30.今日の午前はジャスミンと
次の日。
昨日と同じ、少し早い時間帯に目を覚ました私は、魔法書を忘れずにベルトのホルダーにセット。
朝ご飯をいただこうとダイニングへ向かう。
「おはようございます!」
ダイニングには、これまた昨日と同じでシラユキさんとジャスミンさんが向かい合ってご飯を食べていた。
どうやらアリエルさんはまだ起きていないらしい。昨日の様子だと朝いちばんにでも勝負を挑まれるかと思ったけど、違うみたいだ。
あいさつをして、私はシラユキさんの隣に座る。
ティナさんに準備をしてもらった美味しい朝食のスープを一口飲んで、シラユキさんに尋ねる。
「シラユキ様。アリエル様はいつも昨日と同じくらいに起きるのですか?」
「あぁ。あいつはいつも、ボクが出かけるのと同じくらいじゃないかな。朝はほとんど顔を合わせないけど、たまに寝起きで不機嫌なアリエルに会うよ」
「あー……」
苦笑するシラユキさん。
なんとなく、アリエルさんの寝起きが悪いのは想像することができた。
「そうか、そういえばアリエルと稽古をするんだったね」
「はい。今日からすることになっているんですけど……」
「まだ寝ているだろうね」
ということは、稽古をするのはまだ後になるか。
それに起きてすぐに身体を動かすとは思えない。準備もあるだろうから、稽古をするのはお昼になりそうだ。
「シラユキ様とジャスミン様もどうですか? アリエル様が起きられるまでに少し」
「ふふ、ボクはいいと昨日言っただろう?」
「ちょっとくらい時間ありませんか?」
「クロエ? あまりしつこいと、女の子から嫌われてしまうよ?」
ウィンクをするシラユキさん。
柔らかな口調をしているけど、これ以上さそってくるな、と言われているような気がした。
「……すみません」
「わかってくれたら、それでいいよ。でも、アリエルのことはよろしくね」
「はい」
でも、そうなるとこれからどうしよう。
シラユキさんは街へ遊びに行くんだろうし、ジャスミンさんは森へ動物に会いに行くんだと思う。
あ、そうしようかな。
昨日、一緒に行こうって約束をしたし。
「ジャスミンさん」
口の中にもりもりと食べ物をかき込んで頬を膨らませたジャスミンさんが、不思議そうにこちらを見る。
ほっぺたが、はち切れんばかりになっていた。
「もぐもぐもぐ……なに?」
「えっと、昨日の」
「はっ! ははひも、へーほは……もぐもぐ」
「ジャスミン。食べるか話すかどちらかにしないか」
「ほーだね!」
シラユキさんに注意されて、ジャスミンさんが一生懸命咀嚼する。
「クロエ、ごめんだけどアタシも稽古は無理だよ」
「誤解です、ジャスミン様」
「そーなの?」
「はい。昨日、猫を見せていただく約束をしたじゃないですか。今日の午前中どうかなって」
「それなら喜んで!」
「ありがとうございます」
よし。
今日はジャスミンさんと一緒に行動できる約束をすることができた。
アリエルさんが起きてきて準備ができるまでだから、そんなに時間があるわけじゃないけど、何か魔法を学びたいって思ってもらうヒントを得られるかもしれない。
「二人で楽しんでおいで。ボクは失礼するよ」
席を立ったシラユキさんを見送るのだった。
明日は、シラユキさんに付いて行こうかな?




