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ダンジョンは危険がいっぱいだけど、全部スルーしていきます  作者: 里和ささみ


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Sランクになろう(9)

「ここまで言われて何も言い返さないの。」


「私に足りてないところがあるのは事実ですので。」


「そうやって開き直る!本当はコッティラーノに来たのは、モーギュさんへの憧れではなく、コートさんの話の尻馬に乗っかっただけでしょう!?シディーゴにいたくなかったから!!!」


 ジンさんはクッと息をつめて下唇をかんだ。図星だったようだ。やっぱビショさんにはウソは通用しないんだな。他の人が相手ならきっとシレッと否定するだろうから。


 あと、さりげに流れ弾でコートさんがショックを受けている。十年以上ずっとゴズさんファンの同志だと思ってたんだもんな。ここにゴズさんがいなくてよかった。無駄に傷付けるとこだった。


 あとマッタさん。緊迫感から力が入ってるんだろうけど、肩、痛いです。


「ゴズさんは、尊敬できる人です。」


「それは本音のようね。」


「もちろんです。」


「ならば、尊敬する人のように、世のため人のために働けますね?」


 ハイと言おうとしたんだろうが、ジンさんの口から漏れたのは音もない空気だけだった。


「何も命を懸けろとは言ってません。出来ることをしろと言っているのです。分かりますね?」


「はい……」


 声ちっさ!元からデカい声で話す人ではないが、それにしたってちっさ!


「Sランクへの昇格、受けますね?」


「はい……」


 数秒じっと目の合わないジンさんを見つめると、ビショさんはふうと息を吐いて一瞬だけまぶたを伏せて、マッタさんを見た。


「だそうです。これでよろしいかしら?」


「あっ、はっ、はい!大変よろしいです!」


 こうしてビショさん劇場第二幕も幕を閉じ、ジンさんはSランクへと昇格することになった。


 ん?あれ?なんかマズイ気がする。


「これであとはショウコがウンと頷くだけになったな!」


「だから肩痛いですってばマッタさん!!!」


 コートさんの主張は全面的に受け入れられ、何故かわたしがSランク昇格を引き受ける流れになってしまった。


 なんでだよ!!!


 その後。トーラ隊の男子チームはビショさんのことを畏怖するようになった。カール以外。ビショさんは「熱くなりすぎたわね。悪いクセだわ。」と反省していた。いや、だって、あの二人問答無用で黙らせたらそりゃビビるよ。カールは特にジンさんへの憧れはないのか、「カッコよかったぜ、ビショ!」と褒め称えていた。なんなんだ、アイツ。


 いそいそとSランク昇格のための書類を用意しているマッタさんに、ちょっと待ったをかける。朗報悲報どちらもある。


「すみません、実は……」


 まず、わたしのレベルが大幅に上がって71に到達したことを報告した。オールスルー状態でのこちらからの一方的な物理干渉可能はマッタさんも大喜びだった。


 それと、シロが小さくなってワーグサイズに戻ってしまったこと。フローズヴィトニル(仮)のときは成犬の顔立ちをしてたが、今は子犬っぽさがまた出ている。最初の鑑定の時点でフェンリルだったんだし、フェンリルはフェンリルなんだろうから、フェンリルの幼体で、成長途中ってことなんだろうけど。


「鑑定してもらわないといけなくって。わたしのSランクって、あくまでシロがフローズヴィトニルであることが前提になってません?」


「査定ではゴズはそう書いていたが、ただのフェンリルであってもSランク昇格はできるだろう。シロだけでなくクロもいるんだし、スキルレベルが上がって一方的な虐殺も可能になったからな。」


 一方的な虐殺って言い方、どうなのよ。


 まあ、まだあるんだ。あの子たちに関する報告は。次の話にいってしまおう。


「あ、あと、あの子たち、飛べるようになりました。」


「はあ?」


「ああ、もしかして、バルトの〝飛翔〟スキルの付与?第一の戦闘の時にも使ってたじゃないか」


「いえ、佐山くんのスキルです。」


 跳躍じゃなくて、飛翔。〝飛翔〟は、この世界で子どもが憧れるスキルのうちのひとつらしい。気持ちは分かるが、実際飛ぶと結構大変だ。


 コートさんが言うバルトの〝飛翔〟スキルは付与しても二時間で効果が切れてしまう。まあ、それに味をしめたというか、バルトがいなくても飛べるようになれば便利なのでは?という佐山くんの意見をバルトが取り入れて、わたしが寝てる間に勝手に佐山くんのスキルでで飛翔スキルのように自在に飛べるよう〝実現〟したんだと。

 十日も寝てるわたしも悪いが、せめて飼い主に一言聞いて許可取ってからにしろよ。まあ、役に立つものだからさすがに文句は言わなかったけど。


 シロは空を飛ぶのが楽しくて仕方ないらしくて、暇さえあれば空を飛び回ってるらしい。ウチの犬は喜び空駆け回るってどうなってんの。


「なら、なおさらSランクは余裕でクリアだな。」


「それはそうなんですけど。」


 勢いでなって後悔しないだろうか。とりあえずまずは所属冒険者のSランカーとしていくつかの依頼をこなして実績を作ってから就職の方が好条件引き出せるらしくて、仕方なく引き受けることにした。

 というか、マッタさんが少ないコネでトーラ隊の移籍を超特急で成立させた条件として、わたしのシディーゴとカッシーコへの出張が組み込まれていた。


 わたしの昇格は既定路線だった。


 トーラ隊が若干よそよそしくなるというデメリットはあったけども、とりあえず話は丸く治ったんじゃないだろうか。ウーフー派は旧態依然な人が多くて、若者や女性冒険者へのモラハラパワハラセクハラもあるらしい。確かにシディーゴ第一でくっついてきた政治家の人たちはそんな節があった。


 コートさんとジンさんは自身のスキルの関係でビショさんとともに訓練をしていたとみんなに説明した。あー、うん。訓練してたんじゃなくて、訓練受けてたんだな、ビショさんから。師匠なわけだ。


 ギルド証はパッと見ても名前くらいしか書かれてない。一般市民の持ってる通行証もそうだ。個人情報保護の観点なの?専用の機械に通さなければ詳細は見られない。機械というか、マジックバッグと同じで魔法の使える来訪者が作った魔道具なんだが。だから、ビショさんの実年齢は公表されずに終わった。

 マッタさんはニコニコしながらコートさんの書き換え作業を眺めてたけど、浮かれてて多分画面をちゃんと見てないから気付いてない。ビショさんが自分と同年代か、少し上だなんて。


 世界の平穏はそうして保たれているんだな。


 ていうか、ビショさんって、実はSランク相当の実力者なんじゃないの?ジンさんはコートさんにお前が呼んだのかとか言ってたし、ジュンさんだって弟の子孫とはいえ見どころのない人物を記憶しているような人じゃない。


 ビショさん。底が見えなくて恐いわぁ。


 やっと解放されて、ハカじいさんのところに行けたのはお昼近くになってからだった。文句はわたしに言わないでマッタさんに言ってくれ。

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