表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/159

141.サクラちゃん参上☆

 アリエルさんとベルさんと一緒に帰宅すると、ダイニングから甘いお菓子の匂いが漂ってきていた。

 時刻は午後3時くらい。

 夕飯まではまだまだ時間があるから、おやつタイムを楽しんでいるのかもしれない。


「ただいま帰りました」


 ダイニングに入ると、予想通りテーブルにはお菓子とお茶が並んでいた。


「おかえり、クロエ」

「おかえりー!」

 

 優雅にお茶を飲んでいたシラユキさんと、ティナさんお手製のクッキーを頬張っていたジャスミンさんが私に気づいて声をかけてくれた。


 と、違和感を覚える。

 シラユキさんとジャスミンさんが隣同士で座っていたのだ。

 普段は、シラユキさんの隣に私、そしてベルさんの順で座っている。そしてシラユキさんの正面がアリエルさんで、その隣がジャスミンさんだ。

 

 だけど、今日はジャスミンさんがいつも使っている席に別の人が座っていた。

 その彼女も、シラユキさんとジャスミンさんと同じように、私に顔を向ける。


 ふんわりとしたパステルピンクのセミロングに赤い瞳。黒と赤のゴシック調の服装に頭の上には大きなリボンを乗せている。

 左目の下には、いつも通り、濃いピンク色のフェイスペイントでハートマークが描かれていた。

 顔立ちは整っているはずなのに、それ以外の要素が負けず劣らずの印象を与えてくる。


「おかえりなさい、クロエ」

「ただいま、サクラ」


 そっかそっか。

 サクラが来てたんだ。さっき、メリダもこっちに戻って来てるって言ってたもんね。

 

 ……って、え?


「なんでサクラがここにいるの!?」

「なんでって、ひどい! せっかく可愛いサクラちゃんが会いに来てあげたのにぃ……しくしく」


 顔を両手で覆って、サクラは嘘泣きの演技を始める。

 シラユキさんとジャスミンさんは困惑している様子だった。当然である。


 シラユキさんが私とサクラとを見比べて、頬を掻きながら質問した。


「えっと、クロエ……? クロエの知り合いでいいのかな?」

「はい、間違いないです。恥ずかしながら……」

「そ、そっか。少し前に、クロエの友達で会いに来たって言うから、待ってもらっていたんだけど」

「そうでしたか」


 メリダの話を聞いていたから、近いうちに会いに行こうとは思っていたけど、まさかこんなに早く自分から尋ねてくるとは。

 サクラは嘘泣きをやめて、何もなかったかのようにけろっとしていた。


「私、ギルドが代わったのに、よくこのお屋敷が分かったね」

「あぁ、それなら、王城で聞いたから」

「そうなんだ……って、は!? 王城!?」


 大通りで警備の人に聞きました、くらいの軽いノリでサクラが告げる。

 いやいや、王城って人の住所を気軽に尋ねるために行く場所ではないぞ?

 

「わざわざ王城に聞きに行ったの!?」

「なんかぁ、めんどくさいなぁって思ったからぁ、そうだ王城で聞こう! って思って。そしたら偶然、宰相さんに会って、ギルドを管理してる部署を教えてもらったの~。確実でしょ?」

「それはそうかもしれないけど……」

「だってぇ……早くあなたに会いたかったから……きゃっ」


 可愛い子ぶっているのか、サクラは照れ隠しの演技で顔を両手で覆う。

 指の隙間からこっちをちらちら観察していた。


「そんなことしなくても、適当に聞いてもわかったと思うよ……?」

「いいんだもーん。サクラちゃん、学院都市の教授先生だから王城には自由に入れるし」


 それは職権乱用というのでは……?


「はっ!? もしかして、サクラちゃんが可愛いから、教えてくれたのかしら……? えぇ~どうしよう~」


 いやんいやん、と身体をくねらせるサクラに冷静に指摘する。

 それに伴ってピンクの髪もゆらゆら揺れる。


「……それはないと思うよ」

「うっそ!? こんなに可愛いのに!?」


 真顔で言われた。

 たしかに、サクラは顔だけは整っているのは間違いない。

 だけど性格的なものというか、言動と言うか、色々ね……?

 

「そうだとしても、ほら、他がね?」

「なるほど。サクラちゃんがぁ~美少女すぎたのね!」

「あー、うん。とりあえず、元気そうでよかったよ」


 久しぶりだけど変わらないね、という言葉はサクラのためにあるのではないだろうか。

 いや、たしかに少しくらい合わなくても、その人はその人なんだから変化なんてあまりないだろうけど。

 それにしたって、変わらなすぎる。


「クロエも元気そうじゃない。怪我したって聞いたけど」

「あはは、ありがと。それはもう全然大丈夫だから」


 と、隣で私たちの会話を聞いていたベルさんに、服の袖を引っ張られた。


「あの、クロエ」


 その瞳には、当惑の色がありありと見て取れる。

 しまった。

 四姉妹のことを置いてけぼりにしてしまっていた。


 とりあえず場を落ち着かせるために、全員で改めて席についてから、サクラを紹介することにした。


「えっと、彼女はサクラです。学院都市で魔法の研究をしている、王国公認の教授なのでけっこうすごいです」

「サクラですっ☆ よっろしく☆」


 きゃぴーん、とウインクにピースを添えて自己紹介をするサクラ。

 四姉妹に対しても、まったく態度が変わらない。むしろ弾けた気さえする。


「こう見えて私、昔はクロエとメリダと一緒に色々なところを巡ったりもしてたんだよ☆」

「へぇ! そうなんだ!」


 ジャスミンさんが目を大きくさせて、これまたおおきくうなずいた。

 他の三人も同じような反応で、シラユキさんがベルさんに確認する。


「メリダさんって、たしかベルが良く行ってる書店の?」

「う、うん。でも、ベルも、知らなかった……」


 メリダも自分からはベルさんに冒険者をしていた時の話はしていなかったらしい。

 今のメリダには、冒険者をしていたときの面影はまったくないから、メリダが自分から言わない限りは知らなくて当然だ。


「つまり、私とクロエとメリダは、ただの友達じゃなくてマブダチってこと☆ あ、ちなみにクロエは年下だけど、私とメリダはタメだよん☆」


 で、とメリダはさらに続ける。


「今はクロエが言った通り学院都市で魔法の研究をしてるの。何かあったら、全然聞いてくれていいよん? よろしくね、四姉妹ちゃん☆」

サクラ

19歳。メリダと同い年。

パステルピンクのセミロング。基本的に大きなリボンと黒と赤のゴシック調の服装。

左目の下にフェイスペイントでハートマークを描いており、その日の気分で色が変わる。



お読みいただきありがとうございます。


ブックマーク、ご感想、ご評価などよろしくお願いします。

下部にある☆を★にしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