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ダンジョンは危険がいっぱいだけど、全部スルーしていきます  作者: 里和ささみ


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実績を作ろう(1)

 Sランクになった以上、さっさと就職してしまった方がいい。しかし、何故かそういう考えは周囲に理解されない。


 なぜなら。


「ギルドに就職する?物好きだなぁ。事務仕事とかあってメンドーじゃん。ミスして責任取りたくないし。」

「冒険者とはそれすなわち自由!机にかじりついて細かい文字だの数字に向き合ってるのは性に合わん!」

「やぁ〜、ムリ!契約書だって読み上げてもらわないと最後まで読む気力なかったもん!聞いてもわかんないし!」


 みんな、デスクワークが嫌ないしは自信がない、ということだった。ゴズさんもそうなんだけど。


 一般の教育レベルは日本の小学校に毛が生えた程度である。国語と歴史はよく学ばされ、歴史は国史と世界史の区別がない。特にグレップ崩壊の時代の話は時間をかけて行われ、旧グレップだった国々では、もう二度とあんな悲劇を生み出さないようにしようと、一度目の佐山くんが日本帰った日を平和の日と名付け、祈りを捧げるらしい。本人、人んちの猫に猫吸いしてますけど。


 学校は飛び級もないが落第はないので、ハナちゃんみたいに早弁と居眠りに命を賭けていたようなのでも卒業できてしまう。

 結局、平民は読み書きそろばんができりゃいいだろ?という昔の風潮のまま。富裕層を除く。


「というわけで、アタシもいまだに四苦八苦さ!」


「そうなんですね。」


 佐山くん曰く、異世界転生とか異世界転移の話だと簿記革命とか書式革命があったりするけど、その辺はすでに終わってるそうなので、数字というよりは堅苦しい文章の命令書や指示書を読み解いたり、レポート書いたりするのが忌避感の原因じゃないかと言っていた。レポートは私もムリ。


「アタシも初めの頃は、〝文書の形式がなってない!〟って本部から書類突っ返されたりしてな!支部内なら箇条書きでも事足りるんだけど、本部やお役人相手になるとね〜!語彙がないっていうか!」


 分かります。佐山くんがそういうやりとりしてる書類見たことあるけど意味が分かんなかった。バルトもああいうの書けるってことだよな。官僚ってすごい。かんたんなことも難しくする。


「サヤマがあっちこっち行って〝実現〟してくれたときの報告書は褒められたよ!書いたのサヤマだけど!」


「あのレベルは期待しないでくださいね?あの子あんなんですけど賢いので。」


「どうも〝伝説の来訪者〟のサヤマとあのサヤマが一致せん。本当にサヤマはユキヒト・サヤマなのか?」


「ホンモノですよ。〝実現〟使うじゃないですか。それより車内でスルメ食べるのやめてください。ニオイがすごいです。」


「そうか?いいニオイだろ?」


 食べてるそっちはいいんだろうけどさ。運転してるこっちの身にもなってよ。往復全部ひとりで運転しなきゃいけないんだから。


 そんなこんなで実績作りにギルド依頼をこなして貢献し、心象を良くしようということで、マッタさんと二人、クロシロを連れてシディーゴに向かっている。運転は全て私だ。マッタさんは今日は移動だけだから、朝から助手席で酒飲んでる。天気も良く、山の中で割と涼しいためずっと窓全開で走っているが、さすがにスルメはキツかった。赤ワインとスルメ、合うのか?


 マッタさんの都合で午後に出発したので、途中で一泊してシディーゴへ。さすがに今日は酒禁止にした。


 シディーゴは都市部だから本部に車停めるところがない。いや、なくはないが馬車の出入りが激しいので、あんまり停めたくない。よって、車はヨックバール邸に置かせてもらうことになった。

 到着は午後だがそのまま本部に行くつもりが、ゾーワ夫人に夕食に誘われて、わたしは残留。マッタさんはヨックバール邸の立派さに恐れ慄きながらも、キリッと取り繕った顔を作って、丁重にお断りしていた。どうせ味しないしなってつぶやいてたのはスルーした。


「クロちゃんシロちゃん、大きくなったわね!相変わらずのキレイな毛並みねぇ!うふふ、うっとりしちゃう!」


 ちょっと。ゾーワ夫人もなのか?コーワ夫人だけでなくゾーワ夫人もなのか?生きた毛皮にしないでくれよ?


「それで、バルトから聞いているのだけど、シロちゃんの……」


 ハイ、ウンチです。ダイヤモンドの原石持ってたって研磨技術などないのでわたしにはどうしようもない。しかも、まず母岩から掘り出すところから始めねばならない。


「とりあえず、洗浄と鑑定は全て済んでまして。ご相談に乗っていただきたくて。」


「結構な量があると聞いてるから、必要な分だけ残してあとは売ってしまったら?屋敷を建てるのでしょう?まあ、あの子なら出せる金額だとは思うけど、余裕があった方がいいわ。」


 確かに。それは思ってた。わたしにはその手のツテがないので、ゾーワ夫人を介してお願いするのだ。


「ちょっと興味あるのよ。少し見せてもらえる?」


 ええ、ええ。お見せいたしますよ。


 シロが領司館に引き取られてから出したブツを床に出した。かなりデカい。


「これは……随分な大きさね?」


 ひとつだけ。ひとつだけ、何がどうしてそうなったのか、オレンジくらいの大きさの原石がくっついているのがあった。温度調節がうまく行ったんだろうとのことだったが、デカ過ぎる。


「小さくしてしまうのももったいないわねぇ。」


「そうなんです。コッティラーノの官吏のバイキンさんからは、原石のコレクターもいるからオークションに出したらどうかと言われました。」


「わたくしもそれがいいと思うわ。フェンリルの作ったダイヤモンドなんて、どれくらいの付加価値がつくことやら。」


 バイキン氏も同じことを言っていたが、そこもお値段に加味されるのだろうか。ホントみんな気にしないんだな、この世界の人。シロのウンチだぞ?


 夕食はバルトの兄のガーメッツ一家も共にし、やっぱり言うと思った、コーワ夫人もシロダイヤモンドを見てみたいと言って全て出す羽目になり、鑑定スキルもないのにどういう目をしてるのか、ダイヤモンドを全て売った場合のおおよその金額を弾き出した。


「目に見えるところにある分だけよ?中、割ったわけじゃないでしょう?まだあるかもしれないし。」


 それにしたってどうすりゃいいんだという金額だよ。


 首都の一等地にあるヨックバール邸そのものを敷地全て含めて買い取って、使用人なども含めて三年維持できる金額なんて。

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