」


「まあ、スキル上げるのに仕事はするつもりですけどね。」


「んなら、武器の強化頼めるか?」


「いいですよ。お代は1000マンエンで。」


 一千万円って。高額過ぎる。


「サヤマくん、今はマンエンという通貨単位は使われていないよ。」


「あ、そうなんですか?確かにグレップ国内の通貨単位でしたけど。」


 そうだったのか。詳しい歴史は習ってないからな。ボード氏の授業ではグレップ帝国がやらかして佐山


「現在は世界でゲンキンという共通通貨を使っている。いーゆー、だったか?君が書いた本を元に来訪者のマ・オウという方がお決めになったんだ。」


 魔王様、そんなこともしてたのか。わたしたちの世界のEUが知られているとかどういうことなんだよ。


「え、アレ、残ってたんですね。」


「君の著書は政治学、経済学では必須の参考書になっている。」


「何書いたの?」


「あー、前に転移してきたときに持ってた大学のテキストを翻訳しただけです。やれって言われて。レベルも上がんねえのに。マジ、いい迷惑でした。」


「なるほど。」


「戸川さん、本当に何にも持って来てないんですか?」


「ないよ。完全に身一つ。アクセサリーくらい。」


「最悪っすね、ソレ。」


「指輪売ったらいいお金になったよ。」


「まあ、こっちの技術って色々遅れてますもんね。あ、そだ。スマホ見ます?」


 スマホ持ってるのか。あっちの物、本当になんも持ってないな、わたし。


「見たい見たい。」


 佐山くんはリュックのサイドポケットからスマホを取り出して貸してくれた。


「おお、久々に見た。あれ?Wi-Fiついてる?」


 電波は圏外だがWi-Fiのマークがついている。使えるのだろうか。


「そうなんすよ。試しに『無線使用範囲無制限』にしたらWi-Fiのマークが出たんです。」


「へえ、変なの。後で高額請求来ないといいね。」


「うわソレこわ!」


「ちょっと使っていい?」


「いっすよ。充電は切れないようになってるんで気にしないでください。あ、認証。はい、どうぞ。」


 ふと見た日付はわたしが転移して来た日から少し経っていた。時間の流れが違うのかもしれない。


 動画アプリタップ。おお、ついた。何か観てる途中だったのか。暇つぶしに何か観てたな?あー、サムネ、ゲーム実況ばっかじゃん。まだ出口まで時間かかるし音楽でも流すか。


 スマホから音がするとみんなは驚いた。


「んな小さな板からこんなデケェ音すんの!?」


「すごいな。魔道具にもこんなものはないぞ。」


「十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかないなんて言葉がありますからね。科学技術ってのはどちらかというと発想と努力の賜物です。あんなこといいなできたらいいな、こんなものがあったらな、みたいな理想を実現するために俺たちの世界の人類はこういう技術を発展させて来たんですよ。」


 青たぬきの歌か?色んな欲望、叶えてくれるもんな。りんごのロゴで有名な電子機器の会社の製品は有難く使わせてもらっていた。

 そういやマジックバッグで青たぬきの腹についてるポケットと同じだよな。


 子ども向けアニメだけど、主題歌が聴きたくなった。流してみるか。


「何でその選曲なんすか。」


「なんとなく。」


「俺、そのオープニングの世代じゃないっす。」


 うっさいわ、2000年代生まれめ。


「有料コンテンツとかアプリ内課金とか金のかかる系は怖くて使えないですけど、よかったらスマホ複製しますよ。ここ、娯楽なくてつまんないでしょ。」


「ホント!?うわ、うれしい!」


 スマホゲット!まあ、起きてられる時間が短いからそれほどつまらないと思ったことはないが、ないよりはあった方がいい。


「試してみたいことがあるんで、協力してください。」


「いいよ!わー、やった。ここに来て一番うれしいかも。ありがと、佐山くん。」


「いえいえ、って、ひい!」


「サヤマくん。ここを出たら少し話し合いをしよう。」


 バルトは佐山くんの肩をがっしりと掴んだ。爪食い込んでない?


「いてえ!爪刺さってますから!ホント嫉妬深いな!だからやなんだよ番のいる種族!!」


 それは激しく同意するわ。心底な。

佐山由紀人(21)

港区の大学に通う

臆病を自称するが、結構図太いし図々しい

割といいとこのおぼっちゃま

服はママが買ってきたのを適当に着ている

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