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ダンジョンは危険がいっぱいだけど、全部スルーしていきます  作者: 里和ささみ


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閑話 ジュンと愛

冒険者修行の合間。

 行って戻って結局三時間半ダンジョンに滞在した。宝箱の開け方などの指導もしてもらった。もっと下に行くとミミックがいるから気をつけろとのこと。それもレベル10以上ならスルー出来る可能性は高い。でも、レベル10以上で武器による攻撃は無効なのは検証で分かってるけど、モンスターのような一応生物に括られるものの直接攻撃が当たるかは未だ不明。


 案の定、帰りの馬車で爆睡。起こしても起きず、どうやらキョウちゃんが帰りついでに寮まで担いで連れて来てくれたらしい。礼を言わねば。


「どうだった?初ダンジョン。」


「特に問題ありません。スライムは倒しました。」


「新人は血が流れるとショック受ける子が多いんだけど、それは?」


「目を背けたくなるのが本音ですけど、人型モンスターでも何とか耐えられました。」


「そう。まあ、実際に他の冒険者の遺体とか目にするとダメだったりトラウマになったりってのはあるから。特に親しい人ね。兵士は訓練されてるけど、冒険者はそういうの無しになれるから、案外すぐ辞める子も多いのよ。一攫千金狙ってなりたがる子はたくさんいるけどね。」


「そうなんですね。」


「三年続けられれば大体一通りのことは経験するからダメなら他の職業を見つけりゃいいのよ。領司夫人とか。」


「三年以上続けられるように頑張ります。」


 寮母を兼任しているジュンさんはメンタルケアも仕事の内なんだろうか?既にワインをかっくらっているが。わたしが主菜を作るのを眺めつつ、作り置きのローストビーフを載せたサラダを急いで出してあげて、料理しながらおしゃべり。こういうの、ホントいつぶりだろ。ハナちゃんぶりか。いや、そうじゃなくて。


「バルト、そんなに嫌?」


「嫌ですね。」


「顔も好みじゃない?一応、国宝級の美形とか言われてるけど。」


「顔がいいのは認めます。中身が嫌です。粘着過ぎて。」


 最初のうちは小出しだったのに番と宣言してから遠慮しなくなった。ウザイ。


「そう。あの子には幸せになって欲しいんだけどね。ソヨウの親友としては。」


 血の色のワインをくるくると回しながら、昔を懐かしむように微笑んでいる。ソヨウさんのこと思い出してんのかな。


「はい、どうぞ。ピーマンの肉詰めです。」


「ん。美味しそう。」


 こんな庶民料理、元上流階級の方にお出しして良いものかと悩んだが、食べたくなったんだよ。許して。

 わたしが席に着くとワインをトポトポと注いでくれる。御相伴に預かります。


「ソヨウさんとは仲が良かったんですか?」


 親友というくらいだから良かったんだろうけど。


「そうね。女で唯一好きになった子だから。」


 え。ジュンさんって両刀なの。寮母なんてやってていいの。女で唯一って言ってるから大丈夫なのか?


「ソヨウは先祖返りでね。完全な竜化が出来た。人の姿の時はバルトと同じ青を差した白金のような髪をしていたけれど、竜化するとその色の鱗になるのよ。それがとても綺麗でねぇ。竜化したお披露目会があってお呼ばれしたんだけど、そこで一目惚れしたの。あの美しく、荘厳な竜の女神に。」


「竜の姿に、ですか?」


「そうよ。おかしい?」


「いえ、それは別に。」


 変わった趣味だなとは思ってしまったけど。


「まあ、別にね?結婚とか家庭とかとは元々程遠い生活してたし。アタシがお披露目会に呼ばれたのも、長寿であると推測されたソヨウと長く付き合える者ってことだったの。アタシはとっくに今のアタシだったし、男だけど女みたいなアタシと、女だけど男勝りなソヨウ。しっくりくる関係だったのよ。竜人が番に出会える確率はほんの数パーセント。何となくお互いにこのままずっと一緒にいるんだろうなって思ってた。あの頃はマ総統がこちらにいらしたばかりでね。まだ貴族制度があったから。横のつながりが深かったのよ。友人というより、姉と妹みたいな感じね。」


 ジュンさんとソヨウさんは魔王様がいた頃も生きてたんだ。わたしの前の来訪者が魔王様なんだよな。ここで年齢の話をぶっ込んではならない。なんとなく、歳の話がタブーなのはソヨウさんに関係してるのかなと感じた。


「国家体制の大改革で貴族制度が解体されて、国民総選挙でマ総統が選ばれたの。その時の式典でソヨウは竜化して空を飛んだのよ。生憎の曇り空だったけど、鱗がキラキラ輝いてまるで青空が飛んでるみたいで。本当に美しかったわ。」


 竜かぁ。モンスターにもワイバーンとかは存在してるけど、竜人の竜は中国の龍っぽいんだよね。来訪者なのに何故かモンスター図鑑に載ってたわ。それは赤い龍だったけど。人型の時の近影も。


「見てみたかったです、わたしも。」


「あの子もショウコの為なら竜化するかもよ?」


「そんな気遣いより他のことを気にして欲しいです。」


「ショウコらしいわ。あー、空きっ腹に飲んだから酔っちゃったわ。あともう一品、何か作って。汁物がいいわ。」


「シメですね。おまかせを。」


 魅惑の豚骨スープならぬオーク骨スープだよ。モンスターを食べることに抵抗感があったが、聞けば既に口にしていたので気にしないことにした。気にしたら負けだ。


「何これ。」


「オーク骨スープです。」


 スープに茹でたもやし入れて小葱散らしただけだけど。作り方を説明すると、そんなめんどくさいことをと言われた。しかし試行錯誤して手間暇かけただけはある。プロの味には及ばないけど。日本にいたら絶対にやらなかった。あの頃は時短にこだわってたから。

 時間かけて作っても、感謝もしないで口に合わなきゃ不平不満、お残し当たり前、そうでない時は味わいもせずあっという間に平らげ、感想のひとつもないあのクソバカ舌男のために使うやる気はとうに消え失せていた。

 その割に時短は手抜きとかほざきやがる。結婚した後の子ども産んだ後の職場復帰を見越して慣れておくって理由をつけてたけど、わたしの中ではとっくにあの男に期待するのを諦めてたんだな。今更気がついた。


「なんか物足りないわね。」


「麺を入れて食べるためのスープですから。」


「スパゲッティでいいの?」


「違いますけど出来なくはないですよ。今はその為の材料ないんで作れませんけど。」


「それじゃ、今度の休みにそれ作って。ランチで食べたいわ。」


「分かりました。」


 色んなものが足りてない豚骨スープ、じゃなく、オーク骨スープを飲むと、その足りてなさ加減がなんだか自分と同じ気がした。


 それは、ジュンさんも同じなのかもしれない。

ジュンさん

ソヨウのドラゴン姿に惚れる

初カレは人魚

歴代彼氏はみんな鱗を持つという鱗フェチ

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