着替え
レジナルド王が案内してくれた部屋は、非常にキラキラした贅沢な部屋だった。
足首まで埋まるやわらかな濃紺の絨毯。
壁紙も、家具も、白地に、金色で模様が彫られ、ベルサイユ宮殿かとつっこみたくなる豪華さ。
部屋の表面には、大きなガラス窓があり、シフォン生地のカーテンが、両脇に寄せられ、外が見えるようになっている。
「ドルチェ。レーテ。」
国王が、部屋の中で、控えていた揃いのお仕着せをきた若い女性に呼びかければ、彼女たちが頭をやや下げたまま、私の前に来て、膝をかがめて、お辞儀をする。
「御身の世話をさせていただくメイドです。ドルチェと、レーテ。まずは、お召替えください。その後で、また、お話させてください。では、一度、私は、退室させていただきます。」
レジナルド王が、私の手に、うやうやしく、軽く口づけして、退室していく。
私の顔は、真っ赤だ。
・・・て。て、て、手にキスされた!!!うそでしょー!!!!!
「神の御使い様。」
丁寧に呼ばれて、あわてて、ドルチェとレーテの方を向く。
「神の御使い様、お召し変えを手伝わせていただけますでしょうか。」
「あの。私、神崎友里子と言います!ゆりこ、と名前を呼んでいただけませんか?そもそも、私、神の御使いじゃないですし!」
怪訝そうに、ドルチェとレーテが、お互いの顔を見合わせていたけれど、軽くうなずきあうと、
「ユ、ユゥリコ様、でございますね。承知しました。では、ユゥリ・・・ィコ様、どうぞ、こちらへ。」
ちょっと、名前が言いづらそうだ。決して、私の顔を直視しないように、視線をずらしながら、彼女たちは、私を、隣の部屋に連れていく。
そこは、クローゼットルームになっていて、豪華なドレスの山が、天井のシャンデリアの七色の光を反射して、美しく輝いていた。
何これ?と立ち尽くしていたら、ドルチェとレーテは、着替えさせるのに慣れているのだろう、あっという間もなく、私の洋服を脱がせ、一糸まとわぬ姿にされる。
「え?え?あの!返して!?」
「申し訳ございませんが、じっとしていてくださいませ。御身に合ったドレスを選ばねばなりませんから。」
抵抗むなしく、ドルチェとレーテが、協力して、私が動かないようにする役と、紐でサイズを測る役に分かれて、手際よく、各部のサイズを、手帳に書き込んでいく。
「ユ・・ゥリコ様のサイズに合いますドレスは・・・。」
次々と私の前に、ドレスが持ってこられて、好きなものを選んでほしいと言われる。
元々、着ていた服を返してほしかったけれど、周囲に見当たらない。
渋々、なるべく、動きやすそうで、装飾も少なめの、紺色のドレスを選べば、まずはこの世界の下着を着せられ、それから、ドレスを着せてくれる。
コルセットを絞められる世界かと思ったけれど、コルセットは無し。ほっとした。
首飾りなどのアクセサリーも選ぶように言われたけれど、頑なに辞退させてもらった。
「国王陛下が、お茶を用意して、お待ちになっておられます。その部屋までご案内いたします。」
ドルチェとレーテが頭を下げて、私についてくるようにと促し、彼女たちの後ろから、廊下に出た。
それにしても、不思議だ。日本語ではない言語なのに、普通に会話ができる。なぜだろう?