変わった日常
大輝は、
普通に過ごそうとしていた。
普通が何かわからないが
いつも通りにお風呂に入り
夕食を食べ
母親と雑談をして
部屋に行き
そのまま眠る事にしたのだ。
次の日から大輝は、
いつもより明るく振る舞った。
「おはようお母さん!」
そんな大輝の姿を見て
戸惑いを隠せずにいる母親。
「僕は大丈夫だよ!
今日から二人で頑張っていこう!」
元気だった。
よくわからないが
明るく振る舞う事が
一番いい気がしていた。
母親も大輝を信じるしかない。
まだまだ不安はあるが
少しずつこの生活に慣れて
大輝が幸せになってくれるように
見守っていくと決めたのだ。
「お母さん達のせいでごめんね大輝。
お願いだから我慢だけはしないでね。
できる事は何でもするから。」
と、伝えたが
「無理なんかしてないよ!
何かあったらすぐ言うから安心して!」
と、言って応えた。
そのまま用意されていた朝食を
急いで食べ
支度を済ませて若葉を待った。
インターフォンがなり若葉が来た。
「おはよう大輝!」
いつも通りだ。
「おはよう若葉!」
大輝はいつもより明るかった。
母親も出てきて
また若葉と少し話し
その後二人で学校に向かった。
「大輝、今日は
いつもより元気だね!
なんかあったの?」
と、若葉が聞いてきた。
若葉は両親の事情を
唯一知っていたので
普通に応えた。
「昨日お母さんから
離婚の理由とか全部聞いたんだ!
本当のお父さんの事も言ってた!
全部聞けたから良かったと思ってさ!
あっでも本当のお父さんがどんな人で
名前は何とかは聞き忘れちゃった!」
と、昨日と同じで
いつもよりたくさん話していた。
若葉は学校に着くまで
ずっと聞いてくれた。
学校に着き教室の前まで来た。
そこで若葉が
「大輝、無理しないでね。
私はずっと変わらないよ!
だから絶対無理しないでね!」
と、言ってきた。
「ありがとう若葉!
でも大丈夫!
無理なんかしないよ!」
と、だけ伝え教室に入っていった。
珍しく若葉はその背中を
心配そうに見つめていた。
教室のに入ってからも
いつもより明るい大輝だったが
明るくなった事を
心配する人はいなかった。
逆にいつもより
話しやすくなった大輝を
受け入れて
喜んでくれる人ばかりだった。
その日から
明るくなった大輝は
徐々にクラスの人気者になり
気付くと
クラスの中心にいる事が増えていった。
悪いことではないのだが
事情を知っている若葉にとっては
無理をしているようにしか
見えなかった。
大輝は普通を保つ為に
自分を偽る事に慣れていたので
平気だった。
明るく振る舞った方が
みんなが喜んでくれる
母親も
若葉も
きっとそれを望んでいると
思うようにしていた。
自分の本当の気持ちは押し殺す
それが今の普通を保つ事だと
この時は本気で思っていたのだ。
そんな日々が続き
学校でも
家でもなんとか
普通を保つ事が出来ていると思っていた。