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プロローグ

趣きの違うものを書いてみたくて、メンテナンスの合間の暇つぶしに書いてみました。

ストックがない状態なので不定期更新の予定です。よろしくお付き合いくださいませ。


追記

すみません、祥子さんの年齢に齟齬があったのでこの回での年齢を引き上げました。混乱した方がいらしたら申し訳ありません。

「ボットンンーーーーッッッ!!!」


「スイセン!逃げろ!オレは置いていけ!」


「イヤ!イヤよ!このダンジョンをクリアしたら結婚しようって言ってくれたじゃない!!」


「ゴメン、スイセン!オレのことは忘れて、幸せになって……!ぐあッ!!」


「いやぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!ボットォォォーーーーーン!!!!!」


 今日も今日とてダンジョンにもぐるわたし、戸川祥子、三十二歳。日本生まれ、日本育ち、異世界在住。


「きゃあッ!」


「スイセン!クッソォ!お前だけは!お前だけは、絶対に、助けるッ!」


 ダンジョンではこのような輩をよく見かける。今回はカップルでもぐっているチームのようだ。だが、彼らはわたしには気付かず、襲い来るモンスターと対峙するのに精一杯。まあ、この辺でこんな目に遭っているのだから大した実力もないのだろう。

 わたしは戦闘能力皆無なので、このような場面に遭遇しても通り過ぎるのみ。最初の頃は己の無力さに打ちひしがれることもあったが、今では平然とスルー出来るようになった。随分とこの世界に馴染んだものだ。


「あ、あったあった。」


 ダンジョンにはモンスター以外に宝物やアイテムをドロップする。「ダンジョンは生き物だ」とわたしにこの世界の常識を教えてくれた人は言っていた。

 宝箱から宝物を取り出す。持ちきれないほどの金貨だった。大したことないな。運が良ければ高層階でもそれなりにレアなアイテムを手に入れられる。こんなモンでも生活の足しにはなる。わたしは無限に物がしまえるというマジックバッグに金貨をしまった。

 今いるここは中層階なので、レアではないがそれなりに需要があるアイテムが出ることが多いのだが……。


「もうちょい下に行くか。」


 期待したほどの収穫がなかったので低層階を目指すことにした。ダンジョンはモンスターだのトラップだのがあるのが普通だが、わたしには余り意味がない。ただひたすら、地下へと続く道を進む。分かれ道には印をつけて同じ道は行かないようにする。この世界のダンジョンは地図など意味がない。ダンジョンは生き物である。成長するし、度々構造が変化する。


 この世界に転移して数年。わたしはダンジョン専門のトレジャーハンターとして生計を立てていた。


「今日はシケてんな。」


 低層階でもアイテムは手に入れられなかった。その代わり、白金貨の宝箱があったのでまだマシだろう。


 さっきのカップルがいた中層階まで戻ってくると、ダンジョンは食事を終えていた。ダンジョンは屍肉を喰う。生きた肉は喰わない。

 屍肉になった途端、あっという間に消化されダンジョンの栄養になる。


「ご愁傷様。南無三。」


 わたしは抜け殻になった衣服へ向かって手を合わせ、持ち物を探る。ダンジョンが喰わない金属で作られたギルド証だ。装備に使われる金属類は吸収されてしまうが、植物性の布やこのギルド証は吸収されずに残る。

 ダンジョンの被害者を見つけた者はギルド証を回収しなければならない義務がある。遺族へ知らせなければならない。


 もう何枚目かも分からないギルド証をポケットの中にしまって、わたしは帰路についた。


 クソみたいな家族。クソみたいな仕事。クソみたいな恋人。クソみたいな人生。


 全てのしがらみを捨てて、わたしはこの世界へやって来た。


 それなりに、充実している。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「宝箱から宝物を取り出す。持ちきれないほどの金貨だった。大したことないな。」 持ちきれないほどの金貨を大したことがないと考える主人公。どれだけ物価が高いのかと想像した。
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