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115/159

115.事件の概要


「ここ一か月ほど、この街で起きている誘拐事件についてですが……結論を言えば、まだ解決の糸口すら掴めていません」

「クロエに聞いた話だと、幼い子供ばかりが攫われてるんだよね?」

「その通りです、シラユキ様」


 首肯してカミュさんが続ける。

 

「攫われているのは12歳以下の子供ばかり。偶然かはわかりませんが、特に小さな女の子が最もいなくなっています」


 現在攫われたとされているのは全部で10人。内訳は女の子が7人、男の子が3人。

 最初の女の子が消えてから1か月近くが経過している。

 最初は2日に一人ほどのペースだったが、2週間ほど前から急にペースが遅くなったらしい。


 それでも続いている以上、安心はできない。攫われた子供たちが無事なのかどうかもわかっていない。

 そして、誰の仕業なのか、もしくは何の仕業なのか、今のところアムレの冒険者たちでは解明ができていなかった。

 

 カミュさんの話を聞いて、四姉妹はそれぞれ何やら考え込んでいた。


「……心配だね」

「小さな女の子ばっかって、犯人きめぇな」


 顔を歪めながら毒づいたアリエルさんに、ジャスミンさんが苦笑しながら賛同する。


「たしかにそうかも。でも、なんで女の子たちを攫うんだろ?」

「さぁな」

「ボクたちで何かできることがあればいいんだけど」


 とはいえ、話を聞いただけでは何も思い浮かばない。

 一か月近く冒険者たちがいろいろと調べているのに何もわからないのだから、今来たばかりの私たちがわかるほうが不思議かもしれないけど。


「ねぇ、クロエ」

「なんですか、ベルさん?」

「魔物の仕業って、ことは、ないのかな……」

「魔物の?」

「うん……」


 たしかに人の仕業だと決めつけるのもよくないかもしれない。

 人のような見た目をしているゴブリン種やオーガ種ならば、人を攫うこともあるだろう。個体によってはそれなりの知性を持つこともある。

 不可能じゃない。


「カミュさん、その可能性はどうですか?」

「ベル様の言うようなこともないとは言い切れません」


 しかし、とカミュさんは一瞬だけ言い淀んで、ベルさんの考えについての意見を述べた。


「その線は低いかと。すべての事件が街中で起きているので、王都ほどではないですが警備をしているので魔物が内部に入り込んで子供を連れ去るのは難しいと思います」

「そっか……ごめんなさい……」

「いえ、謝らないでくださいベル様」


 肩を落としてしゅんとしてしまったベルさん。

 私もフォローしておく。


「そうです、ベルさん。いい視点だったと思いますよ」

「ほんと……?」

「はい。可能性は低くても、決めつけるのはよくないですし」

「よかった……」


 ほっとしたのか、ベルさんが小さく花のような笑みを咲かせてくれた。


「私が知っている情報は、以前カタリナ様がいらっしゃったときと特に変わりはありません」

「あ、カタリナさんも来てたんですか?」

「ええ。一度だけですが。他のときは、カタリナ様が選んだアポロンの冒険者だったと聞いています」


 もしかしたら、カタリナさんがサンズさんに推薦してくれたのだろうか?

 サンズさんもそうだけど、今度会ったときにお礼を言っておかないと。

 それにカタリナさんには、近々剣術の練習をお願いしようと思っていたところだ。


「私に話せるのはこのくらいで、事件を担当している者を呼びに行っていますので、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」

「すみません、わざわざ」

「いえ、私たちの不手際でサンズさんに心配をかけているので」

 

 少し待っていると、やがて扉が少し強くノックされた。


「カミュ様。サーナンです」

「入ってください」


 扉が開いて入って来たのは、短髪黒髪の男性だった。

 見た目は二十代の中盤くらいだろうか。

 事件の調査で疲れているのか、目の下にはクマが目立っている。

 

 大仰にため息をついて肩を竦めながらサーナンさんは、テーブルを囲んでいるソファのうち、唯一空席となっている入り口に近いソファに、どっかりと腰を下ろした。


 そして、訪れている私たちの顔を見ると、再びため息を深くついた。


「すみませんがねぇ、そう毎日のように来られても話せる情報は変わらないんですがね」


 不機嫌そうに言うサーナンさん。

 え? 何この人、態度悪くない?


「しかもなんですか? 今度はこんな女ばっかりって、アポロンは俺らを茶化しに来たってんですか? え?」


 机の上に持って来ていた書類をバサッと放り投げると、足を組んでまたため息を吐く。


 横柄なサーナンさんの態度に四姉妹は面を食らっている様子だった。

 特にサーナンさんの近くに座っているベルさんは怯えてしまっているし、ジャスミンさんは何度も私に視線を送っている。


 ……うわぁ。

 これはめんどくさそうな人が来てしまったなぁ……。


 心の中で私は、彼に負けないくらいの大きなため息を吐いたのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] あーうん、自分等のところより上位と言えるギルドから、連日の如く人が寄越され、情報はないかとせっつかれる それこそ一種の突き上げのように感じるのはおかしくない しかもそれで結局解決には至ってな…
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