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「【爆炎斬】【爆破斬】【爆牙斬】!!」
グラマラスな女性のシルエットをした灰色の母乳石像は父親の炎のコンボに焼かれ砕かれ光の粒へと還っていった。
【爆牙斬】上段から炎の刃で斬り捨て更に鋭い牙の炎魔法の一撃が地から敵に突き刺さる上級技。使用直後の硬直もそこまで長くはなく使いやすい技ではあるが、非常に使いづらいと思われていた爆王斬がぐぴキャンの登場により異様に長い硬直というデメリットが消え爆牙斬の出番は無くなったというのがミジュクセカイの塔を攻略していった強者たちの共通認識なのだが……。
ここにリアルさを増したセカイでの別の問題がある。さすがにあまり飲み過ぎるのはつらい……。エロいゲームをやっていたときは気にせずグレープグレープ天然水をぐぴぐぴ飲んでいたが、さすがに飲み過ぎてしまったぜ……無理だよ、人間だもの。まだ俺の胃は限界ではないが敵も海蛇女や門番石像のように強力なボス級ではないので無理をする必要はないという冷静な判断を下した。
だだっ広い草原に降り立ち探索を始めた父親と女神石像のパーティーは、現在エンカウントしてしまった野良の石像たちとの戦闘の真っ最中であった。
敵の前衛である母乳石像を撃破した父親はすぐさま後衛の3体のションベンオヤジ石像に走り突っ込んで行った。
それに対し迎撃するよう、ションベンオヤジ石像たちが各々手で掴み腰を突き出し構えたご自慢のチンコ砲台から雷属性の青いビームが放射され父親に狙いをつけ飛び迫って来た。
「ネタだろおまえら、地味に厄介!!」
雷属性のビームの雨を突進を止め右に素早くステップし回避する。ゲーム地味たクイックネスを見せる。
そして態勢を立て直しこのまま一気に反撃に向かおうとしたそのとき、突如。
ド派手な、水を巻き上げ渦巻く竜巻が猛スピードでションベンオヤジ石像の群れを呑み込んでいった。
それはプレイヤー山田燕慈がこのやって来たセカイで初めて目の当たりにした魔法、中級魔法の、
「アクアとーねーど! 女神石像か!? よし!!」
勝手にやってくれた援護魔術にニヤリ、
打ち上げられ宙に舞い上がった石像たちに向かい父親は強く緑の地を蹴り跳び上がり。
「爆王斬!!」
炎全開、空中に巨大な炎球の爆発花火が咲き誇った。
水の竜巻に巻き上げられ空中に縮まり集まっていた3体のションベンオヤジ石像はその炎球に呑み込まれ、ダメージ限界を迎える。
石の身がヒビ割れ弾けるように爆散しながら光の粒へと還っていった。
すたっと着地さいこうにオッケーい。
「ふぅ女神石像……」
緑の地に着地し振り返ってみると翼を広げこちらに小走りで向かってくる彼女がいた。
女神が草原を走っている、それはとても。
なんだこれエロいゲームだよな? 癒されるんだが……。
父親の元に走り着きその場にちょこんと止まった女神石像。
勇者一行ではないけどゲームのパーティーとはまさにこの事だろう。
実際に味わうとおかしいというよりは、ほっこり。
「後衛ありがとうな。ナイス竜巻だ」
先程の戦闘のお礼を告げると、
女神石像はうんうんと元気に頷き喜んでいる。
「ハイタッチでもしとくか?」
右手を前に挙げた俺に女神石像はナニソレ? と不思議そうに見ながら近寄って来て。わかったのやら。
俺の横に並び同じように右手を前に挙げた。
「いやいや……なんだよこれ」
神にでも祈りを捧げているとでも思ったのか。ハイタッチという言葉を知らないようだ、そんな女神ふっ、可愛いな。
チラッと横目で彼女を見ると石のまぶたを閉じ本気で何かに対して祈っているようだ。
純粋というのかなんというのか、女神然としているその様子に少し驚いた。
女神が祈っているんだそれはきっといいことだろう。
俺も祈っておくか? どこかの誰かさんにこれからの運命と人生を。
今度は父親が女神を真似するように目を閉じ。
ミドリにカゼがながれる────
このエロいゲームの裏世界で祈りを捧げているプレイヤーは俺ぐらいだろうな。
寝落ちじゃないぜ、はは。
▼
▽
寝落ちするのはまだ早く、だが早くシないといけない。
さて、ひとついいだろうか。
…………猛烈におしっこがしたい。
グレープグレープなおしょんべんを。
ションベンオヤジ石像たちがたのしげに勢いよく草原に放出していたアレが引き金になったのだろうか。
俺の尿意は限界スレスレだ。
今すぐ解放したいところなんだが……。
そんな不思議そうな顔で俺を見ないでくれ。
女神石像は不思議そうな顔でなかなか動き出さない父親の顔を横から覗き込んでいる。
今まで通りの感じだと、意思疎通は余裕でできるよな……?
