13
狭い石の通路にド派手な水の竜巻が吹き荒れタチモグラたちを吸い込むように巻き込んで過ぎ去って行った。
巻き上げられたものたちはその身を地に打ち付けられ光の粒へと還っていく。
一度も反撃を許すこともなく行手を塞いだタチモグラたちは父親と女神石像のパーティーに殲滅された。
「おつかれ」
振り返ると左拳を上げふりふりしている元気な女神石像がいた。
「かわいいのはいいが」
「やっぱ通路は相変わらずパなした方の勝ちだな、さすがエロいゲーム。ダンジョンものの白熱のバトルを全否定だ」
父親は白蜜を納刀し、ひとつ息をついた。
そして顎に手をあてクールな渋い表情で口を開いた。
「ちょっと気付いたことがある」
「……俺ってもう何時間戦ってる?」
「ゲームは1日1時間と偉い人が言っていたが」
「そろそろゲームを辞めて寝るべきなのでは?」
「……まぁ辞めれる気はしないんだが」
そう溜め込んでいたワードを吐き出し終えると、
おもむろに歩き出しダンジョンの通路の石の壁へと向かい唱えた。
「ホーム」
すると、石壁は切り取られたかのように無くなりそこにはめ込まれたかのように木のドアが現れた。
「思いつかなかったのか? これだけ普通すぎるんだよなぁエロいゲーム」
そう言うと、父親はコンコンと木のドアを軽く叩いた。
「それと教会の扉にしてはしょぼいぞ、まぁこっちは助かるが」
「エロいゲームの外では敵を殲滅してからじゃないと使えなかったが……今度試してみるか? まぁいつでも逃げ込めたらバランスが崩壊するってことなんだろうが……ただのナニする空間でバランス考えてんのって滑稽だよな」
「おっと……どうも独り言が多くなるよなゲームやってると」
「まぁだれも居ないって自由だからな、ハハ」
少し微笑み。
そしてまた後ろを振り返り。
「じゃあ、女神石像ついて来てくれよ」
女神石像はうんうんと翼をぱたぱたさせ頷いている。
前に向き直って父親はドアノブに手をかけ。
ガチャリ。
戸を開いて見えてきた、色鮮やかなステンドグラスから光が射し込んでいる神聖な空間。
「予想はついていたんだけど、ここかよーーっ」
両サイドに長椅子が列を成し置かれ、青い絨毯のしかれた中央通路の先一つ上がったところに祭壇がある。
礼拝堂、地下に父親が封印されていた場所であり女神石像との出会いの場だ。
「ここが家って……」
後ろを振り返ると彼女は石のノーマルな表情をしていた。
「特に思い入れもなさそうだな」
中を確認するよう青い中央通路をコツコツと歩いていく父親。
が、すぐにその足を止めた。
「ベッドはオルガンじゃねぇんだぞエロい宗教」
祭壇の左側に、何の台だろうか、六脚の大きな白いベッドがぽんと置かれていた。
色鮮やかなステンドグラスから光が射し込む、聖なる空間に相応しくないであろうその白いベッド。
「邪教だろこれ」
「まぁ長椅子で寝るよりはいいが……サービスのつもりなのだろうか?」
「いやそもそもエロいゲームか! ベッドがないと始まらないから当然の配慮とも言える」
父親は顎に手をやりニヤケながらそう言うと再び歩き始め。
コツコツと静寂の礼拝堂に響く足音を立て問題のベッドの前までやって来た。
「果たして人類はここで眠りにつけるのだろうか」
腰に両手をあてながらひとりまた呟く。
「まいいやベッド前にしたらどっと疲れた気が……する」
目を右手でごしごしとすると誘発されるように長い欠伸が出てしまった。
ここまでノンストップで来たんだ、自制の効かない子供みたいにさ。
「ゲームだからか夢中になり過ぎたな……」
目が勝手にじっと絞るように長く閉じ、ひどく疲れが溜まっていることが自覚できる。
「……寝るか。たのしかったぜエロいゲーム」
そう言いながらおもむろにベッドへと潜り込み白い布団を被る。
電子の世界、本当は無いはずの不思議な暖かさに包まれ父親は眠りへと堕ちていった。
▼
▽
ドンっ。
「──────ン…………ん……」
白い掛け布団にのしかかった重み。
ぐっすりと眠っていた戦士の目が覚まされる。
「……ンン……」
「うおッ!?」
驚き慌てて上体を起こした父親。
目の前にはきょとんとした石の顔の彼女が彼の太腿の上に正座して乗りかかっていた。
「……そういや勝手にひとりで眠っちゃったな……ふあぁ」
深い眠りを起こされたからかひとつ大きな欠伸が出てしまった。
「……そうかぁおまえ寝ないのか」
「たしかにゲームのキャラってさ、滅多に寝てないよなぁ」
ねぼけた目。
しばしの沈黙で見つめ合うふたり。
▼
▽
その後父親と女神石像はひとつのベッドの上で色々話し合い。
父親は指示したよしよしを止めさせることに成功し。
「じゃあおやすみ」
女神石像はうんうんと頷き布団を被った父親をじっと見つめている。
彼女に見守られながら目を閉じ脱力した父親の身体は自然と眠りへとついていった。
ふたたび深い眠りへとついていった彼のそんな寝顔を見ながら。
彼女はそっと彼の髪を撫でていた。




