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59❺

父親がサムに向けて手紙を出したその夜から1日が明けて、ミジュクセカイの塔5202階。


▼血の疾る地とあかい曇天と宮殿▼



うす赤い曇天と赤の草原、薄気味の悪いステージにも慣れホームから出ての修行が行われていた。


「はあああ」


ぶつかり合う白蜜と月無。静寂のフィールドに響いたカーンと美しい金属音。

髪をまとめた両者。ポニーテールの黒髪と白髪が風に散り揺れ。


「気迫は十分! 振り払うぞ!」


チカラの差で振り払われた月無に合わせて弾かれた身の大きくずり下がる右足、赤い草に踏ん張りを効かせ。

迫り来るターゲットから目線は逸らさない月無の剣線をしっかり見極め白蜜で受け止めた。


「令月修行編が開始されたみたいだな」


遠目に2人を眺めていた父親は両手に持った黒い薙刀を構え振るった。


「【爆炎斬】!!」


叫び虚空を斬り裂いた黒い鉄の刀身。


「……修行が足りないようだな……いや、ゲームシステム……」


ばちんっ。


木のトンボを構え上段から叩きつけた女神石像。


「ハハ、お前も修行か女神石像。女神モードに覚醒できそうか?」


白い彼女は唇を少し尖らせ首をぶんぶんと振り答えた。


「だよなぁ、ハハ。……でもっ、ゲームにおける修行編ってのは馬鹿にはできない。ラヴあスにもそれを期待したいぜ爆王斬!!」

 

再び斬り裂いた虚空。ゲームのセカイ、ニヤリ口角を上げ修行に励む男がそこにいた。







「すみません私のせいで」


「いや、仕方ないこんなところにいきなり来てしまったんだ」


修行も一区切り終わり父親の元へと白蜜を返しに来た令月。

父親はそれを受け取り。

彼女はヘアゴムを外して汗を右の甲で拭った。


「……あの、なにか?」


「いや、なんでもない……」


「……? あ」


おくれて何かに気付いた令月かほりは少しうつむき合わせていた目を逸らした。


令月かほり……破壊力がやばいな……エロいゲームをやっていたデメリットがここにきてきたかッ……サムにはなぜか理性を保てたが。ちゃらけていたのが良かったのか……? そういえばここは……思い出した、エロいゲームの舞台上だったな……気をつけよう!


どことなく気まずい変な空気になり。ゆっくりと黒紫色の鎧が近付いて来て、話しかけた。


「この修行の目的は神座と言ったな、私の場合は月無があるが。……本来人間はそれが武器がなくとも出来たはずだ」


「え、そうなのか!?」


突如、突きつけられた情報にさっきまでの空気はどこへやら男は非常に驚き白髪の方へと食いついた。


「あぁ、私は自慢じゃないが剣を習っていた師範に天の才と呼ばれていた。炎神の子孫たちには遠く及ばないが他にも私のようなチカラを使える者たちはいたその者たちの事を本来、鬼狩りと呼んでいた、だがオマエとかほりの話によるとココではそうではないみたいだな」


「鬼狩り……神座を使えた……まじか」


俺のラヴあス裏設定的予想ではてっきり神座はマリカスが作り出したモノだと思っていたんだが……。鬼狂ちゃんの話を聞いたところ……イヤ、順序が逆だったのか? 大昔からあってそれを──。