「ちょっとここで待機していてくれないか」
女神石像は手を広げなぜという顔をしている。
なぜここで食い下がってくるんだ……。
感情豊かだな。
「敵が来たら知らせてくれ偵察任務だ。俺はちょっとアイテムを探して来る」
顎に人差し指をあて、うーん、と考え込み、うんうんと2回頷いた。
どうやら承諾してくれたようだな。ゲームのように完全に命令通りとはいかないのか。ゲーム内なのにな、なんて。
「じゃよろしくたのんだ! 行ってくる」
そう告げると女神石像は父親に手を振っている。元気よく。
その様をしばし目にかるく焼き付け。
かわいい……そんなことより尿意だ。この周辺の敵は片付けたはず。ちょっとばかし来た道を引き返して立ちションスポットを探そう。
教会から草原まで来たルートを引き返し走り進んだ父親は背を振り返り、女神石像の姿がいないことを確認した。
ただの一面の草原、この緑の地でチャックを下ろしパンツを下げそのイチモツを解放した。
いつもと……ナニかの感覚が違う気がする……。
「でかっ!」
「いや親父デカい待って、俺のと違う!」
「複雑な気分なんだが……今日からこいつが俺の息子なのか」
「俺の息子には会えないし俺の息子にも会えない……とは!」
俺のチンコは俺のチンコじゃなくなり、エロいゲームの父親のチンコへとランクアップしたようだ。容姿が変わりチンコまで無事なはずはなかったんだ。……俺の息子にはもう会えない。
ずっしりとでーんとした感覚がぶら下がっている。
さすがエロいゲームだとしみじみ……。
「はぁ親父まじかよ……親父のちんぽってこうだったのか、って……んなことよりッ…………」
ジョロロロビピューーーー。
水位限界まで堰き止められていたダムを解放しそのグレープグレープ天然水は勢いよく放射され続けている。
「フオオおおおおおお」
ピューーーーーー。
排尿行為はエロいゲームでも気持ちがいい。
水位限界まで堰せき止められていたダムを解放しそのグレープグレープ天然水は勢いよく放射され続けている。
ピューーーーーー。
「フウゥうううううう、ん?」
視線。見られている。
女神石像はしゃがみ込みその勢いよく放射されているグレープグレープ天然水を眺めている。
「は!? ちょ! 何やってんのナニやってんの!?」
女神石像はなおも腰を落とし両手のひらをほっぺに当て不思議そうにじっと眺めている。
「ちょ!? 見るな! そんな目で!」
排尿行為。普通は隠れていたすもの、生物の完全な隙と所持武器を晒してしまうその行為を彼女に見られた俺はどうしようもなく動けずにいる。
ピュピューーーーチーチョロロ……ロロ。ピュー。ピュ。……ロロ。
長い放射時間。解放された尿で、尿意はおさまった。
だだっ広い草原で女神石像に見守られながら立ちションをした俺は、一体何を得て何を失ったのだろうか。