母親の心配
朝早くに、
朝食の準備をしながら
母親は、後悔していた。
「大輝に辛い思いをさせてしまった。」
大輝が、
無理に明るく振る舞うのが辛かった。
大輝には、
怒ってほしかったし
泣いて欲しかった。
でも、
大輝は、明るく振る舞う事を選んだ。
「お母さん失格だ。」
どんどん落ち込んでいった。
そうこうしているうちに
大輝が起きてきた。
「おはようお母さん!」
昨日と同じように
無理に明るく振る舞う大輝の姿を見て
戸惑ってしまった。
「僕は大丈夫だよ!
今日から二人で頑張っていこう!」
無理に元気にしていた。
やはり
明るく振る舞おうとしていた。
だが、大輝を信じるしかない。
不安の種は、まだまだある
少しずつこの生活に慣れて
大輝が幸せになってくれるように
見守っていくと決めたのだ。
「お母さん達のせいでごめんね大輝。
お願いだから我慢だけはしないでね。
できる事は何でもするから。」
と、伝えたが
「無理なんかしてないよ!
何かあったらすぐ言うから安心して!」
と、言われてしまった。
見守ると言った側から
大輝の姿に
泣きそうになってしまった。
自分達のせいで
大輝が辛い思いをしている。
辛かった
情けなかった
申し訳なかった
こんな母親になるつもりもなかった。
自分達のしてきた事を後悔した。
でも大輝のやりたいように
大輝がしたいように
大輝がしようとしている事を
信じるしかなかった。
大輝を大切にし愛しているからこそ
大輝がこれ以上
自分達のせいで苦しまないように
辛い思いをしないように
支えて見守ると…
母親は、
自分のせいなのに
何を言っているんだと思われても
その決意だけは、
曲げないと誓った。
大輝が支度をし終えた頃
インターフォンが鳴った。
若葉が迎えに来たのだ。
昨日の事を話すために
母親も外に向かった。
若葉の近くにいき
「昨日の夜、大輝に全て話したわ。
大輝は受け入れてくれたと言っているけど
すごく無理をしている感じがして…
わざと明るく振る舞っている気がするの。
私たち夫婦が全て悪いのに
そこも一切責めないの…
涙も流さずに無理に笑っているの。
どの口がとは思うのだけど…
学校では若ちゃんが見守ってくれないかしら?
お願いします。」
と、伝えた。
すると若葉は、
「大丈夫です!
しっかり見守ります!
任せてください!」
と、応えてくれた。
「本当にいつもごめんなさい。
よろしくお願いします。」
祈るように若葉にお願いをして
二人を見送った。
二人の姿が見えなくなるまで。
一人残った母親は、
また、自責の念に襲われていた。
このまま見守っていくしか出来ない
自分への歯痒さに。
若葉に託してしまっている
情けなさに。
「大輝…本当にごめんね…」
と、心の声がもれていた。




