表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/159

69.ファミリアギルド

「ギルド……? クロエの……?」


 四姉妹を四姉妹として繋ぎとめるため、私が考え出した答えはこれだった。

 新規ギルドを創設すること自体は、そこまで難しいことではない。基本的な条件はどこにも所属していない冒険者であること。そして王城で行われる、マスターとしての実力を確認する試験を突破することだ。

 マスターとして力が認められれば、実力に応じて街で構えるギルドの建物の規模や所属できる人数などが定められる。


 今の私はヴァレル家に雇われてはいるけど、ギルドはどこにも所属していない冒険者だ。

 冒険者としてもそこそこ中堅に差し掛かるくらいは依頼をこなしてきたから、四姉妹を迎え入れるくらいの規模のギルドは開くことができるだろう。 


「はい。私のギルドです」

「クロエ、あなた何を言い出すかと思えば」 


 入り口付近でサンズさんの隣に立っているカタリナさんが口を挟んでくる。

 

「それはジャスミンお嬢様だけでなく、シラユキお嬢様たちもギルドにさそうということですよね?」

「そのつもりです」

「少し驚きましたが、たしかにそれならば今後も四姉妹で共にいられることでしょう」


 さすがのカタリナさんの頭にも、私がギルドを作るという案はなかったらしい。

 感心したように目を細める。

 だけど、すぐに「ですが」と声のトーンを落とした。


「アポロンを抜けるという意味では、シラユキお嬢様たちが言っていたことと同じですよ? いくらクロエがマスターを務めると言っても今の王都で新規のギルドを運営することがどれほど難しいのか、あなたなら知っているはずです」

「そうですね……それは否定しません」

「意地悪ではなく、私はクロエとお嬢様たちのためにおすすめしません」


 新規ギルドを創ることは比較的簡単だ。しかし、今の王都でそうする冒険者は少ない。

 その理由としては、現在王都ではアポロンやエーデルシュタインといった大きなギルドを中心として、すでに多くのギルドが存在しているということだ。

 大きな依頼を受けてお金を稼いだり、素材を集めたりする目的なら新しいギルドを作る必要がないのである。ある程度名前の知れたギルドに所属しておけば、肩書もできて信頼もしてもらえる。

 新規のギルドでは、どうしても大金を稼げるような依頼は舞い込んでくる可能性が低い。


 そして、ギルドを運営していくための費用はどうしてもかかってしまう。

 ギルドの維持費に、最初は依頼も少ないので他のギルドから分けてもらったりもする。

 それに新しいギルドでは所属している冒険者もお金を持っていないから、装備やご飯、移動の馬車など様々なお金をギルドが負担しなければならなかった。その他にも状況に応じてお金は少なからずかかってしまう。


 だから、よほど名の知れた冒険者であるか、広い人脈をもっている冒険者以外が新たなギルドを創設するに値するメリットが少ないのである。

 今は既存のギルドに所属したくない冒険者は、新規ギルドを創設するよりも無所属で動いたほうがいいとすら言われていた。


 とはいえ、それはあくまで()()()新規ギルドを作った場合である。

 だけどギルドの形はそれだけではない。

 受け入れてくれさえすれば、シラユキさんたちをアポロンから抜けさせることなく、なおかつジャスミンさんに私のギルドに来てもらう方法があるのだ。


「サンズさん」

「ん? 何かな」

「アポロン内のファミリアとして、私のギルドを認めてくれませんか?」

「……ファミリアか。なるほど、そういうことか。考えたねクロエ君」


 ファミリア。

 言うなればギルド内ギルド。

 大きなギルドになると、ギルドの内部にいくつかギルドが構えられている場合がある。

 それは育成機関として使われていたり、精鋭部隊が所属していたり、鍛冶職人や薬師など専門的な知識を持つ冒険者の集まりだったりと、様々な形だけど同じなのは少人数制だということ。


 サンズさんが認めてくれさえすれば、これ以上ない形だと思う。

 アポロンの内部のギルドということで依頼を受けるのも苦労しなくなると思うし、世間からの見え方もただの新規ギルドとは天と地の差だ。

 ファミリアならば、根幹となっているギルド――今回ならアポロン――の両方に籍を置いても問題ない。シラユキさんたちは問題なく所属できるだろう。

 ジャスミンさんはアポロンを追放処分となっているので、他の姉妹と同じようにするのは無理だ。だから、私のギルドのみの所属にする。

 

 それならば、アポロンを追放されて無所属の冒険者となり、その後私にさそわれて私のギルドに入ったということになる。アポロン内のファミリアとはいえ、所属しているのはあくまで私のギルドだ。

 アポロンに所属していなくてもファミリアギルドに所属することは可能なので、これならいけると思う。

 

「たしかに、ファミリアという方法をとれば娘たちはまた一つの場所にいることができる。ジャスミンも君のギルドのみの所属とすれば、アポロンの追放という処罰はきちんと受けたことになるだろう。だけど、周りの人間が納得するかは別の話だよ?」


 アポロンには所属しないとはいえ、それでもアポロン内のファミリアギルドに所属するのだから、処罰の穴を突いたと言われても仕方がないと思う。

 文句や不満が出るのは当然だと言える。

 それでもサンズさんにファミリアを認めると言ってもらわなければならない。そうさせる何かが必要だ。 


「わかっています。だから、メリット……となるかはわかりませんけど……」

「ふむ、聞こう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