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駅のトイレ【夏のホラー2020】

作者: 江渡由太郎 原案:J・みきんど

 これは私が実際に体験した恐怖体験である。


 今は綺麗に改装され、昔の面影はほとんど残されていない。


 嘗ては排泄物の悪臭と不潔なイメージしかなかったその駅のトイレには、いくつもの噂があった。


 幽霊が出るとか同性の男性が声をかけてきて誘ってくるとか良い話はない。


 その噂話の中で一つ気になるものがあり、私はそのトイレへと向かった。


「一番奥にある個室トイレの壁に書いてある電話番号には決してかけてはならない」


 わたしはその噂の真偽を確かめるため、その個室へと行くことを決めたのだった。


 日中にもかかわらず、じめじめとした湿気を感じさせるそのトイレの入口前で人目を気にしながら入るのを躊躇っているわたしの姿を横目に数人の男性がトイレの中へ消えていった。


「臭いな。これほど臭いトイレの中で息するの嫌だな」


 悪臭に怖気づいてしまいなかなか足が前に進まなかった。


 先程、トイレの中へ入っていった男性たちが次々と出たのを確認してわたしは意を決した。


「よし、入るぞ!」


 気合を入れて中へと入ると目的の一番奥の個室トイレへと恐る恐る近づく。


「ここが噂のトイレだよな。和式トイレなんていつの時代だよ」


 わたしは周りを気にしながら中に入った。


「いったいどれのことだよ!?」


 個室のトイレの壁や扉には卑猥な絵が描かれていたり、複数の電話番号が至る所に書かれていた。


 無数の電話番号を一つ一つ検証するしかないと思ったが、一つだけ明らかに古そうで消えかけている電話番号があったのだ。


「もしかしてこれのことか!? 他のは卑猥な誘いの連絡先とかばかりのようだし……」


 とりあえず、わたしは駅のトイレから早く出たくて仕方がないという気持ちで慌ててスマホで写真を撮ったのだ。


「臭いってもんじゃないないな。公衆便所の方が余程清潔だよ」


 肺の中の空気を入れ替えるように深呼吸を数回繰り返した。


 そして、駅の改札口前にあるベンチに座り、先程の電話番号へと電話してみたのだ。


 誰か出たら、「間違えました!」と言って切ればいいという、そんな軽い気持ちであった。


 発信されると突然スマホの電源が落ちた。


「!? えっ!? 何!?」


 わたしは自分で誤って操作したのかと思ったが、そうではなかった。


「何で!? 私のスマホ突然電源切れたんだけど!?」


「俺のもスマホ電源落ちてる!」


 わたしの周りに居た人達のスマホも、わたしと同様に突然電源が落ちたのだ。


 意味が分からずその場を離れたわたしは、駅の出入口付近でスマホを起動させた。


「壊れてはいないみたいだ。マジビビった……」


 先程の電話番号へと再度かける勇気はなく、番号履歴を消そうとしたその瞬間、その番号から電話がかかってきた。


「出たくないからスルーするか」


 わたしは下さいスマホの画面を見つめたまま立ち尽くしていた。


「出れよ」


 突然、そう聞こえた。


 それが、携帯電話から聞こえたものなのか、耳元で聞こえたものなのか、幻聴なのかは分からない。


 その声が聞こえた途端、着信は切れていた。


 否、着信歴そのものがなかったのだった。


 わたしには困惑しか残されなかったのだった。



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