「人は思い出せるはずだ、対峙してみて分かったかほりには立派な戦士の才とウツワがある」


「え、私が……才と器……?」


令月かほりはそのワードに引っかかり、驚き少し不安気な顔を浮かべた。


「そうだな令月はなんでも器用にこなせそうだ、このまま修行を続ければ何かに目覚めるかもな、ハハ」


「いやそんな、私なんて……」


「いやイケるって、見てろよ」


少し彼女から離れ、受け取った白蜜を抜刀し。


宙を彩った10の紅い剣線。


2つのアカい星が一瞬浮かび上がり、失せていった。


「この世界は思ったよりも自由だ」


ぱっと消えたその星をただただ見つめていた令月かほり。そしてその男の少年のような笑みが黒く綺麗な瞳に映り。


「あ、疲れたろ、ティータイムにしようぜ。何故かお茶だけは腐るほどあるからな」


「ふ……はい!」


一瞬止まっていたじかんが彼のおどけた発言で動き出した。




「何を言っているお前もだ炎神の息子」


「……俺も!? え、なにが?」


「修行だ、茶会とやらは男がやるものではない」


薄い笑みを浮かべ、右の月無は挑発するよう遠くから男を突き刺し指名した。




なんだこのイベントは……待て、魔青斬をゲットできたなら……父親に死角がなくなるぞ!







