実績を作ろう(4)
「まあ、ダンジョンモンスターのシャパリュは従来通り生殖機能はないはずだし、攻撃性があるから繁殖なんて出来ない。大丈夫といえば大丈夫なんだが。露見したらうるさい輩がたくさん湧いてくるだろうから、伝えるならバルトくんだけにしておきなさい。」
「分かりました。あ、佐山くんに相談するのはいいんでしょうか?」
「それは君が決めることだ。私の話は、そうした方が問題が少ないという方法を薦めているだけだからね。妻がシロちゃんと一緒に孫たちを連れ出してくれてて良かったよ。聞いたらクロちゃんの子どもが欲しいと言い出しかねないから。私もいたらうれしいけどね。」
クロシロの来訪を知ったお孫さんたちが、早く遊ばせろと言ってゴネたので、シロは今庭で子どもと遊んでいる。背に乗せて歩いている。落とさないように慎重に歩いているな。シロ、えらい。
「分かりました。スライム溜まりを見つけたらクロのお嫁さんを生み出せるよう善処します。」
「いやいやだからやめておきなさい。それこそ赤ん坊たちが実験動物にされてしまうからね?」
秒で否定されてしまった。
それは困る。だが、夢は捨てきれない。クロのオシッコはやっぱりマーキング目的だったんだろうか。特にお気に入りの木の根元とかにかけていたが。
「これは、シロちゃんの鑑定も心してかからないといけないなぁ。」
スキルのレベルアップ速度がわたしに準拠というのも原因が分からないが、早く上がるに越したことはないので、気にしないことにした。
交代で来たシロは、素早くソファに飛び乗って、カーテン氏の膝に頭を乗せた。うーん、新居建ててもメンテナンス大変だからあんまり大きな家具はいらないかなと思ってたけど、クロシロと並んで座れるソファはあってもいいかもしれない。
「シロちゃんは〝フェンリル〟のままだね。先にざっと最後まで見てみるか。ああ、備考欄がやはり多いな。……クロちゃんとほとんど同じだ。〝生殖可能〟も入っている。フェンリルはなぁ。違う方向からうるさい輩が増えそうだ。」
あちらの方向ですね、分かります。
「〝体長の変化自在〟はどうやら本当に自在に出来るようだ。シロちゃん。ちょっと大きくなれるかい?そうだな、そっちにおすわりして、大人のフェンリルになってごらん。」
「今まで大きくなるときは大体寝てましたけど、大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫なようだよ。シロちゃんの方は詳細が見られたから。なんでだろうな。単にクロちゃんの方は追記事項がなかっただけなのか?」
シロは空いたスペースにきちんと両脚をそろえておすわりして、また排便のときのように少し前屈みになり、全身を力ませた。
「わっ!」
「おお!」
ムクムクと大きくなったシロ。顔つきも変わって完全に成犬だ。フェンリルだからもっとデカいけど。
「こっちにおいで。触れるよ?……〝フェンリル〟は〝フェンリル〟なんだな、やはり。例の、フローズヴィトニルのときはどれくらい大きかったのかね?」
「体長は馬を入れて馬車一台分くらいでした。高さは馬車の車高程度です。」
4tトラックほどはないが、2tトラックよりは大きいという印象だった。どっちにしろトラックサイズならもう室内で飼うのは難しいが。
「なるほど。詳細にはね。体長が最大値になると称号を得るとあるんだ。〝フェンリル王〟という称号がね。これは称号であると同時に、スキルでもあるようだ。」
「スキル、ですか?」
「そう。フェンリルの群れを統率出来るらしい。ダンジョンでフェンリルと相対しても、味方になってくれるのではないかな。一度〝フェンリル王〟の状態で配下に収めたフェンリルは、身体を元に戻して……うーん、これはどっちが元なんだ?まあ、縮んだ状態でも、シロちゃんの命令に従うってことだね。そのフェンリルたちがトガワさんに危害を加えることはシロちゃんがいる限りないだろう。ただ、君の命令が通るわけではないみたいだよ。〝フェンリル王〟という称号に付随したスキルなんだな。」
「それはつまり、シロは〝フローズヴィトニル〟ということですか?」
「〝フローズヴィトニル〟というのは、人間が勝手に名付けた名前なんだろうね。おそらく、そういうことになるのではないかな。」
カーテン氏はメモに書き付けながら、シロに元にお戻りと言って、寄ってきたシロの背を撫でた。
佐山くんの言った、余分なものを排泄で排出説は間違っていたのか?ああ、でも、ダンジョンのエネルギーは不可視のものだから、身体に残っている可能性はあるとも言っていた。それを使って、身体を大きくしたり縮めたりしてるということなのか?
わたしごときが考えたところで分かるはずもない。彼らはそれぞれ唯一無二の存在なのだから、ありのままの二人をわたしが受け入れればいいだけだ。
マティコ先生のビアンカちゃんは、繁殖はムリなのか?やっぱりスライム溜まりを探すしかない?
「なにかおかしなこと企んでないかい?」
「いえ、なんでもありません。」
「くれぐれも、気をつけるんだよ。スライム溜まりを見つけても、すぐに立ち去ることだね。」
はっ。そういえば、わたしがスライム溜まりでぷるぷるを楽しみ過ぎると人型モンスターが誕生する可能性があると言われたんだった。
スライム溜まりを見つけても、我慢しなくては。いや、無心ならイケる……?
「ダメだからね?」
「はい。承知しております。」
シロの鑑定結果は、知能は人間の十二歳相当。シロよりは幼い。〝威圧〟65、〝攻撃力強化〟39、〝熱操作〟76。あと追加で〝飛翔〟。純粋なスキルは新しく生えてなかった。
〝攻撃力強化〟スキルだけ上がり方が悪いのは、最初から他者への付与があるのでレベルアップ条件が厳しいからとのこと。戦闘回数を増やすのと別に、他のパーティーと組んでスキル付与の経験を上げた方が良いらしい。
備考欄はクロと同じ条件と〝最大体長時はフェンリル王の称号を獲得〟。これは巨大化したときにフェンリルを配下に入れられ、尚且つ小さくなってからも維持出来るというもの。レベルが上がれば効果が拡大する可能性もあるとのことなので、今後も経過を見ることになった。分からないことだらけなので、ならないかもしれないけど。
〝生殖可能〟となった今、ウチの子たちのレア度が上がってしまった。勘違いした輩が、繁殖を命じてくる可能性があると言われた。
わたしに懐いてるだけでなく、他の者の命令も聞くのだから、戦力増強に軍隊に取られても仕方ない、と。
子どもはダンジョン産モンスターでないことを逆手に取って、難癖つけてテイムドモンスターとして登録させてもらえないかも、と。それに、クロシロの子どもが、絶対にわたしに懐くとも言えない。
そんなことはないと言い切りたいが、あの子たちがモンスターである時点で、存在そのものが未知数。テイマーでもないわたしに懐き、他の人間にも愛想がいいって、それこそがそもそも奇跡なんだから。
カーテン邸をお暇する前に、お孫さんたちにクロシロの最終形態を見たいとお願いされてしまった。そうは言ってもかなりデカいから怖いんじゃないかと思ってお断りするつもりが、シロだけ勝手に大きくなってしまった。
お願いしてきた割には〝フェンリル王〟になったシロにビビり散らかしていた。人間丸呑みできるサイズだからな。
子どもだから仕方ないけど、ビビられたのがシロも悲しかったのか、すぐに小さくなって、驚かせてごめんね?というように、クンクン言って彼らのご機嫌を取っていた。
うん。シロはやっぱり、まだ子犬みのある顔の方が性格に合っている。




