5.ヴァレル家の四姉妹……?
次の日。
ティナさんは約束通りの時間にお店にやって来た。
さっそく案内してもらう。
定食屋さんを出て、ティナさんに連れてこられたのは王都でも人気の地区だった。
エーデルシュタインやアポロンをはじめ、大きなギルドは基本的に街の中心地に構えている。
が、こちらの四姉妹のお住まいは中心からは適度に離れたところにあった。大通りへのアクセスも悪くないし、森や湖も眺めることができる住みやすさ抜群の地区である。
そこの立ち並ぶ立派なお屋敷の一つが、彼女たちの住んでいるところらしい。
ずっとギルドに寝泊まりしていた私にとっては、こうして誰かのお屋敷に入るのは久々だった。
「広いですね……」
「旦那様のお屋敷は5倍はありますよ」
「そんなに」
まぁ、ギルドが一階に併設されていると考えればそんなものなのかな?
ティナさんに案内されて、廊下を進む。
白色を基調としたシンプルな造りながらも、シャンデリアやカーペットは高級感に溢れている。
「この先でお嬢様たちがお待ちです」
一度深呼吸をする。
やっぱり最初の印象は大切だ。
ここでネガティブな印象をもたれると、上手くいかないかもしれない。
ティナさんが扉を開いてくれて、広間に通される。
まず最初に、この時期は使われていないが暖炉に目がいく。次いで、ソファやテーブルなど。壁には誰か知らないけど肖像画がかけられていた。
「お嬢様、戻りました――って、あれ?」
私に次いで広間に入ってきたティナさんが首をかしげる。
広間を眺めていた私も、同じく違和感に気づいた。
だだっ広いこの部屋のどこにも人がいなかったのである。
「あの、ティナさん。お嬢様は」
「おかしいなぁ……この時間にいてくださいって伝えていたんですけど……」
「まぁ、その、連絡ミスってありますよね」
「すみません! すみません!」
平謝りするティナさん。
だけど、これはきっとティナさんの連絡ミスじゃない。そう確信していた。
まったく、貴族と言うのは誰もかれもがこうなのかな?
これじゃあ印象もくそもない。
スタートがこれじゃあ、雲行きが怪しいなぁ……。
「すみません、クロエさん」
「あぁ、いえ、気にしないでください。また日を改めたほうがいいですかね?」
「大丈夫です! たぶん何人かがいると思いますので」
ティナさんが広間を出ていこうと扉のドアノブに手をかける。
と、その瞬間。
ティナさんが扉を開けるよりも早く、向こうからやって来た誰かが扉を開いた。
広間に入ってくる。
「お、ティナ帰ってたのか」
そこにいたのは、美しい銀色のショートカットの女の子だった。
八重歯が特徴的で、快活そうな笑みを浮かべている。歳は私と同じくらい、かな?
今から依頼に行くのか、剣を帯びて胸当てをするなど、剣士さながらの格好をしていた。
(シャル)
(うむ。やつから魔力を感じるぞ)
どうやらこの子が一人目の姉妹みたいだ。
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