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110.四人と依頼の朝

 サンズさんからアムレの街での調査を依頼された私は、お屋敷に戻ってすぐに四人へ報告をした。

 

「父上から、ボクたちに依頼……?」

「はい。私たちのファミリアにお願いしたいと」

「そう、か……」


 信じられない、と言った表情であごに手を添えるシラユキさん。

 ファミリアになって私の指導を受けてくれるようになったとはいえ、四姉妹と父親であるサンズさんとの確執はまだなくなったわけじゃない。

 私の知らない部分、踏み込めない家族の問題があるのだ。

 お母さんが亡くなって四人が魔法を使わなくなり、サンズさんのお屋敷を飛び出して言うことを聞かなくなった。


 シラユキさんは話してくれたけど、私はまだまだ四人のことを何も知らない。

 アリエルさんとのデート、というわけではないけど、もっともっと信頼してもらって距離を縮めていきたい。


「あまり難しい依頼ではないですけど、ギルドからのお願いですからね。きっとみなさんの頑張りを認めてくださったんですよ」

「認めたっつっても、あの父親がねぇ……」


 苦々しい顔でつぶやくアリエルさん。

 他の三人も何か思うところがあるのか、ただただ手放しに喜んでいるといった様子ではない。

 それでも私たちにできると判断したから、サンズさんは依頼をしてくれたわけで。その期待には応えたい。

 

「期待してくれているのは間違いないですから、がんばりましょう」

「そうだね。ボクたちの最初の依頼だ。失敗はしたくないね」

「まぁ、そりゃあオレもそうだけどよ」

「アタシもがんばる! ところで依頼って何するの?」


 ジャスミンさんが首をかしげる。

 私はサンズさんに言われた依頼の内容を四姉妹に話す。


「——というわけで、アムレの街の事件の調査が今回依頼された内容です」

 

 話し終えると、ベルさんが小さく手を上げる。


「アムレ……って、たしか南にある?」

「はい、そうです。二泊する予定ですので、そのつもりで各自準備をお願いします」

「う、うん……わかった……」

「ところでクロエ、いつ出発するんだい? 三日後くらい?」

「いえ、明日です」


 そういえば、最初に言うべきだったかなと思う。

 私の「明日」という声に四人が「え!」と目を大きくさせた。 

 ジャスミンさんの声が一番大きい。


「あ、明日って明日!?」

「は、はい」


 ベルさんが不安そうに尋ねてくる。


「あの、明日のいつ……?

「朝です」

「ベ、ベル、起きられるかな……」


 他の三人は毎朝早くに起きて私と一緒に稽古をしているから大丈夫だと思う。

 やはり一番心配なのは末っ子のベルさん。いつも指導も午後からの参加だから本人も起きられるか心配らしい。

 そのベルさんにシラユキさんが優しく語り掛ける。


「大丈夫さ、ベル」

「シラユキ姉様」

「明日はボクが起こしてあげるよ」

「う、うん……いいの……?」

「あぁ、というか、明日は馬車での移動かい?」

「はい、サンズさんが手配をしてくれたそうなので」

「だったら、ベルは無理に起きなくてもいいんじゃないかな」


 シラユキさんの言葉にベルさんが首をかしげた。


「え、どうして……?」

「ボクが馬車まで運んであげるから、寝ているといい」

「いいの……?」

「あぁ、ボクはね」


 シラユキさんとベルさんが私に顔を向けてくる。


「構いませんよ。アムレにはお昼過ぎに着く予定ですので」

「だそうだ。ベルがどうしたいかだけど」

「……えっと、一回起こしてもらって、無理そうなら、そうしてほしい……かも……」

「わかった、そうするよ」

「では、明日の朝8時くらいに出発しますので、今日は準備が済んだら早めに休んでください」


 はーい、と返事をしてくれる四姉妹。

 それからはいつも通り夕飯を食べてお風呂に入り、それぞれの部屋に戻った。

 私も準備を行う。

 二泊の予定だから、そこまでたくさんの荷物は必要ないだろう。アムレは栄えている街だから最悪の場合は買い足せばいいか。

 最近は王都の外に出ることも増えてきたとはいえ、こうやって遠くの依頼へ向かうのはなんだか久しぶりな気がする。

 

 調査とはいえ、気を抜いてはいけない。

 四姉妹はどうしても興奮したり高揚したりしてしまうと思う。それは最初に依頼で、それも遠出なのだから仕方ない。その分、私が冷静にいなければ。

 

 そのためにも身体を休めておこうと、私はいつもよりも早く寝床につくのだった。






 そして次の日の朝。


 ベルさんを除いた三人と朝ご飯を食べて、各自一旦、自分の部屋に分かれた。

 私は昨日のうちに準備を終わらせて、というかそこまで荷物が多くないので、荷物を持ってすぐにダイニングへ戻った。

 ベルさんが心配だけど、準備はできているだろうから、寝たまま抱えて馬車に乗ってもらえばいいか。

 そう考えながら、四姉妹が来るのを待つ。

 ティナさんにお茶をもらって、それを飲みながら待つんだけど……。

 

 ……ちょっと遅くない?


 サンズさんが手配をしてくれた馬車が来るには、まだ時間はある。とはいえ、さすがに心配になってきたぞ……。

 四人の部屋に行ってみようか、と腰を上げようとしたとき、一人目となるシラユキさんがダイニングへ入って来たのだった。

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