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52.アリエルと今日の依頼

 ベルさんとメリダのお店からお屋敷へ帰っている途中。

 落ち着いた雰囲気のお店のテラス席で飲み物をちびちびと飲んでいるアリエルさんを発見した。

 ベル様と一緒に向かって声をかける。


「アリエル様~!」


 話しかけるとアリエルさんは一瞬だけびっくりしたように肩を揺らした。


「こんなところで奇遇ですね!」

「お、おう。そうだな……」


 なんだか歯切れの悪い返事をするアリエルさん。

 それに少しだけ動揺しているみたいな。突然話しかけたからだろうか?


「どうかしました?」

「どうもしねぇけど?」

「そうですか」


 いつもと少しだけ様子が違って見えたのは気のせいだったのかもしれない。アリエルさんとは一週間稽古をしっかり続けているとはいえ、まだまだ理解できていないことばかりだ。

 きっと依頼を完了させた帰りに休憩がてらお店に立ち寄ったのだろう。


「あ、今日の依頼は私がお願いした通り、王都の近くの依頼を受けてくれたみたいですね!」

「へ?」

「え? だって装備が綺麗なので、簡単なお仕事を受けたのかなと。違うんですか?」

「あぁ……いや、そうだけど? なんか文句でもあんのかよ」

「いえ、文句なんてないです」


 今のアリエルさんにとっては、王都近くでできる依頼は簡単すぎたのかもしれない。

 装備が汚れていないし、顔も疲労の色がない。まるで依頼を受けていないみたいだ。一週間と少しとはいえ、アリエルさんはセンスがいいから格段にレベルアップしているのだろう。


「やっぱり王都の近くの依頼は簡単すぎましたかね?」

「あ? まぁ、そうとも言えるのかもしれねぇな!」

「ですよね。だって今のアリエルさん、まるで汚れてないですもん。まるでお屋敷を出てから依頼に行っていないみたいな」

「そ、そそそそんなわけないだろ!? お前、オレを疑ってんのか!?」

「違いますよ! そんなことしませんって」


 アリエルさんは、今日だって私の予定が空いていれば少し遠出して強いモンスターと戦いたかったはずだ。

 だから依頼へ行っていない、なんてことを疑う余地はない。むしろ、私としては勝手に遠くまで行くんじゃないかと心配していたくらいである。私がお願いした通り、王都付近の依頼をこなしたようで、一安心だ。


「つーか、お前らこそ何してたんだよ」

「何って、普通に買い物ですよ? ねぇ、ベル様」

「う、うん……」

「のわりには、時間がかかってたみたいだけど。魔法書店だろ?」

「あぁ、それはベル様と店主がお話を楽しんでて。店主は私の友達なんですけど、ベル様と気が合ったみたいで。お友達になって本をもらったんですよね!」


 ベルさんはうなずいて、大切に抱えていた本をアリエルさんへ見せる。


「こ、これ……もらったの」

「へぇ、よかったじゃねぇか。まぁ、オレにはわかんねぇけど」

「アリエル姉様もよかったら、読んでみる?」

「悪いけどパス。文字見てると頭痛くなんだよ」

「そ、そっか……」

「悪いな」

「あれ?」


 なんだかアリエルさんの言葉が引っかかった。


「そういえば私、アリエル様に今日はベル様と魔法書のお店に行くなんて言ってました?」


 ベルさんと一緒に出掛けるから、今日はアリエルさんと依頼に行くことはできない、とは昨日伝えたと思う。でも、どこへ行くかなんて言っただろうか?

 魔法嫌いのアリエルさんだから、私から魔法書のお店に行くって言ったとは思えないけど……。


「あ、いや……そう! お前らが本を持ってるからな! それにお前のことだから魔法書だろうと思って」

「なるほど。たしかにそうですね」

「だろ!?」


 アリエルさんは残っていた飲み物を一気に飲み干して立ち上がる。


「さ、帰ろうぜ!」


 とアリエルさんに促されるようにして、私とベルさんもお屋敷へ戻るのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] これは…妹が誘拐されそうなので心配でついてきてるな?(すっとぼけ) [気になる点] ティナーさん苦労しすぎで23歳と言われても全然ピンとこない…いつも四十路ぐらいのおばさんの顔浮かぶんです…
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