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45.クロエと明日の予定

 午後からアリエルさんと少し遠出をして依頼をこなし、夕方に私たちはお屋敷へ戻ってきた。


 本格的に稽古を始めて一週間しか経っていないけど、アリエルさんは確実に強くなっている。そりゃあ、上級冒険者の方々と比べたら差は大きなものだけど、それでも冒険者としてのセンスを日々感じていた。

 あの巨大なアレインは難しいかもしれないけど、少なくともアレインくらいの相手に手間取ることはない。油断や怠慢もなく、しっかり確実に敵を仕留めることを心がけているみたいだった。


 ……まぁ、まだ私には心を開いてくれたというわけではないけど。相変わらず舌打ちはされるし、暴言も吐かれていた。

 っと、そうだそうだ忘れていた。

 明日は午後からベルさんとメリダのお店に行く予定だから、アリエルさんに依頼には一緒に行けないことを一応伝えておかないと。


「アリエル様」

「あぁん?」

「明日のことなんですけど」

「おう、もう少し強い奴らと戦いてぇな。今日くらいじゃ相手にならねぇよ。何かないのか?」


 上機嫌にアリエルさんが尋ねてくる。

 それもそのはず、今日の依頼では森狼(しんろう)という、そこそこ強いモンスターを倒したのだ。

 森狼は数匹の群れで行動をする肉食のモンスターで人のことも襲う。一匹くらいなら頑張れば冒険者でなくても倒せるけど、群れになるとまず無理だろう。鋭い牙と爪でやられてしまう。

 その森狼を私もちょっとだけ助けたものの、アリエルさんはほぼ一人で七匹を倒した。一般的な冒険者なら、もう十分に一人前と認められる実力と言える。

 たしかにもう少し強いモンスターを倒す依頼を受けてもいいかもしれない。もちろん、まだまだ不安なので、私が一緒という条件付きだけど。大切な生徒ということもあって、これは絶対条件だ。

 

「その依頼のことなんですけど、明日は私、午後から用事があって」

「は? 来ねぇってことか?」

「すみません。どうしても外せない用事なんです」

「んだよ……」


 あからさまに肩を落とすアリエルさん。

 自分でも強くなっているのがわかっているだろうから、残念な気持ちになるのは理解ができる。少しずつ強い敵と戦って勝つのが楽しいと感じているのだと思う。

 私もアリエルさんには実戦経験を積んでもらいたいから、色々な依頼を受けたいとは思っている。

 でも、明日の約束は前からベルさんとしていた大切なものなのだ。


「朝の稽古は普段通りできます。でも、午後からは依頼にいくのなら、できれば王都の近くの依頼にしていただけると嬉しいです」

「別に心配いらねぇよ。今日のオレの剣技をお前も見ただろ?」

「たしかにアリエル様は強くなっています。それは認めます」

「だろ?」

「ですが、油断はダメです。そうやってアレインのコアを壊さなかったのは誰ですか」

「うっ……そんな昔のことを掘り返すなよ!」

「大事なことです。明日は復習のつもりで、簡単なお仕事をお願いします」


 それに今日は今までで一番遠出をしたから疲労だってあるはずだ。

 私としては明日は一日休んでもらってもいいくらいである。


「……わかったよ。しゃーねぇな」

「すみません。それじゃあ明日はそういうことでお願いします。一緒に居られないので、本当に無理はしないでくださいね」

「うるせぇな、そんなこといちいち言わなくても大丈夫に決まってんだろ。子どもじゃあるまいし」

「最近私と一緒でしたけど、寂しくないです?」

「はぁ!? んなわけあるか!」


 アリエルさんは顔を赤くさせて否定する。

 最初のほうはこうやってめちゃくちゃ否定されるからショックを受けていたけど、慣れてくるとちょっと可愛いと思えるようになっていた。慣れって怖い。

 

「別にオレはお前と一緒じゃないのが嫌って言ってるわけじゃねぇんだよ!」

「とにかく気を付けてくださいね」

「うるせぇな! 風呂に行くからついてくるな!」

「お風呂でしたら、私も一緒にいいですか?」


 アリエルさんのほうが動き回って敵を倒していたとはいえ、私も一緒に依頼へ行っていたのだ。

 汗を掻いているし、疲れてもいた。

 

「ふざけんな! お前は来るな!」

「なんでですか!?」

「お前がいると熱いからだよ! 勝手に風呂の温度変えやがって……」


 シラユキさんは何も言わなかったし、一緒に何度か入っているのに。

 とはいえ、ここまで嫌がられたら無理強いはできない。

 大人しく、私は自分の部屋でアリエルさんが出て来るまで過ごすことにした。


 あ、そうだ。

 途中でベルさんの部屋に行って、明日のことをもう一度確認しておこう。


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