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ダンジョンは危険がいっぱいだけど、全部スルーしていきます  作者: 里和ささみ


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第三ダンジョン(7)

 ゼーキン氏、あ、バルトだった。友人となったのでバルトと呼ぶことになった。


 バルトと別れて第三ダンジョンの宿泊所で充てがわれた部屋に戻る。すれ違った人がみんなギョッとした顔をしてたけど、どんな顔してんだろと思ったら目の下にクマ、頬も唇も気色なくカサカサ、なかなかに死相が表れている。眠い。そういや全然昼寝してなかった。水も飲んでないかも。


 水分を取ってベッドに入って眠りにつき、起きたらなんと。丸一日と半経っていた。昼食後に寝て真夜中に起きたらその日の夜だと思うよな。それに気付かず、マジックバッグに入っていた食料を少しつまみ、シャワーを浴びてまた寝たら昼。まさかの三日後。ほぼ五日間寝ていたことになる。


「ちったぁマシな顔になったな。」


「すみません、結局五日も寝てしまって。」


 とっくにコノに帰ってるはずだったのに。ゴズさんにも付き合わせて悪いな。必要な人員を残して殆どの人は第二に移動済みだそうだ。キョウちゃんはまだここにいてダンジョンに吸収されずにすんだ遺品の回収と分別をしていると教わった。ジュンさんは既に第二にいる。ミルックも心配してるだろう。ゴズさんが第二にいる間は実家にいるつもりだそうだ。わたしとゴズさんは明日第二に移動する。

 バルトも三日前にコノに帰った。わたしがなかなか起きないのをとても心配していたそうだ。まあ、五日も起きて来なきゃ誰だって心配になるな。


「しゃーねえ。てか、レベル測った方がいいんじゃねえか?」


 レベル10に上がる時にも同じように丸二日寝続けたという前例がある。今回は特に命の危機があった。そうなるとレベルがグンとアップする。もしかしたらと思う。

 ギルド派出所のロビーにある機械でレベルの測定を行なった。ここには二台あって、冒険者でなくとも自由に調べられる。ちなみにコノのギルドには人が多いからか五台用意されている。


「うわ。」


 驚きのあまり思わず声が出た。一気に上がり過ぎじゃないか?


「すげえな。やっぱあのゴーレムの麻痺が効いたんだな。」


「さすが来訪者ですね。」


「うわ!お前、気配殺して来んなよ!」


「あはははは。」


 ジンさん、軽いんだよな。わたしの苦手なタイプ。ソヨウさんの予知夢、本当に当たるのかな?あの一通しか読んでないから他のパターンもあるのかもしれない。ジュンさん、読ませてくれるかな。


「ゴズさんに気付かれないのは自分が優秀なんじゃないかって勘違いしてしまいます。でもちょっと気分がいいですね。」


「お前は優秀だろ。Sランク昇格断りやがって。」


「そうなんですか?」


 若者たちはみんなウチの支部で唯一のSランク冒険者であるゴズさんに憧れてるのに。何で断っちゃったんだろう。


「コートもだ。コイツら、国からの支援要請とかランクについてくる義務のアレコレが面倒くせぇっつって断ってんだよ。」


「ゴズさんだって面倒だと思ってるくせに。」


「知らなかったんだよ!」


「ちゃんと規定要項読まないでサインするからですよ。」


「うるせえ!お前らと違って大した学もねえから読んでも分かんねえんだ!」


 そうか。ランクが上がればそういう問題も出てくるのか。Cまで行けば簡単にはクビを切られないと説明を受けたけど、逆を言えば義務が生じるならCのままでいいと思う人も出てくるんだろうな。長く続けてればそういうデメリットも見えてくるだろうし。


「オレはお前らみたいにAランクでちまちまと個人成果上げてる方が面倒なんだよ。しょっちゅう家を空けなきゃなんねえしな。」


「愛妻家で何よりです。ミルックも幸せ者だなぁ。」


「そう思うならお前も早く結婚しろ。」


「なかなかいい人がいなくて。若過ぎる子も苦手ですし。」


「ジンさんっておいくつなんですか?」


「二十八だよ。もうすぐ二十九になるけど。」


「お前とミルックと同じだよ。」


 同い年なのか。その歳で独身なら男性でも肩身が狭いんじゃないかと思うけど、この人はそういうの気にしなさそうだな。


「独身仲間としてよろしくね。」


「はあ。」


 握手を求められたので手を出した。なかなか離してくれない。


「あは。冒険者の手って感じはまだしないね。可愛らしい、女の子の手だ。」


「もうそんな歳じゃないですよ。揶揄うのはよしてください。」


「ごめんごめん!バルトに知られたら殺されちゃうな。」


「バルトさんとは親しいんですか?」


「まあ、子どもの頃は交流があったからね。コートもそうだよ。」


「まあ、あいつは結婚してから正規雇用に切り替えてオレと似たような立場になったけどな。」


 そういやそんな話聞いたな。コートさん、子煩悩だから、日勤のみにしたかったって言ってたわ。起きてる時に家に帰って来られなくてパパいらっしゃいとか娘に言われたら死ねるって。そういう話は日本でも聞いたな。


