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95.四姉妹とシャルロット

 次の日の朝。

 午前中にランニングやストレッチなど基礎トレーニング、剣術などの指導を行う。

 昨日と同じくベルさんは午前の指導には不参加だけど、順調に終わった。

 午後からの指導や依頼に備えて、起床したベルさんも合流して昼食となる。

 この場でシャルについて、四姉妹とティナさんに説明をするつもりだ。


(シャル、起きてる……?)

(うむ。多少眠くはあるが……)

(ごめんね、ありがと)


 シャルもベルさんと同じく、もしくはそれ以上にお寝坊さんなので、昨日無理を言って、お昼に起きていてと頼んだのだ。


(我のことを紹介するのであろう?)

(うん。それで、もう一つお願いがあるんだけど……)

(む? 可能ならば聞いてやるぞ?)

(服、着てくれない?)


 こんな真昼間に妖精とは言え、裸の女の子が突如出現する。見た目はベルさんと同じか、それよりも幼いくらいだ。

 大混乱してしまっても不思議ではない。

 混乱くらいならまだいいけど、私が変な目で見られる。絶対に。

 

(服? なぜじゃ?)

(なぜって、普通にさ? ね?)

(むぅ……)

(なぜ渋る……)


 シャルくらいになると、妖精だし今までに見た服を真似て作り出すことは造作でもないと思う。

 だが、シャルは断固として服を着てくれない。

 勘違いをしてもらいたくないけど、断じて私がシャルに命じて全裸でいさせているわけではないのである。

 だけど、四姉妹にそう思われたらどうだろう。

 私は自分の妖精(しかも可愛い女の子)に裸でいるよう強要している変態の烙印を押されてしまう。もう先生なんて続けられない。


 なおもシャルは譲らない。

 シャルとの付き合いも長いので、シャルが謎に全裸にこだわりを持っていることはわかっていた。理解はできないけど!


(我は妖精ぞ?)


 だからなんだ、という気持ちをぐっと抑えて説得する。


(わかってるけど、せめて人前に出るときくらいは)

(我は構わんぞ?)

(いやいや!? 私たちが構うの!)


 妖精には羞恥心というものがないのだろうか。

 いや、きっとあるんだろうなぁ……。シャルがおかしいんだろうなぁ……。


(して、クロエよ)

(なに?)

(もう昼餐は始まっているようであるぞ?)

(え)


 シャルとの会話に夢中になっていて気がついていなかった。

 テーブルの上では、すでにティナさんによってお昼ご飯の準備が整っていた。

 ジャスミンさんが心配そうに私の顔を覗き込む。


「クロエ、大丈夫? どうかした?」

「な、なんでもないです」


 胸の前で手を振って、平気だと伝える。

 ベルさんも私の服の袖を引っ張って、不思議そうに首をかしげていた。


「な、なんか……ぼーっとしてた気がするけど……」

「心配かけてすみません、私は大丈夫です」

「そう……なの?」

「はい」


 シャルのことを話すのは食事の前にするべきか悩んだけど、後にした方がよさそうだ。

 なんて言ったって裸だからネ!

 私がうなずくと、ジャスミンさんとベルさんは納得はしていない感じだったけどみんなで食事が始まった。


(シャル、ご飯が終わったらみんなに紹介するから)

(承知した)

(それまでに服を着といてくれない?)

(前向きに検討することを検討しておこう)

(…………) 

 ティナさんの絶品料理に舌鼓を打って、お昼ご飯の時間が緩やかに過ぎていく。

 やがてそれぞれ食べ終わって、食後のお茶をティナさんが持ってきてくれた。

 ティナさんにも話しておきたいので、シャルのことを話すのならここだろう。息を吸って話を切り出す。


「皆さん、少しいいですか? ティナさんも」


 突然かしこまった私に、シャルのことを話すと知っているシラユキさん以外の三姉妹とティナさんが首をかしげる。


「んだよ?」

「なーに?」

「……?」

「私も、ですか?」

「はい、ティナさんにも聞いてもらいたくて」


 ベルさんへお茶を注いで、ティナさんはティーポットを持ったまま私の言葉へと耳を傾けてくれた。


「皆さんに紹介したい人がいると言いますか」

「クロエの友達か誰か?」


 ジャスミンさんが質問する。


「いえ、友達というか、そもそも人ではないというか……」


 私の言葉にシラユキさん以外の人たちが怪訝そうにする。

 そりゃそうだ。

 人以外の人を紹介するって何? 胸の中が疑問でいっぱいになるのも無理はない。


「とりあえず、本人に会ってもらうのが早いと思うので紹介しますね――シャル」

「かかっ、ようやくであるな!」


 魔法書が輝いて、テーブルの誕生日席となる前方、シラユキさんとジャスミンさんが座っている隣にシャルが現れた。

 やっぱり裸のシャルがドヤ顔で胸を反らす。……いや、ほんとになぜ? 


「きゃぁぁ!?」

「んなッ!?」

「えぇ!?」

「…………!?」

  

 ティナさんが悲鳴を上げ、三姉妹もそれぞれ絶句する。

 その妹たち三人とは反対に、昨日シャルと出会っているシラユキさんは冷静に紅茶を口に運んでいた。

 いや、一人昨日のうちに会っているとはいえ、あまりに落ち着いていてすごいと思う。やっぱりシラユキさんは色々な女の子と遊んでいるから、一人くらいはシャルみたいな人もいたのかもしれない。

 ……いないと思うけど。


「おい、お前! だ、だだ誰だよこいつ!?」

「なんで裸なの!?」

「で、でも、すごく可愛い……子……」


 全裸ドヤ顔のシャルを見て、三人はそれぞれ顔を朱に染めてわたしに言う。

 アリエルさんは慌てた様子でシャルを指差して、ジャスミンさんは驚愕して、ベルさんは顔を両手で覆いつつも指の間からシャルを覗いて。


「えっと、一つずつ説明しますね……?」


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