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父親は左脚の膝から下を失った画家石像をお姫様抱っこの格好で運び、女神石像の元へと向かった。


石の住民たちは近付いて来た父親に対し心配他所に敵対行為は取らず、女神石像の周囲に集まっていた石像たちは各々背を見せそのままさーーっと街の石アーチの門の方へと戻って行った。


「え……どゆこと……?」


女神石像は石の笑顔でこちらを見て指を弾ませながら何度も街の方を指差している。

ぴょんぴょんと可愛らしげに飛び跳ね、トベはい様子の翼が揺らぐ。


「ついて来いということか? それより一仕事終えて勝手に帰っていった感じがしたが……」


「ま……いいかラヴあスプレイヤーとして街に入らせてもらおう。行こう女神石像」


女神石像はうんうんと普段より一層元気良く頷いている。


そして石の街を目指し歩き出した父親の背にぴったりと付いて行った。




「ちょい待て、俺なんでこいつずっと抱えてんの」


父親はおもむろに首を下にさげ抱きかかえているさっきまで赤の他人のヤツの顔を見てみると。


お姫様抱っこされた画家石像はこちらの顔を見返して、石の歯を見せながらなぞのグッジョブのジェスチャーを送った。

無駄に眩しい画家スマイルに……。


「……ハハ、まいっか。にしてもお前のお仲間さんのオンオフの切り替え早すぎだろ」


画家石像と談笑しつつ豪華なアーチをくぐり石の街の中へと一歩一歩味わうように踏み出していった父親パーティー。


「これが石の街……」


ほどほどの密度で石造や木造の建物の数々が門からつづく石畳の大通りを中心として横に沿い並び立っている。

素人が計画なしに急遽建てた街づくりゲームのように、バラエティー豊かな建物が規則なくごちゃごちゃとしているようだ。

それもまたコイツらがやったのかと妄想の余地のある味に感じる。


「一応文明だよな」


はじめての街の中をよーく見渡しながら大通りをコツコツと歩いていく父親パーティー。

特に他所者を気にするような視線もなく、そこにゲーム味を感じる。


「さっきの連中、何事もなかったように家に帰っていくんだな……」


先程見かけた石像住民軍が各々の家らしき建物の中へ帰っていく背が見えた。

ほんとうにここで生活しているようだ。


そんな石像たちの後ろ姿を眺めていると。


突然、お姫様抱っこしていた画家石像がとんとんとその硬い手で父親の胸を軽く叩いた。

そしてその石の人差し指で指し示している。


ドアや前の壁がガバッと切り取られたように、ない開放的な空間。そこにはキャンバスらしきものがたくさん立てかけられていた。


そこは、この画家石像の他より独創的なアトリエであった。


ここがこいつの家か……画家? たしかにそれっぽいベレー帽だが。画家がなんで戦場に来てんだよ、駆り出されるところ想像したらシュールだなぁ。ヘンな事してないでちゃんとエロいゲームをしろエロいゲーム。


父親は指し示されたアトリエへとはいはいと頷き向かい、その中に置かれてあったオシャレな丸い木の椅子の上に抱えていた画家石像をゆっくりと配置してあげた。


「こいつは一旦置いといてと……」


たしかターバン石像商人だっけ……。

そいつを探さないとな。

石の街か城、たぶんいるよな?

