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二千円

作者: 村上

昔々あるところに、電気を節約すると、二千円をくれる国がありました。

真夏のエアコンが必要な時期に、国民が一斉にエアコンをつけると電気が不足する危険性があるとのことで、節電してくれた人には二千円をプレゼントする。

急な思いつきのような、そんな制度が始まりました。

高度経済成長やバブルといった古き良き時代を生きていた人々は、努力と気合と根性で暑さを乗り越えられると信じていました。

その人たちは、二千円はお得だと、努力と気合と根性で国の為に暑さに勝利するのだと、いきり立っていました。

ただ、その人達より若い世代は、二千円貰うより、普通にエアコンをつけて、熱中症になることを防ぐ暮らしをした方が良いと思っていました。

しかし、この国では、そういった人々は少数派でした。

この国では人口のバランスがとっくに崩壊しており、努力と気合と根性で生きて来た世代が、それより若い世代が子供を育て難い社会を作り上げており、自分らの世代が明らかに多数派だったのです。

民主主義国家であるその国は、彼らが、この国の行く末を決めており、決定権があったのです。

そこから先は、案の定、というべきか。

数千人が熱中症によって、命を落とし、数万人が具合が悪くなり病院へ搬送されました。

この数をどう評価するかですが、基本的には、国の政策によって国民死ぬことが、たとえ一人であろうとも許されない。

そういう国民性だったのです。

実のところ、これは彼らを駆逐するための政策だったのではないか。

そんな陰謀論すら、沸いて出てきました。

二千円を欲しがり、暑いときにエアコンをつけることもしないで熱中症になるような知性の低い連中を減らすことで、一時的に人口は減るものの、結果的に生産性の高い人間が残ることとなり、国力は高まる。

また、そうすることで、ある程度、人口ピラミッドを平均化しようとしているのではないかと。

しかし、次の展開は陰謀論好きの評論家達ですら、想像していないものでありました。

国としても、暑さで貴重な人命を亡くさないためにも、電気を確保しないといけない。

エネルギー政策を抜本的に見直します。

と、宣言しました。

ここまで見越した制度だったのかと、頭の良い人達が考えることは違うなと、関心した人々もいました。

この国では政策の裏の目的まで読まないと、いけないのでした。

電気がないと、仕事にもならず、生産性も上がらない。

そんなこともわからないのは、資本主義社会では致命的なのです。

さらに問題なのはここからでした。

国は、しばらく動いていなかった、古来の技術である原子力発電を全国的に稼働させることにしました。

原子力発電をして良いと許可を出す専門的な組織がありましたが、実質的には国の意向を汲む組織であり、民意としても、何としてもエネルギーは確保して欲しいとのことで、すぐに許可が降りました。

とはいうものの、再起動するのは難しかったのです。

一旦は、動き出したものの、すぐに故障。

停止することもできずに、各地で大爆発が巻き起こり、この国は滅びましたとさ。

おしまい。




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