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5202階、ホーム神殿。


美玲たち6人がミジュクセカイの塔を上り始めたという知らせが来た。

それから破竹の勢いで攻略を進めていったらしいことがこのクシャついた一枚の紙アイテムに簡潔に書かれている。


それを読んで少しワラっては、ぶわり、電子の荷へと仕舞った。


なんともまぁ俺の予想をはるかに超えてラヴあスの主人公のいる物語が始まってしまったんだ。

苦難もあった気がするがここからは主人公不在じゃないぜ、俺はプレイヤーだが主人公じゃない。

だが父親だ。借り物の父親の体の……。

俺はこんなこの世界で浮いた曖昧な存在なのかもしれねぇ……だがまだまだしばし借りるぞこのカラダッどこぞにいるか? 見ているなら返事してみせろよ? ハハ可黒美玲の父親よっ。

居ないならいないって言ってくれればそれが親切ってやつだぜハハ、まぁ借りるぞ!

てか借りパチまであるからな? ハハハハ。

──よし、最高に楽しんでやるぞラヴあス2完全版を!!!



コツコツと履きなれた革靴で地下室から階段を上がっていく。


聖なる光差し込む礼拝堂で待っているパーティーメンバーがいる、


このところはやけに祈る回数の増えた美しい女神の石像と、

同じように借りた月無に祈り手に入れたチカラを再確認していく黒髪の若者と、

白髪の女は紫宝石のあしらわれた薙刀の感触を確かめる黒紫の鎧に似合ったソレを──


スーツをバッチリ着こなすリーダーのご登場に気付いた桔梗はフッと笑い話しかけた。


「やはり今日は予定通り進むのかエンジ」


「あぁ。待っている間にも美玲たちはガンガン成長しているみたいだしアイツの父親がこんなところでふんぞり返ってちゃきっと笑われちまう。それに俺の知る限りでも美玲の強さはデタラメだしな乗り越えた今のアイツならそれ以上も……もはや計算不可! ってことでだ。いくら天才武芸者の桔梗さんでもサボってたらすぐ俺の息子に追い抜かれるぞ」


「ふっハハハハ。そうかそれは一層手合わせするときが今から楽しみだ、ミレー」


薙刀をぶんぶんと頭上に回して前にピタリと止めた。切っ先がワラっている。


って俺自身が美玲にあっさり抜かれないかが一番心配なんだけどな。

どうやら……仲間であれどこのゲームの化物キャラ2人に追われ挟まれた今なら分かる、こっから先必要な事、それは俺自身も追いつかれないよう純然たる、いやツギハギでもいいラヴあスの化物になることだ。


「エンジさん私はいつでも行けます! もうシンザだって! 技だってあります!」


ハッキリと伝わるその黒目からもう怯えではないたしかに熱い少女の自信のほどが、


初々しいというかなんだろうな一皮剥けてもやっぱりさ、ふっ、やっぱりこのキャラが。いや今ここに居る令月かほりが俺は好きだ。

好きといえばラヴが溶けるほどあなたがスキよとは言うけど、このタイトルって……まじで適当だよなハハハ。詐欺じみた悪意塗れの青春日常編を守るためにもはやバトルがある。

手段があるだけマシか、果たしていろいろ溶かさずに守り切れるかオレ? ハハ。


「そうだな、令月あれだけ皆と修行したんだ。頑張った成果ってヤツ……まちょっとは期待してるぜ?」


「え、ちょっと!?」


「過大評価して突っ走られたら困るだろ? 意外にアツイ、そういうとこあるからな俺の知る令月かほりは」


「わたしもそれは思ったな、むしろしつこいまでありそうだ?」


「ええ!? ちょ……っと」


アツイ雰囲気は和やかに砕けて────そんな雑言のナカでも祈りささげる白い女神が起きた。


「おっと、女神石像も協力してくれるか」


柔らかな陽射しを浴びながら、広げていた白翼をゆっくりと仕舞いうんと頷いた。


少し以前より落ち着いた雰囲気になった気がする。そりゃ水神(善)さまだからな、謎に謎を呼ぶ女神の事だけどなにやら記憶を取り戻しきつつあるならこの女神ルートも今のところなかなか悪くないよな。

ニシ亡とサハラは知っているのだろうか?

女神、父親のパーティーになるってよ! ハハ。


「思ったのだがエンジその女神石像というのはひとりの女に対してどうなのかと……」


桔梗がほんの少し顔をしかめながらその呼び名の事を気にした。


思わず父親は思いがけないことを聞かれ口を半開き。

ソレを気にされてもたしかにおかしくはないかと、だが。


「え、あぁあー。それはだな、もう今更変えられないしなっ女神石像この名でここまで5202階! 2人でパーティー組んで来たんだもんなッ!」


瞳を輝かせ、ぐっと決めた左のガッツポーズは────


それを受けた女神石像がしずかに首を横に振ってぱーっと散った。


「ええええ!? だって散々名前拒否ってたろ!」


未だ振っている、二度三度四度、往復────目をつむり両手までやれやれと掲げだした。


握られていたガッツポーズは遠に砕け、ぱーっと両手を広げ石像の彼女への抗議を展開。

そのパーティーリーダーの様は────


「エンジ……おまえは……あの時のわたしの感動を……」

「エンジさん……そういうところ……」


パーティーメンバー女子からの視線が痛い。対峙する女神石像からも痛い。

何故かそのタイミングですいーっとやってきた石の板。

どうぶつは人間の気持ちがわかるというその衝立に隠れたいものだった……。





この礼拝堂のホームからの出立の前にやらなきゃいけない事がある。

それは神聖なる名付けの儀式。

散々提案悪戦苦闘────ものの始めは凝ったものや俺の中のお気に入りや他のエロいゲームキャラの名を解放していきブンブンと首を横振りされるほどに俺の脳内コンピューターはショート寸前まで追い込まれていった。


しかしそういう時ほど原点、シンプルな方へと立ち返るというもの。

簡略化センスの凝縮化に成功、生産効率は上がり美しき難敵に対し怒涛のワードセンスの攻めを魅せる。

そして結果的に────


首を縦に振り頷いた名がある。


【エンジェ】



【エンジェ】でオーケーが出たが俺の名エンジと似すぎているので【ジェル】となった。

ギリギリ考え込んで、あの顎にうーんとかわいく手を当てるかわいくない動作で……汗水垂らし良い返答を待つ俺の表情を見てオーケーにしてくれた……ようだ。


ちなみに水神はお気に召さなかったようだ。まぁジェル。すこし硬いが女神石像よりは硬くないし言いやすいし。ナニヨリ水っぽいよな! 我ながらいい名前付けたぜ!



「てことでもういい加減よろしくな! クビを横に振るのもおつかれさん、女神石像あらためジェルっ!!!」


礼拝堂にはっきりと響き渡るその名ジェル。厳かなる場で聖なる名付けの儀式もいよいよクライマックス。

イシの両耳にいつまでもノコるその声に──

女神はにっこり、くすりと笑い、黒スーツの男に祈りうなずいた。

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