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新たな第一ダンジョン(3)

 二日くらいでキョウちゃんはレベル6で動いてるわたしを察知出来るようになったので、ダンジョンに潜ることにした。

 認識阻害でなくても気配を消すくらいならその辺のスライムでも出来る。これからはダンジョンでも街と同じように〝個体認知〟ができるように訓練する。街中は人は多いが危険はない。ダンジョンはわらわらとモンスターが闊歩しているわけでもないが、どこから出てくるか分からない。通路は入り組んでるし、トラップもある。


「いやぁ、道が狭くなったね。それに支道も増えた。」


 第一ダンジョンは更新後、内部の趣きは変わらないが、細い通路が増えた。


「ところでショウコ、何してんの?」


「左手の法則だよ。右手でも行けるけど。」


「なにそれ?」


 迷路で左手を壁伝いに行けばゴールに辿り着くと言うアレだ。右手の道順と合わせると全ての道を通ることが出来る。知らないのかな?


「え、知らない。それ、ギルドに報告した方がいいよ。」


「マジか。」


「マジマジ。」


 こんだけ頻繁に(といっても大規模な更新は年単位だけど)があるのに、こういうの知られてなかったんだ。意外。

 わたしが首を傾げたらキョウちゃんは笑った。


「ショウコといると面白いな。飽きないよ。」


「そう?」


「うん。来訪者ってみんなこんな感じなのかな?」


「さあ……マ元総統とは面識ないの?」


 上流階級の生まれだからまだ生きてるなら知ってるんじゃないのかな。ジンさんも年に一度は会いに行くって言ってたし。


「私が生まれた頃にはもう隠居なさってたからね。お会いしたことはあるけど、子どもの頃の話だよ。でも気のいいおじさんって印象。あ、お兄さんかな?見た目はね。」


「見た目は?」


「不老不死らしいから。自分が一番力を発揮出来る年齢から成長も老化もしないんだって。しかも肉体が吹き飛んで死んでもコアが壊れない限りは再生するんだよ。すごいよね。」


 うわぁ、完全なる人外だった。コアは魔族とヒューマンのハーフでもある人とない人がいるそうだ。コアがない子孫は魔法が使えないと言っていた。ジンさんは見た目の特徴は受け継いだけど、コアはないから魔法は使えない。角も意味があるものらしいが、話を聞くと昆虫の触覚とか動物のヒゲと似たような感じだった。感覚器官の役割のようだ。


「ま、我々ヒューマンには無縁の話だよね。」


「確かに。」


 ついでにマッピングしてギルドに買い取ってもらおうということになった。わたしは地図の書き方を教わるのに第一階層はスキルなしで歩くことにした。なんかその内こういう仕事割り振られそうだな。社会的貢献の一つにカウントされるといいんだけど。

 スライムとアミルラージの群れを倒しつつ、先へ進む。スライムは知能が低いから余り群れないものなのに、今回のダンジョンではスライムの群れが度々確認されている。ダンジョンもバージョンアップしていくようだ。


 午前中の内に第一階層のマッピングを済ませた。部分更新の際に本道は基本的に変化はない。支道と抜け道の接続が変わる。まあ、その支道が下に行けば行くほど入り組んでてその接続は度々変更になる。毎日潜ってる冒険者からすればすぐに気付くような変化だけど、新しいトラップがあったりするから注意を怠ってはならない。

 昼食は一度外へ出て済ませ、午後はまた戻ってかくれんぼだ。せっかく地図を作ったことだし、第一階層を存分に使う。わたしは気配なんてもの読めないので、ウロウロしてれば出会い頭にぶつかることもある。普通に見つかった場合以外にも、キョウちゃんがわたしに気付いて「ショウコみーっけ!」と言えばキョウちゃんの勝ち、ばったり会ったのに気付かなければわたしの勝ち。

 いい歳してかんれんぼとも思うが、案外楽しい。友人と高め合うとかいう経験はほぼなかった。わたしの世界は家族のことだけだったから。それもいいことばかりじゃなかったしな。


「ショウコみーっけ!」


「〝キャンセル〟!見つかった!」


 たまにすれ違う冒険者にビクッとされるが気にしない。翌日にはキョウちゃんはモンスターを倒しながらでもわたしの気配に気付くようになった。なかなかよろしいのではないだろうか。何故かわたしも鼻が高い。役に立っているという実感がある。嬉しい。


「そんなことをしてるのだな。」


「うん。結構楽しくて。バルトもする?」


「ショウコといられる時間は僅かしかないのにわざわざ別々に行動しては意味がなくなってしまう。」


 いや、今日は普通に面会日なんだけどね。久しぶりに領司館に招待されて、肩肘張ったディナーだ。バルトと友人関係になったのでもうそこまで緊張しないけど。やっぱりなんだかんだでこれまでは〝この人は偉い人〟というのが頭にあったんだな。

 ていうか、今、バイキン氏とメーガー氏も同席してるんだけど。友人になっても彼にとってわたしは番だから、こういう恥ずかしい台詞もスラスラと出て行く。


「もう少しスキルレベルを上げて頂きたいところですが、当分は無理そうですね。」


「そうですね。友人の訓練を聞きつけて他の方からも依頼が来てしまいましたから。」


「領としてもレベル51以上でダンジョン内に長期滞在をして頂きたいところです。それならばトガワさんのダンジョン内での安全も保証されますからね。」


 寝てても効果が持続するからな。そうしたら長めにダンジョンに潜って中層階の下の方のアイテム回収を生業にしていきたい。


「今年はミスリルが多く手に入った。まだ急がずともいいだろう。」


「来年に備えての話でございますよ、領司。」


 ムッとした顔をして、分かっているとバルトは答えた。全くもう。


「その際は私も同行する。たまには私も領の収益に貢献するとしよう。」


「バルト。」


「どうした?」


「それは過保護過ぎ。」


 私がそう言うとバルトはしょんぼりして項垂れた。バイキン氏とメーガー氏は大笑い。案外、フランクな職場だな、ココ。そういえばジンさんもコッティラーノはのんびりしてて良いって言ってたな。


「領司がダンジョンにこもられたら我々は休めませんので辛抱ください。」


「領司が行かれるなら私も同行したいところですがねぇ。」


「メーガーさんはいいでしょうが、我々はたまったものではありませんよ。」


「そもそもわたしがダンジョンに潜るときは常にスキル発動してますから。バルトには見つけられませんよ。」


 ショックで青褪めたバルトを除き、面談を兼ねた食事会は和やかに終了した。


 ま、バルトだけじゃないからね。わたしを見つけられないのは。

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