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チートで無敵な魔王の加護は異世界最強です!?(2)

「邪魔するよ〜。」


 馴染みの店に入っていく常連客のように魔王様はヨックバール邸の応接間に入って行く。


「おや、お早いお帰りでしたね。」


「シューワ君、聞いてよ!不老不死倶楽部にドラゴンが仲間入りしたんだ!」


 話の飛び方が半端ない。バルトが経緯を説明すると総統閣下は嘆息した。


「分かりました。では、ドラゴンは来訪者ではあるが閣下が保護され愛玩動物となり、危険性はないということで公表致します。」


 ドラゴンが魔王様のペットになった。あのドラゴンが怒らないといいけど。


「早速、おまもり作ろうか。早く帰ってドラゴンと遊びたいし。」


 本音はそれか。さっき出来なかったバトルでもするつもりなんだろうか。思わずドラゴンに同情してしまう。


「どれにつければいいの?」


「ショウコ。ピアスとネックレスを。」


「あ、うん。」


 バルトからの誕生日プレゼントとして、わたしのピアスとネックレスに魔王様の呪いをかけてもらうことになっている。魔王様はたまにこうして人のいるところにやって来ては荒稼ぎして生活費を稼いでいるそうだ。要するに不老不死倶楽部とやらの維持費なんだろう。高額ではあるが寄付金と思えば……いや、額が恐ろしすぎるな。


「おお、純度の高い石だね。カッティングの仕方もめずらしいなぁ。」


「わたしの世界では一般的です。」


「金剛石の加工、そんなに簡単なの?」


「どうやるのかは分かりません。あ、でもダイヤモンドはダイヤモンドで削ると聞いたことがあります。他の用途でも研磨剤に使われていたはずです。」


「へえ〜、そうなんだ!ユキヒト・サヤマとショウコの世界は面白いなぁ!興味深い!」


「こういう形のダイヤモンドはダンジョンからしか出ませんからな。」


 シディーゴ第一でも出て来たな。この世界はダンジョンで事足りるから人の手による技術の発展が進まないんだろうか。宝飾関係はクズの方が詳しかった。聞き流してたクズの蘊蓄をもっと真剣に聞いてればひと財産築けたのだろうか。


「ところで何を付与するの?このサイズならピアスは効果が小さいもの、ネックレスは中くらいの効果、うーん、大、いけるかな?つける効果次第だけどね。」


「どんなものがあるんですか?」


「この世界のスキルと似たような効果はつけられるよ。人気の認識阻害はショウコちゃんには必要ないから、防御、カウンター、回避、毒無効、麻痺無効辺りがオススメかな?戦闘の強化も出来るけど、元が普通のヒューマンだから高位モンスターには太刀打ち出来ないと思うし、あんまり意味ないね。あとは体力強化とかかな。ダンジョンって広いから。昨日もショウコちゃん、途中から辛かったでしょ?」


「はい……。」


 一階層が狭いとはいえ、シディーゴ第一の下層階は足場が悪く、水の中を浸かって歩いたのが最後の一撃だった。衣服はすぐに魔王様が乾かしてくれたけど、水中ウォーキングはかなり体力が削られた。途中深いところは泳がざるを得なかったし。


「スキルによる毒無効と麻痺無効はまだ検証してないんだろう?」


「第三で出来なくなったからね。麻痺はスキル解除した後に受けたし。」


「試してみる?どっちも出来るよ、僕。」


 魔王様、どんだけチートなんですか。捨てていいガラス瓶ちょうだいと言われたので保存食用の空き瓶を渡すと水を入れ、どこからか出した薬草を入れ、えいと力を込めればアラ不思議。あっという間に毒水の出来上がり。どうなってんの。


「飲むのはスキル切ったときに効果残留するかもしれないからやめといた方がいいよ。皮膚なら洗い流せるしかぶれるくらいで済むから人差し指突っ込むくらいでいいと思う。」


「ショウコ。閣下は治癒もお出来になる。確かに恐ろしいが安心していい。」


「あ、誰かコップに水用意しといてー。指洗う用に。

 」


 あ、そうか。スキル解除しても体についてたら結局ダメージ食らうのか。ちょっと怖いけど番バカの二人がそう言うのなら安全なんだろう。怖いけど。


「分かりました。やってみます。」


「何気にショウコちゃんのスキル初めてじゃない!?ワクワクするなぁ!」


「いきます。〝オールスルー〟」


 魔王様はパチパチと数度瞬いて、「え!?」と声を上げた。


「うわ、ショック!みんながダメでも僕だけは分かると思ってたのに!え!?いるの!?ショウコちゃん、いるー!?」


「いますよ。」


「ねえ、返事もないよ!なんでなんでなんで!?」


 わたしのスキルなら聞こえなくて当たり前だが、つい返事をしてしまった。バルトが解説し始めたのでそちらは任せ、いざ、人差し指を毒の中へ。


 って、ちゃんと見てるのヨックバール総統閣下だけじゃん。


 恐る恐る毒に指を浸すと、水面すら動かない。水位も変わらない。わたしが世界から完全にいないものとなっている証拠だ。引き上げた指にも濡れた感覚はない。


「〝キャンセル〟」


「わあ!出た!」


「ショウコ、指は?」


「何ともない。大丈夫。」


「本当に指を入れたのか?水に変化が全くなかったぞ。」


「はい。わたしも驚きました。」


 所有物に関してはスキル発動と同時に周りからも認識出来なくなる。ガラス瓶はわたしのものだけど、毒水を入れた時点で魔王様のものという扱いなんだろう。ヨックバール閣下にもちゃんと見えていたんだから。


「次は麻痺を。」


「ショウコちゃん限定でかけるけど、一応他の人は目を瞑っててね。金縛り程度でいいかな。」


「はい。とりあえずスキル発動したら閣下の目を見ていればよろしいのですか?」


「うん。こっちは目線が分かんないから、このままお互い動かずに。いいよ、準備して。」


「〝オールスルー〟」


「いくよ。ハイ、かけたー!」


 瞳孔が一瞬光ったのが分かった。分かったはいいが、身体に変化はない。


「あいうえお。」


 誰も気付かないが発声も出来る。立ち上がってみると普通に立てる。問題ない。


「〝キャンセル〟」


「うわ!コレ、心臓に悪いな!?」


 アナタ心臓無くなってもコアがあれば復活出来るんですよね?


「何ともなさそうだな。」


「ええ。効果中に声を出してみましたが問題ありませんでした。」


「えーえーえー!?ウソでしょー!?ショウコちゃん、本当にすごいね!!こわ!!!」


 チートで無敵な魔王様に怖いと言われた。大変不本意である。

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