「コッティラーノは政治的にあんまり重要な領じゃないし、私はそこが気に入ってるんだけどね?のんびりしてて。だけどまさかバルトが領司に任命されて来ると思わなかったよ。首都で出世街道爆進すると思ってたからなぁ。」


 もしかしたらヨックバール総統もソヨウさんの予知夢を知ってたのかもしれないな。見合い話は夫人とお兄さん主導で進められてたっぽいから、二人は知らないんだろう。


「まあ、確かにそうだよな。一応、ウチのギルドのテコ入れっつー名目はあったが、年間目標額を下回ってるワケじゃねえし。」


「前回のスタンピードでの戦力低下まではそこそこ収益ありましたからね。」


 スタンピードという言葉に心臓がギュッと痛くなる。ジンさんに悟られた。やめてよ、人の心読むの。


「何はともあれ、スキルレベル30到達おめでとう。ギルマスに報告して来た方がいいよ。気にしてたから。」


「ありがとうございます。ゴズさん、わたし、マッタさんのところに行って来ますね。」


「おう、それ終わったら部屋に戻って荷物まとめとけよ。」


 結局、何にもしてないな、わたし。レベル上がってもあんまり嬉しくない。今までは訓練で努力して上がっていったから達成感があったけど、今回は違う。素直に喜べない。


「そうか!おめでとう!ギルド証貸してくれる?」


「はい。」


 内容確認するのかな。ジンさんが来たから自分でもちゃんと読んでない。


「ん、これでDランクに昇格だよ。おめでとう。これからも頑張ってくれると嬉しい……と言いたいところだけど、どう?頑張れそう?」


 頑張れそう?と言われて、サンちゃんの笑顔が過ぎった。声が出ない。首を絞められてるみたいに喉が潰れてるような気分になる。


「ま、ずっと寝てたから考える時間もなかったか。ごめんね、ちょっと急ぎ過ぎた。」


「いえ、大丈夫です。」


「それ!それダメだよ!ちゃんと思ってること口に出してもらわないと困る。後で突然、やっぱり辞めますだけ言っていなくなられてもね。困るんだよ。こっちの都合かもしれないけど。」


 そうだよね。ただでさえ、今回の件でこの支部は戦力が低下した。他領から異動希望者を募るという噂をさっき耳にしたけど、どれくらいの人数が来るか分からない。


「じゃないと、悩み事も分からないまま見送らなきゃいけなくなるだろ?そんなの、悲しいからね。お互いに。」


 はっとして顔を上げると、マッタさんは苦笑した。


「本当はね、今回の功績的には一気にCに上げても良かったんだ。」


「……わたし、何にもしてません。」


「そんなことないよ。ショウコのお陰で四肢欠損の重症者もリハビリ後には復帰出来る。今回の功績は治療方法の確立もある。あ、マジックバッグの件は中央にも伝えてあるんだ。今後はギルドにそれぞれ管理するダンジョンの数だけ完全時間停止機能付きのマジックバッグが配布されることになった。製氷機の導入もね。何より、最後まであの場に立っていた。ミスリルゴーレムの再生を防いだのは大きい。気付いてた?あの時点で第三常駐のAランク三名の体力はギリギリだったんだ。武器もゴズに代わりを持たせたけど、ミスリル相手じゃあっという間にクズ鉄だ。ゴズの大剣だってボロボロだった。アレもミスリル合金なんだけどね。合金じゃ純ミスリルには敵わない。あそこでゴーレムが復活してたら、もっと被害は拡大していた。ショウコはちゃんと、仕事したんだよ。」


 そうなのかな。自分じゃ分からない。わたしが役に立ったかどうか、判断が出来ない。


「ショウコは本当によく頑張ったよ。偉かったね。」


 まるで我が子を褒めるように、マッタさんは優しく笑いかけてくれた。


 頭の中でジュンさんの言葉がこだまする。


〝もっと自分で自分を褒めてあげなさい。〟


〝それが出来ないなら、たくさん褒めてくれる人に褒めてもらいなさい。〟


 わたし、もっと、自分に自信を持ちたい。胸を張って、わたしは頑張った、しっかりやれたと言いたい。


「冒険者、続けようと思います。」


「うん。これからも期待してるよ。」


 期待に応えたい。期待してくれるってことは、わたしを認めてくれているということだから。

祥子さんは生い立ち故、自己肯定感低めです。

その内、そんな話も出てきます。

割と胸糞の予定なので、その際は前書きで注意を入れるつもりです。


シリアス回はこの辺で一旦終了して、次回からはもうちょっと呑気な話にしたいなと思っています。


お読みいただきありがとうございました。

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