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スカウトマンは、おバカな少年に会う。


「あー! お前こんなところで何してるんだ!?」

「ん?」


 村を出ようとすると、ガサガサと音がして、一人の少年が現れた。


 短髪の黒髪に、日に焼けた肌のヤンチャそうな子どもだ。

 動きやすそうな……というかどう考えても山に入る格好ではなく村で過ごすような服装をしており、背中に紐でくくりつけたナタを背負っている。


「この場合、こんなところで何してるんだ、は俺のセリフな気がするが」

「さてはお前、ここにあるキレイな剣を狙ってきたんだな!? 悪者め!」

「いや人の話聞けよ」


 じゃきーん! と言いながら遊びのようにナタを抜いたが、ぶっちゃけそれは凶器である。


 ―――なんか、こんな奴にばっかり会うな?


 クスィーもミロクも、タイプは違うがスイッチが入ると人の話を聞いていない。

 あなたもですよ!? と耳元でノインの声が聞こえた気がしたが、気のせいだと思っておくことにした。


「おい、ガキんちょ。そんなモン人に向けたらタダじゃ済まねーぞ?」

「うるさい、ワルモノめ! やっつけてやらー!」


 ガサガサと草の中を走りながらナタを構え、斬りかかってきた少年に、イストは内心でため息を吐いた。

 そしてタイミングを合わせ、逆に一歩足を踏み出す。


 イストがいくら弱いといったところで、さすがに村の子どもに負けるほどではない。


「うどわぁ!?」


 刃を避けながら、すり抜けざまに軽く足を引っ掛けてやると、少年は前のめりにつんのめった。


 ―――?


 そこでフワリと香った匂いに、嗅ぎ覚えがあるような気がしてイストは首をかしげる。


 どこか懐かしい匂い、だが、どこで嗅いだモノか思い出せない。


 ―――何だ?


 珍しく香りに関して覚えていない自分を不審に思っていると、少年はちょっと感心する動きを見せた。


 つんのめった首根っこを捕まえてコケないようにしてやろうと思ったのだが、クッ、と首を沈めたかと思うと猫のように丸まって柔らかく地面を一回転して、起き上がったのだ。


「お、良い身のこなしだ」

「へへん! そうだろ!」


 少年は指を二本立てて、得意そうに突き出してきた。


「俺を褒めてくれるなんて、いい奴だな! ワルモノじゃなかったのか?」


 ―――こいつバカだ。


 少年の問いかけに、そんな風に思いつつもイストは話を合わせる。


「最初からワルモノだなんて言ってないだろ?」

「確かに!」


 少年はいちいちオーバーなリアクションで、今度は驚いたジェスチャーをする。


 やっぱりバカだ。

 が、割と扱いやすいようである。


 斬りかかってきた時はどうしたものかと思ったが、これでようやく事情を聞けそうな塩梅だった。


「で、お前さんは何でこんなところにいるんだ?」

「それは……」

「ちょっとカイ、あんた何してるの!?」


 ぴょん、と立ち上がって事情を説明しようとした少年に、いきなり怒声が飛んできた。


 少年が現れた方向で、どうやらそちらにイストの知らない山道があるらしい。

 もうこの辺りを離れてかなり時間が経っているので、おそらくは新しいルートが作られているのだろう。


 肩で息をしながら現れたのは、薬草を摘むカゴを背負った少女だった。

 目の大きな可愛らしい少女であり、カイと呼ばれた少年とそう歳は変わらないだろう。


「いきなり走り出したと思ったら! 何で人に斬りかかってるのよ?」

「うるせーなぁ、スティ。悪いヤツかと思ったんだよー」


 ぶー、と膨れながら頭の後ろで手を組むカイに、スティはズカズカと歩み寄ってその頭を思い切りはたいた。


「イッテェ!」

「悪いヤツかと思った、じゃないのよ、このバカァ! 謝りなさい! そもそも本当に悪い人だったら今頃殺されてるわよ!!」


 顔を真っ赤にしてまくし立てるスティに、イストは深く頷いた。

 どうやら彼女の方は真っ当な感覚を持っているらしい。


「あの、バカが本当にすいませんでした!」

「だからイテェって!」


 少年の頭を無理やり押さえつけてなぜか一緒に頭を下げる少女に、イストは笑いながら答える。


「あー、まぁいいよ。だってなんか面白いしな」

「へ!?」


 というか、イストが言いたかったことを全て少女が言ってくれたので最早何も言うことがない。


「謝るのは良いからさ、一つ聞いても良い?」

「はい」


 素直に頷く利発そうな少女に、イストはぽりぽりとアゴを掻きながら、軽く首を傾げた。


「君たちは何者で、何でこんなところにいるんだい?」


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