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156.学院生活のはじまり

 次の日の朝。

 今日からいよいよ、学院都市での講習が始まる。

 

 ……わけだけど。


 四姉妹——というより、ベルさん以外のお姉さん三人は大忙しで準備をしていた。

 といっても、シラユキさん、アリエルさん、ジャスミンさんの準備は大方完了している。

 三人が大急ぎ、大慌てでやっているのは、未だ瞼をつむってうつらうつらしている末っ子のベルさんのお世話だった。


 シラユキさんがベルさんの長い綺麗な髪を整え、アリエルさんが着替えを手伝い、ジャスミンさんは座学に必要な道具を準備している。

 全員が慣れた手つきでこなしており、四姉妹で朝から用事があるときは昔からいつもこうなんだろうな、と思って苦笑した。

 

「ジャスミン、そっちは準備できたかい?」

「えっと、もうちょっと!」


 ジャスミンさんが、ベルさんのカバンから今日の座学で使用するペンやノート(昨日もらったものだ)を探しながら答える。


「ユキちゃんとアーちゃんは?」

「ボクのほうはもう少し」

「オレもすぐ終わるぞ」

「えぇ!?」


 ジャスミンさんの反応から察するに、どうやら難儀しているらしい。

 それを感じ取ったアリエルさんが、ジャスミンさんへ顔を向ける。

 

「おい、大丈夫かよ?」

「だ、だって本ばっかりでぐちゃぐちゃなんだもん!」

「ったく。終わったら手伝ってやるから待ってろ」

「大丈夫……あ、あった!」


 ベルさんのカバンから取り出したノートを高々と掲げるジャスミンさん。

 その表情には達成感が滲んでいた。疲労感も見えるけれど、まだ一日目の第一回目の講義も始まっていないのに大丈夫だろうかと心配になる。

 

「よし、ボクもできた。アリエルは?」

「オレもできてる。いつでも出れるぞ」


 ジャスミンさんの方にばかり注目していたけれど、いつの間にやらシラユキさんとアリエルさんの担当も完了していたみたいだ。

 ベルさんは寝癖がなくなって、服も寝間着から皺のない綺麗なものに変わっていた。

 ……ただし、ベルさん本人は眠たそうに目を擦っているけど。


 ちなみに、四姉妹が着ているのは、学院都市に来る数日前に新しく買ったものである。

 私は必要ないと思ったんだけど、シラユキさんにものすごい剣幕で必要性を訴えられたので、新調するに至ったのだ。

 今から行われるのは座学なので、スカートやワンピース、ひらひらとした服装だけど、実技用の動きやすい服も持って来ている。もちろん、それも新品である。


 実を言うと、その買い物で一か月の食費を軽く超えた。

 だけど、買った新しい服を着た四人の姿を見ると、それも良かったのかもしれないと思えた。

 

 シラユキさんはミモレ丈のスカート、アリエルさんはタックパンツ、ジャスミンさんはキュロットスカート、ベルさんはワンピースとそれぞれ個性が垣間見える。全員がバラバラに見えるけど、全員がどこかしらに薄桃色を仕込んでおり、見る人に姉妹感を十分に感じさせることのできるコーディネートとなっていた。


 四姉妹とも顔もスタイルも整っていて、さらにシラユキさんのセンスが上乗せされているので、とてもじゃないけど講習を受けに来た人とは思えないぞ!

 

「それじゃ、クロエ。ボクたちはそろそろ行くよ」

「皆さん、頑張ってくださいね!」


 部屋を出ようとする四人を、私も扉の近くまで行って見送る。


「いってきます」

「……いってくる」

「いってきます!!」

「い、ってきま……ぅ……」


 ジャスミンさんが歩き出したのを先頭にして、四姉妹は座学が行われる教室へ向かっていった。

 ……ベルさんだけが心配だ。


 途中、ジャスミンさんが振り返って大きく手を振ってくれたので、私も小さくだけど手を振り返す。


 こうやって、四人を見送るのは新鮮な気持ちだった。

 いつもは四人と一緒に私も外へ出て魔法の練習をしているので、私一人が残るのはあまりなかった。

 遠くなっていく四人の背中を見ていると、なんだか寂しくなってくる。


「……さてと」


 四人が角を曲がって見えなくなったので、私は一度部屋に戻った。

 四人の忘れ物がないかチェックをして、私も準備を始める。


 四姉妹が講習を受けている間、私はサクラの研究の手伝いをすることになっている。

 どこに集合するか聞いてないけど、昨日案内してもらったサクラの研究室に行けばいいよね?


 と、サクラが昨日、研究室でめちゃくちゃなことをしていたのを思い出した。

 色々な意味で大丈夫だったのだろうか。


 不安に思いながらも、私はサクラの研究室へ向かうのだった。


お読みいただきありがとうございます。


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