小休暇
婚約式から1週間たち、ようやく、ベッドから出る許可が出て、今は、アルフレッド公と、庭園を歩いている。
1週間、ベッドで過ごしたので、足元がやや覚束ないけれど、アルフレッド公が、腰に手を回し、引き寄せたまま歩いているので、転ぶ心配はない。
庭園では、今、シャクヤクの花が満開で、そよ風がふくたび、やわらかな花びらが踊るように揺れるのが、美しい。
ガゼボに到着すれば、すでにお茶の支度ができていて、前回通り、2人掛けの椅子に、並んで腰かけさせられる。
「お茶、いれますね。」
ポットから、ティカップにお茶を注ぎ、アルフレッド公に渡せば、ありがとう、と微笑んでくれる。
ありがたいことに、その顔には、もう、隈は残っていないし、顔色も良い。
アイリーン王妃が、ここ数日、毎晩、アルフレッド公に睡眠薬を盛ったからだ。
そうでもしないと、絶対に、私につきそって、夜更かしするから、と。
こっそり、横に座っているアルフレッド公の顔を見上げる。
左手でティーカップを持ち上げ、お茶を飲んでいる、その薬指には、きらりとダイヤモンドが光る。
・・・私とお揃いの指輪・・・。なんか、うれしいな。
「ユーリ?どうしたの?」
「ひゃい!・・・なんでもありません。」
見惚れていたら、急に私の方を向いて、微笑みかけられて、飛び上がってしまった。
綺麗すぎる顔って、絶対、反則だと思う。
「ほら、何も食べてないじゃないか。ただでさえ細いのに、熱出して、また痩せちゃったんだから、食べないと。」
アルフレッド公が、私の取り皿に、プチケーキを積み上げる。
「アルフレッド様!そんなに食べられません!」
「アル。」
「はい?」
「アルって呼んで?」
「え?なんで?恐れ多いです。」
ずいっと、アルフレッド公の顔が接近してきて、くいっと、顎を持ち上げられる。
「もう婚約したんだから、他人行儀は、嫌なんだ。ほら、アル、って呼んで?」
近い、近い!もう少しで、口づけができちゃう位置だから!離して!
頭の中がパニックして、涙が出そうになる。
「あ、ああ、」
「アル。」
「アルフレ・・・アル様?」
「アル。」
「アル!」
にこっとアルフレッドが笑った、と思ったら、口づけられていた。
離れようとしても、頭の後ろを、彼の手がしっかりホールドしているから、逃げられない。
そっと、舌が、私の食いしばった歯の間に割り込もうとしてくる。
ダメ!限界!
必死で、アルフレッド公の胸を両手でたたいて、どうにか、離れることに成功した。
「ユーリ。」
少し、不満そうな、アルフレッド公の顔が、目の前にある。
「私との口づけは、嫌?」
「そ、そうじゃなくって!・・・あの、その、初めてだし。その・・・。」
アルフレッド公が、いじわるそうに微笑む。
「ああ、そうか。・・・うん。いろいろ、私が教えてあげるから、慣れようね?」
相思相愛の相手だから、うれしいけど、恥ずかしいし、もう逃げたい・・・と腰を浮かすも、がっちり腰に手を回されて、動くこともできず、うつむいて、お茶を飲んで、ごまかした。
もう、休暇なんて終わりにしてもいいくらい。
また勉強とか始まらないかな・・・と思いつつ、その日は、べったりくっつかれたまま、終わった。