父親と鬼狂、2人の修行が既に始まっていた。


「爆炎斬!」


「さすがの炎だっ」


炎の刃にあわせぶつかり合ったのは、青い刃。青いオーラを纏った技であった。


「学ばせてもらった、それは便利そうだ」


「学ばせ……ってもしかして修行ってのは」


「あぁ、騙すようですまない何故か私は色々と忘れているようだ」

「現代流の戦い方を学ばせてもらうぞ炎神の子孫!」


それ予期せぬ動作のただのバグじゃ……。なんて言ったらって言えるかよ。無意味にメタいのは極力なしと心に決めている。


「……学びたいのはこっちだけどな!」







「爆王斬!!」


青王斬(せいおうざん)!!」


白蜜と月無が合わさり発生した2つの球、青を紅が呑み込んだ。

爆王斬に打ち負けた鬼狂の編み出した技、青王斬。

爆炎に呑まれ片膝をついた鬼狂が父親の目に入った。


「大丈夫か!」


「大丈夫だ」


「これは荒々しい凄まじい技だ……やはりこの炎には及ばないな」


「及ばないってことは……いくら天の才とはいえ真似ただけならまだまだ完成度が足りてないんじゃないか?」


「…………確かにそうだな……ふっ、もしかして慰めてくれたのか?」


「いやまぁハハ、いくら天の才の剣士でもッ! 俺もそこまで弱くないから気にするな! 天才じゃなくても俺の炎神の血統ってヤツは少しズルいらしいからな」


「ズルい、か……? 炎神の子孫でそんな風なことを言うやつは初めてだな……ふふ」


浮かべた不思議そうな表情から彼女は笑ってみせた。


強がってはみたものの……技を一瞬でコピーするとか、マジモンの天の才か? 恐ろしいな……。味方で良かったぜ……って敵だったんだよな、ハハ……。


「ついつい熱が入ってしまったようだ……少し休ませてもらおう」


「そうだな! 令月からぶっ通しだろ、休めやすめ休もうぜ!」


充実の修行を終え、電子の荷に刀は仕舞われた。鬼狂は釣られて微笑み、技と戦い方の話をしながら肩を並べ令月と女神たちの茶会へと向かった。







茶会は戦闘関連の話ばかりが続いた、戦士として仲間としてこのミジュクセカイの塔で戦っていく、そんな5人の繋がりが少し強まったようだ。


▼礼拝堂地下▼



各々は修行を終えて疲れた身を休める、地下室には2人まだ話し合っていた。


「そういえば、お前の修行がまだだったな炎神の子孫」


「あ、あぁ? え、さっき?」


それは突然、ベッドへと押し倒された。


「これが修行だ」


「えっとハハ……まじ?」







「……そういえば私の名前を知らないか」

「何か知っていそうだが、言いかけていたな」


「ふぅ……怒らないか?」


「なぜそうなる?」


「えっと……いや、確認だ気に入らなかったら斬り捨てられるかもしれないだろ」


「……ふ、だからなぜそうなる。ふふ、分かったどんな珍妙、妖まやかしでも決して怒らぬと誓おう」


向かい合い冗談まじりな話をする、繋がったままの2人。意を決し何かを発するそんな彼の顔を期待微笑みながら見守る彼女。



「……鬼狂……」



その瞬間、耳に突き抜けたその声。パッと見開かれた綺麗に澄んだ青い目。



「ききょう……!」


「桔梗か……!」


「そうだ桔梗っ私の好きな花だ! そうだッ、それが私の名か!」


「そ、そうだな!」



向かい合ってぶつかっていた視線、名を知り屈託のない喜びの顔をした彼女につよく引き込まれキスされた。


唇と唇は離れ、もう一度見えた彼女の笑顔がなんとも素敵であった。




「さっきの身体に纏う技のようなチカラを技なしで流してみろ」


「俺のウツワ、俺の中のエンジン、ハラとハラワタをあたためるようにか……」


身炎浄化乃武を使わずに……。それっぽい悟りを……無から有、いや悟りなんてそもそも現実世界からゲームの世界おかしい事がたくさん起こっている。俺の、もとは父親の……身体、ウツワにもおかしな事が────。


青と繋がり、赤が流れた。


「ふふ」


「リミットメルト? ちがうかなんだこれ」


「それが神座だ」


「これが!?」


身体に歪、なんとか纏わりつくように流れる赤いオーラ、リミットメルト身炎浄化乃武とは違い仄かに光り今にも消え失せそうであった。


「しかし驚いた本当に出来るとはな」


「え? 珍しくないって?」


「アレは、嘘だ」


「は……」


「ふふ、だって神座が出来たのは私だけだったのだからな」


「だけ……? う、うそだろ……ってことは」


「名付けの親だ、なかなか良いと思わないか?」


驚くというよりはすこし呆れ苦笑いをしてしまったプレイヤー。神座のオーラは失せ、腰の上に乗っかっていた彼女はどいてくれず。


「修行が足りていないなエンジ」


「…………」


「弟子が追い抜かすこともあるかもしれないぞ」


「ふふ、それは」


青いオーラとつながりながら神座とラヴを上げる修行はつづく。




▼▼▼

▽▽▽




▼礼拝堂 (ホーム)▼


翌朝。


俺も神座が出来ちまったようだが……。どうしようか。炎神の子孫の俺はおそらく神座しなくて持って生まれたものだけで技は使えていたが。……たぶんゲーム的なパワーアップこれはうれし過ぎる!


嬉し気な顔を隠す気が見えない、父親はコーヒーを優雅にゆっくりと楽しみ、くるみクリームのケーキを頬張りながら何やら頷いている。


ベージュのティータイムセットを中心に。父親パーティーの5人は朝食を仲良く取っていた、が。


少しはなれた礼拝堂の長椅子。そこに、ちょんと1人少しやさぐれた目をした令月かほりはブラックコーヒーを飲んでいた。



……し、信じられない……シてたよね……あのふたり……。


ちらちらとその白シャツの背を訝しみ見つめる。


「お、どうした令月そんなところに? ケーキも腐るほどあるぞ、遠慮するな食べないのか」


急に振り返った彼のテンションの高い顔に驚いた。令月かほりは取り繕うように。


「あ、気にせず……私ちょっと今日は朝入らないみたいで」


「お、おうそうか? すまんここに置いてるのは好きに食べてい」

「はいありがとうございます、あとでいただきます」


かぶせ気味に発した言葉。



クールツンモードか……? へぇ令月かほりのクールツンモードは久々だなぁ、まぁいきなりこんな訳の分からない所に連れてこられたんだ。ホームシックやら強がりやらあるよな! そっとしておこう。



はぁ……。私は何がしたいんだろう……何をやって、あぁもう、今はそんなのじゃなくて、足手纏い、強くならないと……! 魔法でも夢でも────。



ぐちゃぐちゃの思考を、ブラックコーヒーをぐいと飲み干した。


「こんなので変われるわけも……にがい……」



軽く気付かれないため息、やさぐれた黒い瞳がじっと見つめるテーブルの甘味。


突如、宙に浮いた石の板に乗せて運ばれて来たケーキを。


「え、あ……ありがとう」


受け取ったクルミクリームのケーキのお皿、渡し終えた彼は四角い角一点で地をぐるりと回りご機嫌だ。

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