第二ダンジョン(3)
「ショウコ、余計なこと考えんなよ。」
わたしの思考が負のループに陥ってたのをゴズさんは気付いたらしい。
「すみません。」
「何でもないことでも結構すぐに謝るよな、お前。」
「アタシたちには厳しいよ!おやつのつまみ食い怒られたもん!」
「あれはジュンさんに甘やかすなって言われてるからだよ。」
「敵はジュンさんだった!」
ハナちゃんはそう言いつつも、一緒に作ったクッキーをエアちゃんと共にばくばくと食べている。本当によく食べる。
「すぐに謝るのは国民性だと思います。」
「そうなん?ここだとナメられるから気をつけた方がいいぞ。」
欧米か?欧米なのか?違った、異世界だったわ。
「ねえ、ユキヒト・サヤマと同じ世界ってことは彼がどうやってグレップを滅ぼしたか知ってるの?」
エアちゃんが佐山氏の話題をぶっこむ。もう気にしてないのかな。
「ノブドから使者が来てたんだろ?話題になってた。」
そういやイショくんは来訪者伝説が好きだと言ってたな。馬車でも魔王様の話やジュンさんのお祖母さんの話をしてたわ。耳タコだよ!とハナちゃんに文句言われてたけど。
「佐山さんは、多分、わたしと近い時代の人だと思う。同じ国だし。」
「時代はランダムって言うもんな。」
「すぐに謝る国民性なのに何であんなことしたんだろうな。」
「不満を溜めて溜めて溜め込んで、最後に爆発させるからだと思う。」
「ナニソレ、長生きしなさそ〜。」
「あっちの世界で一、二を争う長寿国なんだけどね。」
「マジか。」
ここのヒューマンの平均寿命は女性で六十、男性で五十八。わたしの年齢で既に人生折り返しだわ。そりゃ早婚推奨にもなる。
「何で同じ時代って分かるんだ?」
「漢検一級持ってるって言葉があったから。そんなに古くからある資格じゃないからね。」
「ノブドから発表されたヤツ!」
もう研究について公開されてんのか。あの人たち仕事早いな。漢検一級の意味知って咽び泣いてたもんな。
「直筆見たんだろ?何か面白いモノあった?」
「面白いもの……特にないなぁ。ハーレム作ろうとして自分の体が持たなくて破棄したのはちょっとどうかと思った。」
ぶはっ!とみんなが吹き出した。女子は眉根を顰めている。
「男のロマンも実現すると大変なんだな!」
「ちょっとぉ、トーイ?」
痴話喧嘩はやめてくれ。あれは佐山氏以外には出来ないことだから。
「ショウコもいつかは伝説になるのかな。」
「お、てことはオレらも伝説の一幕に!?」
「トーイ、話逸らさないでよ!」
「お前らは自分で伝説作るつもりで努力しろ。それだけの素質はある。ショウコに便乗すんな。」
厳しくも温かいお言葉である。若者たちも湧き上がる。
「それって!それって、Sランクってことっすか!?」
「さあな。誰かが欠けなきゃAにはなれんだろ。」
「個人!個人ランクは!?」
「ハナ、お前今のままだと万年D止まりだぞ。猪じゃねえんだから突進すんな。頭使え。パワータイプだから燃費が悪いんじゃねえ。単にお前の使い方が悪いんだよ。マッチ、一撃必殺はやたらと数打ちゃ当たるスキルじゃねえんだ。もっと基礎訓練をしろ。二人とも休みの日にもソロで潜れ。パーティに貢献してぇなら経験のなさを努力で埋めろ。」
二人はうげぇ!と叫ぶと両脇から頭を叩かれた。叩いたトーイくんとイショくん、そしてエアちゃんにもアドバイスを送る。
「トーイは自分を過信するな。何度も言ってんだろ。自分のランクが高いからって周りに同じこと求めんな。リーダー名乗るなら状況把握は絶対のこと、それとちゃんと統率しろ。ハナを好きにさせんじゃねえ。そのうち泣きを見るぞ。マッチのこともだ。もっと上手く使え。エア、お前もうちょいスキルレベル上げろ。探知は便利だがさっきも敵を見誤った。ホブゴブリン分かんなかっただろ?中層階踏破してえなら敵の強弱の見分けは必須だ。あと群れとの戦闘で漏れたヤツを殺すのはいい。だけど一匹に時間がかかり過ぎる。高層階のモンスターは一撃で倒せるようにしろ。イショ。お前はサブリーダーなんだからもっと意見しろ。トーイは戦闘始まると殺すことしか考えてねえ。お前の方が戦況を見れてる。トーイ!イショの発言はちゃんと参考にしろよ。それが出来ねえなら頭をイショと変われ。それとイショはハナとマッチに気配の察知と自分の気配の殺し方を教えてやれ。こいつらてんでなっちゃない。」
その後は今日の振り返りをしながら具体的に何がダメで何が良かったか、自分ならどうしたとかそういう話をしていた。わたしは眠気が来たので先に寝かせてもらった。不寝番もわたしは免除だ。
ゴズさんは余計なことを考えるなと言うが、つい色々考えてしまう。来訪者特有の強制的な眠気に助けられている気がした。
翌朝は中層階に当たる第五階層にも潜った。トーイ隊の指導がメイン。わたしはエアちゃんと一緒に弱ったモンスターにトドメを刺す係。二時間の予定が思いの外手こずって時間が押した。ダンジョン内でトーイ隊と別れ、ゴズさんと二人で二時間かけて外に出る。ゴズさんは抜け道も教えてもらっていたらしい。帰りはすんなりと戻れた。
昼食は馬車の中で瓶詰めのおかずとパン。馬は昨日のうちにミルックのおじいさんが引き取りに来たらしい。第二ダンジョンから第三ダンジョンへの臨時便が用意されていた。それと共に第三でスタンピードの予兆有りという報告。途中で馬車の馬を変え、夜通し走るらしい。ゴズさんにはスタンピード発生の場合、討伐の指揮権が与えるというギルマスからの通達があった。
「わたし、行かない方がいいんじゃないですか?」
「あっちにゃ常駐のAランクのヤツがいる。お前のことはそいつに預けてスキルレベルを上げろってさ。ホレ。」
渡されたのはギルマスからの指令書だった。〝ショウコ・トガワの指導をマ・ジンに預け〟と書いてある。
マ?
魔王様。魔が苗字だったのか。
イショ・ビン(18)
一升瓶
酒は弱いし気も弱い
気配を読むも消すのも上手い
槍使いだが飛び道具も扱う
スキルは〝回避〟
来訪者オタク
エア・コンディ(18)
エアコン
スキルは〝探知〟
マイペース
冒険者の割にスキルレベルは然程高くない
冒険者になったのは幼馴染のトーイに探知スキルを買われて