居てくれた方がラクで済むから居てくれ。


「んじゃあそういうことで画家石像さん……回復アイテムかヒーラー見つけたらその脚弁償しにもどってぇ……来るぜ!」


半笑いで告げてその場を離れようとした父親パーティーに、


バイバイそしてグッジョブのジェスチャーでこちらを見送った画家石像がいた。


「ハハ……脚ないのに元気だなあ」


「さて、待たせたな女神石像。ペンギンステッカーもそうだがターバン巻いた石像探すぞお! ターバン分かるか?」


父親は頭の周りを、ぐるぐると右手を回し訳の分からないジェスチャーをぐるぐると披露。


女神石像は、さぁ? 両手を横に挙げ首を傾げている。

純粋な女神がターバンを知るはずはない。


「だよなー。何聞いてるんだろ俺。ま、立ち止まっても仕方ない、行こうぜ」


元気よく頷き父親の背に付いて行く、

2人だけのパーティーは石畳の大通りに戻りまたコツコツと探し物をするように未だ新鮮な街に目を輝かせ見渡しながら歩き続けて行った。



様々な格好をした石像住民とすれ違う大通りを歩き続けて行くと、


幸運にも目的の石像はすぐに見つかった。


父親はその白いトレードマークの元へと小走りでルンルンと駆けつけ、


「明らかに絶対こいつだよな、よし!」


腕を組みその場で固まるように店前に突っ立っていた──白いターバンを頭に巻いた石像に近寄り。

プレイヤーを見つけギョロリ石のイカツイ目で追い反応。


「通じますかね……」


左の甲を見せピースサイン、さらにそこに右の人差し指をかっちりと合わせ、


父親は∀のサインを作った。


そしてそれを見たターバンを巻いた石像も頷き同様のサインを作り。




82,510,000∀


グレープグレープ天然水×99 20,000∀

パイナップルパイナップル天然水×20 20,000∀

石×99 100,000∀

教会×1 55,000,000∀

ターバン×1 1,000,000∀




ターバン石像商人の作ったサインの三角から発された緑の光が宙にミドリのホログラムを作り、店の商品をスベテ提示した。


「…………メシ」


「メシステッカーがないだと……残念過ぎるが……」


そのネガティブな言動が耳に入ったのか少しむっとした表情をしている気がするターバン石像商人。


「あ、失礼……」


ゲームじゃないんだ独り言も気をつけないとな……。

いやゲームだ。エロいゲームめ、余計な機能を。やけに細かいぜ。


「ところで……」


この教会ってまさか……。


家じゃないよな……ハハ。


「ここは……」


所持金を確認し、脳の内でパパッと計算をし、

父親は再び∀のサインを作り直しターバン石像商人に見せつけた。



「バイフル!!」



威勢のいい掛け声だ、ターバン石像商人は両拳を挙げ満面の石の笑みを見せた。

女神石像もなぜかターバン石像商人の真似をし、元気な顔で翼をはためかせ跳ねている。



8,610,000∀



売られていた商品を購入しターバン石像商人の元を後にした父親と女神石像。


「良い買い物だったな……!」


父親はグピキャンにいくらあってもいいグレープグレープ天然水を所持上限の99個まで補充しその他の商品は全て空にし、結局大人買いをしてしまった。


しかしこれだけの荷、どこにしまうのかって気になるけど……。ゲームだからな! 電子化かなんやら、それか実家にでも送りつけているんだろう、ハハ。


それより買ってしまった例の教会だが……。覗くのが怖いな……。

今はやめておこう……。

ノリでイッてしまった節がある。本来のゲームに存在しなかった珍しいものを見かけると目を輝かせ欲しくなるのがゲーマーの(さが)ってやつだ。


さて、メシはなかったが……運良く売られていたパイナップルパイナップル天然水を画家石像くんに飲ませて弁償ヒールしてあげるか。

ぶっちゃけると、売ってなかったら見捨ててたな。ゲーム脳って怖いな!


「ハハハハ」


パイナップルパイナップル天然水を手に入れた良心のあった父親と女神石像は、帰りの街路を進み画家石像の待つアトリエへと向かった。




開放的な画家石像のアトリエへと再びやって来た父親と女神石像のふたり。

画家石像は何やらキャンバスに向かい筆を手に取り絵を熱心に描いている。

その様、様になっている、欠けた脚で筆を取るのもイカしているように見えた。


「おーい、画家石像くん」


筆を止め、こちらに気付き丸い椅子に座っていた体を父親の方へと向けた画家石像。

何かいと言いたげな表情であり、怒ってはいないようだ。

心に余裕のある芸術家は素晴らしい。


「創作活動中に悪いが、これ、飲んでくれ」


父親は画家石像にパイナップルパイナップル天然水を手渡した。

それをすんなりと受け取った彼は疑いもせずに、ぐぴっと天を向き飲み干した。


すると。


画家石像の左脚はどこから生えてきたのだろうか、黄色いエフェクトに包まれ失った部位を取り戻し本来の石像の形へと戻っていた。


彼なりの感謝の表れか、また石の笑みでグッジョブのジェスチャーを父親に送った。


完全体になった画家石像がそこにいる。

感謝されるのは喜ばしいことだな。


「ハハハ、お使いクエスト達成ってな。エロいゲームの」


「ちなみに何を描いて…………」


気になる出来上がり、

キャンバスに描かれていたのは、


片脚を失ったベレー帽を被った石像を両腕に抱きかかえ運ぶひとりの渋い男であった。

凛々しい顔で石像達の戦場を歩き進む!


「いやいや何つい先程を書いてんだ!! これはラヴじゃないよな!!」


目を見開き慌てた表情をした渋い男に隣に座るベレー帽を被った石像から、本当になぞのグッジョブのジェスチャーが送られた。

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